勝手にでかい規模の話をしてる
「日本の人口が減少している! もっと人口を増やさないと日本民族がいなくなってしまう!」というコメントは、インターネットを見渡すとあちこちにある。先程もそんなことで嘆いている人を見かけた。
1人の女性が産む子供の数の指標となる出生率は、2023年の統計では1.20となったという。少子化の時代であり、これからもっと日本人の人口は減っていくと予想されている。
しかし、それで日本の未来を憂いて、「頑張って子供を作ろう!」と思う人はいるのだろうか。
もし子供ができたとして、その子供が成人するまでに18年。18年で日本民族がいなくなるとは思わないけれども、その子供の人生よりももっと先、自分が会うこともない子孫の未来まで「100年先も200年先も日本民族を続かせよう」と意気込む人がいるのであれば、ずいぶん余裕のある話だなと思う。
世界各地を見ると、現在滅びつつある少数民族がいるし、現在はもう存在しない民族というのもいる。それらの民族について、皆はどのくらい知っているのだろうか。僕はほとんど知らない。恐らく、そういう研究をしている学者以外の人で詳しく知っている人はほぼいないだろう。
日本民族も、もし滅びるとしたらそのように滅びていくはずだ。誰も日本のことなど知らない、存在感もない、言語も知らない、日本人など見たことがない、という状況になって、知らないうちにいなくなっていくのである。
もし、民族とか国家のような大きな規模で「日本を救いたい」と思う人がいるとしたら、大前提として、それは民族を繁栄させなければいけないということだ。
ということは、その人は「自分が子供を作ったら全部オーケー」なんてことにはならないと気がつくだろう。自分の子供もその先の世代も、今以上に子供を作っていかなければ繁栄はないのだから。
普通は、民族繁栄のためよりも、人と人が巡り会い子供を作りたいと思った末に子供が生まれるはずだ。皆が楽しく生きられて、好きな人と出逢って生きていき、その人と子供を作りたい、と思えるような環境。
働いたら十分な給料がもらえたり、困った時に助け合えたり、怪我にも病気にもなりにくく、やりたいことがあればすぐに取り組めて、美味しいものが簡単に食べられ、毎日が楽しく、嫌なことには滅多に遭わない。
今も将来も、そういう環境を築いて維持させていかなければならない。
民族を救う、というのは究極的にはそういう話になる。
しかし、そんな壮大な話をしているのでないのなら、「今、誰が何人産んだ」とか「出生率が云々」なんて些末なことは気にしなくてもよいのである。