見出し画像

3D映画を撮るポイント

今どき、映画や動画を3Dで撮影している人は皆無だろう。
映画市場においても、過去の映画の上映方式を見てみると、ディズニー傘下のマーベルスタジオが制作した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開された2018年頃はまだ3D上映が維持されており、本作もIMAX3Dで上映されていた。しかし、2019年頃からその数は減り始め、『アベンジャーズ/エンドゲーム』あたりを境に、ガクンと3D作品は姿を消し始めたように思われる。アメリカ本国ではともかく、日本では2D上映に留まるものが多くを占め、撮影も多くの作品が3D撮影から撤退してきている。
現在でも3Dカメラで撮影まで一貫して行っているのは、恐らくジェームズ・キャメロンとアン・リーくらいのものではないだろうか。

その中で、僕は日本でも有数の“実写の3Dを撮影している人間”だと自負している。天下のSONYが残した遺産を後生大事に所持しており、小さいながらも色々な撮影方法を試しながら3D撮影を行っている。

現在、新しいプロジェクトで絶賛3D撮影中なのであるが、この過程で気がついたことを記しておく。それはズバリ、3D映画を上手に撮るコツである。
こういうことはジェームズ・キャメロンさえも教えてくれなかったことなので、今後3Dで撮影をする人にとってはとても有用な情報になるだろう(そんな人がいればだが)。

3D映画には、専用の3Dカメラを使用する。それはレンズが左右に2つ付いているカメラであり、左のレンズと右のレンズがそれぞれ人間の見る左目と右目の視野に当たる。
なので、原理としてはカメラを2台並べたようなものと考えればいいのだが、ここに大きな注意点がある。
それは、人間の目はカメラと違ってズームしないということだ。

普通のカメラと同じように画角を決めて撮影をすると、カットによってはカメラのレンズをズームして迫力があるように撮りたくなることもあるだろう。しかし、2Dではグンと圧迫感があるように見えたカットも、3Dで見るとそう見えなくなる場合がある。
3Dは、左右の目で見た時に誤差があることで立体を感じられる。しかし、対象と一定の距離が開いてしまうと、そこからは左右でもほぼ同じ角度のものにしか見えない。
近くにある物を右目と左目で交互に見ると、左右で位置や角度が違うことに気がつくはずだ。しかし、遠く離れた看板などで同じことをした時、その差は気づくか気づかないかのほんの誤差程度にしかならない。
そのため、ズームして被写体を大きくすると、ペラペラとした紙のように凹凸のないものが手前にやってきたように見えてしまうのである。

3Dでの撮影において、より立体感を味わわせたいという時は、3Dカメラのレンズをなるべくズームしない、したとしても近距離で左右の誤差が無くならない範囲に留めるべきだ。
細かいことではあるが、これは3Dという技術で鑑賞者を没頭させるためにはとても重要なテクニックのように思う。

いいなと思ったら応援しよう!