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舞台設定に困ったら
小説を書く時でも映画の脚本を書く時でもそうだが、構成などを考える時、ある場面の舞台設定を決めるのが難しいことがある。
例えば、学校を舞台にした青春小説であれば、そのほとんどを学校の校舎の中に限定してしまえそうなものだが、成人した男女の交流を描こうとなったなら、どこに行ってどんな会話をするのか、それなりに時間を使って考え込んでしまう。
ふとした拍子に喧嘩するような場面でも、橋の上で喧嘩するのか、道端で喧嘩するのか、そのシチュエーションによって描き方がだいぶ違ってくるだろう。
物語にとって「喧嘩した」という事実が大事であるなら、正直言ってどんな場所で喧嘩しようとも大した問題ではない。しかし、雰囲気や与える印象が作品にも大いに影響するのであれば、こういったロケーションにもこだわりたいところだ。
僕がよく使っているのは、映画に登場した場所や建物や情景を拝借することだ。
主人公がヤクザたちに追いかけられて捕まりそうになり、数人を叩きのめして逃げ切る場面を書くとする。
そんな時、自分の記憶の中でそれらしい映画のシーンを思い出そうとする。すると、『ターミネーター2』でジョン・コナー少年が敵のサイボーグT-1000に追いかけられ、ターミネーターに助けられるショッピングモールが思い浮かんできたりする。
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ショッピングモールなら日本にもあちこちにあり、廊下やエスカレーターや駐車場など、戦闘シーンに使えそうな諸々の環境もずいぶん整っていそうである。
その他にも、友達と仲良く濃密な会話している場面を描くなら、クリストファー・ノーラン監督の『テネット』で主人公と相棒のニールが会話しているシーンもいい。
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ロケ地はノルウェーのオスロだそうだが、日本にもこんな雰囲気の場所があるかもしれないし、場合によっては登場人物たちをノルウェーに行かせてしまうのもいいだろう。小説にはそんなことをさせられる自由さがある。
語り合うというシチュエーションといったら、リチャード・リンクレイター監督の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』の電車の中で語り合うシーンも捨てがたい。
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電車の中でたまたま知り合った国の異なる二人が、会話を重ねてだんだんと心を近づけていく物語だ。とにかく会話によって多くを表現するこの映画なら、会話の多い場面の参考にはもってこいと言えるだろう。
実際の長距離列車の予約をしなくても、この映画を見ていたらその場所の雰囲気がどうなのかがなんとなく感じ取れるだろう。
映画やドラマの撮影には多額の予算やロケ地の制約が課せられているが、小説やシナリオは場所や時間を自由に決めることができ、縛るものは何もない。
自分の好き嫌いや傾向も想像力の一部だとすれば、そういう自由さを存分に使って、組み合わせの妙で想像を広げてみるというのもいいかもしれない。