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【かみのまつりか #1】奇跡の音楽、宇多田ヒカル

こんにちは、影山レオです。
このたび、僕が人生を生きる中で出会った素晴らしきもの、人生を彩ってくれたビビッドでウンダバーな存在について、とにかく思ったことを書き綴っていこうというマガジンを始めました。

まずは第1回ということで、何を取り上げてみようかと考えてみたところ、「最初はやっぱり宇多田ヒカルさんがいいでしょう」と思い立ち、わりとすぐに決まった次第です。

1998年に15歳でデビューしたシンガーソングライター、言わずもがな、世界に名を馳せる天才ミュージシャンの宇多田ヒカルさん。
知らない人いないですよね。
2000年代から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズや『キングダム ハーツ』シリーズの主題歌を担当されていたり、最近では楽曲がNetflixドラマ『First Love 初恋』のインスパイア元になったりしていて、きっと若い方でも初期作を知っている人が多いんじゃないかな。

僕が初めて彼女の歌を聴いたのは、母が自家用車でいつも聴いていたCDアルバム『First Love』の一曲「Automatic」でした。

2023年の今聴いても、サウンドが全く古くなっていないことにビビります。今までに何度も聴きすぎて、イントロだけを聴いただけでわかってしまうくらい耳に馴染んでいるのもあるのでしょうけど、それ以上にサウンドに時代を越えるだけのユニークさがあります。
この曲に限らず彼女の曲は、いつ聴いても常に新しいままで、敢然とその時代と「その先の未来」までも表現しているという凄さがあります。なんというか「常に近未来感を湛えている」という感じ。

SF小説や映画に例えると、ちょっと分かりやすいかもしれません。
ある作品が発表された当時は鮮明で「近未来的」に見える表現も、実際にその時代に到達してみると、想定されていた未来と実際の技術の進歩や流行には大きな隔たりがあったりするものです。
ところが、宇多田ヒカルさんの曲のサウンドにはそれがない。ピアノでもギターでもシンセサイザーのピコピコした電子音でも、どれもありきたりの使い方が全くなくて、それが曲に相応しい感じがするのです。

ここ数年、映画で80年代の音楽が頻繁に使用されているのを目にしますが、そういう映画でもこうした音楽の使われ方はどちらかというと郷愁に寄っている気がします。
例えば、『ラ・ラ・ランド』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でも使用されていた、a-haの「Take on me」

決して悪い曲ではないし、曲の特徴とも言うべきシンセサイザーの音もノリもとても良くて、それゆえにクラシック(名曲)なのですが、この曲の「80年代!」という雰囲気は、聴いた瞬間に否が応でも脳内に流れ込んできます。
なぜこういう感覚になるのかといったら、主にその時代で使われているサウンドが今では殆ど使われなくなってしまったから、ということに尽きると思います。
その時々のトレンドの音楽は、旋律だったり、楽器だったり、歌詞だったりの流行りがあって、それぞれがどこか似た雰囲気になりやすいものです。
音楽の流行も5年や10年くらいのスパンでどんどん移り変わってしまうので、時が流れれば「流行っている曲」は丸ごと「古い曲」になってしまうことがあります。

その点で、宇多田ヒカルさんの楽曲は、印象付けるために変なフレーズだったり、わかりやすいキャッチーな音を無理に入れようとしていません。
歌詞のフレーズも「テレビ」とか「タクシー」とか「公務員」とか「めんどくさがり」とか日常で使うありふれた言葉が多く、それを音に乗せた時に一番よく伝わる形で使っていて、「他の音楽と同じようなことをしよう」という意思が全然感じられないのが、独自性という部分でめちゃくちゃ強いのだろうなと思います。

宇多田ヒカルさんは基本的に作詞作曲を全て自分自身でされているので、歌詞の書き方から見える「音をとても大切にした曲作り」をしている部分も、彼女の素敵な感性の現れと言えるかもしれません。
「Automatic」も、音と歌詞の関係に注目すると、なかなか面白いです。

七回目のベルで受話器を取った君
名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる
唇から自然とこぼれ落ちるメロディー
でも言葉を失った瞬間が一番幸せ

Automatic

この歌詞を実際に曲で聴くと、
「な、なかいめのベ、ルでじゅわきをとった きみ」
「く、ちびるからし、ぜんとこぼれおちる メロディ」
と歌われます。
日本語としては、「七回目」や「唇」という単語を割ってしまうような歌詞はなるべく避けたいと思うかもしれませんが、宇多田ヒカルさんはこういう歌詞をバンバン書きます。何故かといったら、日本語は「く ち び る」のように4音だったら、それがどれだけ離れても、そう続ければそう認識できる言語だからです。
逆に英語だったら、どうでしょう。
仮に“My rainy days”とか“It's automatic”を
「マイレ、ニィーデ、イーズ」
「サ、ンウィル、シャ、イン」
のように分解してしまったら、もうその言葉は正しく認識されません。

こうした、言語の特性をきちんと把握して使いこなしているからこそ、心に響く曲をいくつも作り上げることができるのかもしれませんね。

あと、大々々前提を最後に言うのですが、めっっっっちゃ歌が上手い。
こんな、突出した技量も感性も兼ね備えたミュージシャン、世界中探したってなかなか見つからないよ。
いやー、やっぱり凄えや。


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