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雑語り:『ターミネーター』フランチャイズのテキトーさ

またまた、ターミネーターの話をば。

いくつかターミネーターに関連した投稿をしているが、改めて思うに、僕は相当に『ターミネーター』シリーズが好きである。まぎれもなくオタクと言ってもいい。
『ターミネーター』『ターミネーター2』は、SFアクションとしてもエンターテイメントとしても、生まれた時から現在までずっと僕にとってのトップの座に君臨し続けている。

恐らく、世界中の少年たちにとってもそうだったのだろう。今世界で活躍しているクリエイターたちにも『ターミネーター』や生みの親のジェームズ・キャメロンから影響を受けたことを公言している人は多いし、事実ジェームズ・キャメロンが作り上げたものは常に業界のスタンダードになっていた。
現在『ターミネーター』シリーズの権利を持っているデヴィッド・エリソンも間違いなくターミネーターギークであろう(でなければ、『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』など作ろうと思わないはずだ)。

しかし、初期2作の評価とは裏腹に、3作目以降の評価はあまり芳しくない。かくいう僕もあまり好きではないものが多い。
もちろん、それぞれの作品の良いところはあるということはこれまでにも言及してきた。が、ファン目線で見た時に「流石にそれはどうなんだ?」という部分があちこちにあり、目くじらを立ててしまいがちだ。
クリエイターが同作のファンだったとしても、人によって「重要だ」と思うポイントが違うことがよく分かる。

では、どのようなところが気に入らないのか。

『ターミネーター3』は、そのドラマ性の薄さもあるが、よく言われるのは年齢間違い問題だ。
主人公ジョン・コナーは1985年2月28日生まれで、『ターミネーター2』の時点で10歳と劇中で明かされている。
しかし、『ターミネーター3』の冒頭では「13歳の頃に命を狙われた」というモノローグが入る。
演じたエドワード・ファーロングが『ターミネーター2』撮影当時13歳だったため間違えたのだろうか。
「前作で未来が書き変わったため、過去も変わったのだ」という意見も見たことがあるが、だとしたら厳密には1・2作目の続きではないことになるし、そんなに重要設定がバンバン変わる世界観であるなら、前作の時点でもっと変わっていてもおかしくはないのである。

『ターミネーター4』は、3作目よりも過去作へのオマージュが盛り込まれ、ドラマもしっかり描かれた意欲作であった。
しかし、肝心のジョン・コナーが指導者として活躍している場面はあまり描かれず、冒頭では部下が全滅してしまったり、軍の上層部と喧嘩ばかりしていたり。それらしいことをしているのはせいぜい深夜にラジオ放送をしているくらいである。
作品の後半になると、自分の未来の父親であるカイル・リースが敵のスカイネットに捕獲されてしまい、「彼が死ぬと過去で俺が生まれないぞ!= 俺が生まれないと人類が滅亡するぞ!」という理屈を、ロクな説明もなくゴリ押しし始める。
しかし、その理屈で言ったら、スカイネットはすでにカイルを捕獲しているのだから、早急に彼を殺害してしまえば終わってしまうはずだ。カイルを餌にジョンを誘き出すなんて回りくどいことをする必要がない。
第一、スカイネットがカイルの顔も名前も認識しているのがおかしいのである。彼が重要人物だとスカイネット自身が知るチャンスは無かったはずだ。

また本来、『ターミネーター4』は劇中でジョン・コナーが死亡し、サイボーグのマーカス・ライトがジョンに成り代わって指導者になる、というラストであったらしい。しかし、脚本のリーク事件があり、急遽現在のシナリオに変更となったという話だ。そうであれば、あの緊急心臓付け替え展開も一応は理解できるが、とはいえご都合展開であるのは本当にその通りである。
「君の心臓くれるんだね? ウンウン」じゃあないんだよ。

『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』は、「1984年版オリジナルのキャラクターを使いたい」「でも舞台は現代にしたい」という無茶な願望を実現しようとしたため、冒頭の過去作完コピと比べて、後半は「時間軸」だの「時空の狭間」だの小難しい理屈が連発されておかしなテンションになっている。しかし、それが作品自体の面白みには繋がっておらず、会話の全てが言い訳のようになってしまった。

『ターミネーター: ニュー・フェイト』は、ジョン・コナーが冒頭で殺害されるという衝撃展開が話題になったが、ここでもジョン・コナーの描き方に問題がある。
『ターミネーター2』から3〜4年経過しているシーンで、ジョンの姿がピッタリそのまま前作のまま成長していないのだ。10歳の子供が14歳になったのなら、相応の変化があっていいはずである。
また、ジョンが殺害される展開は驚きではあるけれど、スカイネットの誕生はすでに阻止されていたわけで、彼の死に主人公交代以上の意味があったのかといえば、全く無い。本当にただ死んだだけなのである。
(この展開が許されるならば、次回作で今作の主人公が冒頭いきなり殺害されてもおかしくない、という意見を読んだけれど、心底同意である)

タイムトラベルが絡んだ作品というのはただでさえ複雑な話になりやすいが、『ターミネーター』は原作者も途中で離脱しており、監修する者が誰もいない。
なので、制作を任されたクリエイターは各々自由に作品を作ろうとし、あちこちで整合性が取れなくなってしまっている。

唯一の救いは、結局タイムトラベルの話なので「それは別の時間軸」という言い訳も成り立ってしまう。
『スター・ウォーズ』シリーズの場合、オリジナルキャストも勢揃いで打ち上げた新しいビッグプロジェクトであるし、世界観の都合上、盛大にやらかしても無かったことにはできない。『スター・トレック』シリーズとはそこが違うのだ。

ただ、『ターミネーター』シリーズも、各々の作品が文句なく素晴らしい傑作であったなら、ここまで「無かったことにしたい」と思う人もいなかっただろう。
それが残念でならない。

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