時間切れ
わたしはサイロキシンという痛々しい第2の姿を作り出して以来、一体何度恋愛敗者サンプル数を更新し続けてきただろうか
いや、サイロキシンになる前から男の見る目の無さに関しては自他共に認めるプロである
椅子投げDV浮気男、誕プレシゲキックス男、札幌の音信不通怪談師、埼玉のアニソン入り浸りDJ etc.
いつかフォロワーと元カレヤバカルタでも開催したいところである
そんな特級呪物の話はさておき、最近友達のペットのハムスターが亡くなった
そのうちニンジンでも持参して遊びに行くつもりだったのに、そのうちそのうちと言ってる間についにひと目も会うことが叶わなくなってしまった
ハムスターの寿命は短い
思えば、20余年の人生、「時間切れ」を思い知らされてばかりだ
はじめは父の死、そして愛犬の死、疎遠になった幼なじみ、別れた元カレ
恋人と別れる時、わたしがいちばん最初に思うことは、もし彼との限りある時間が、別れるその瞬間まで、カウントダウンのように可視化できたとしたら、何か変わっていただろうかということ
わたしは誰かと出会う度にそれを際限ないものだと信じて、その1呼吸ですら生命をすり減らしてることを忘れる
感謝も謝罪も恨みつらみも、湧き出てくるのはいつも「時間切れ」の後だ
"お前に言いたいことなんて山ほどある"
その氷山の一角すら伝えきれていないのに
人間を辞めない限り、わたしだっていつ「時間切れ」を言い渡されるか知れたものではない
今、その事実に青ざめながら、わたしは哲学者ばりに現彼氏に向かって「あなたが生きてるだけで幸せです」と伝えている
いつ、どんな形で「時間切れ」になっても、堂々と彼を愛したと言うために
どうせ切れる命なら、倍に削ってでも目の前の誰かに感謝して、怒って、傷つけて、愛したい
山ほどある言いたいことも、同じ人間、同じ言語なのに性別が違うだけでどうせ半分も伝わらないんだから
だったら
言い過ぎなくらい言えばいい
馬鹿みたいに泣いて怒ればいい
「時間切れ」に怯えて「いなくならないで」なんて言ってる余裕はわたしには無いのだ
カッコつけて言うなら、これが120パー感情で動くサイロキシンの真髄にある理性的なポリシーだ
わたしだけが我慢すればトラブルにならない、どうせ明日も隣にいるんだし、と思い続けた結果、わたしは言いたかったことのほとんどが「下書き」状態だ
もしもこれを読んでくれたフォロワーが、言いたいことの1割も言えないような境遇にあるなら、あなたをあなたたらしめる心の奥底からの叫びを、どうか潰してしまわないでほしい
いつかサイロキシンが「時間切れ」になるまで、わたしがそれを肯定し続けるから