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2024年度日本アカデミー賞は、松竹の『ゴリ押し』甚だしい。~一映画ファンの嘆きと今後への提言~

近年の日本アカデミー賞

過日、今年の日本アカデミー賞の優秀賞一覧が発表された。日本アカデミー賞(以下、日アカ)は、何年も「大手映画会社の持ち回り」と揶揄され、その受賞内容に疑義を抱かれてきた。しかし、2019年の『新聞記者』の最優秀賞受賞以降、『ミッドナイトスワン』『ドライブ・マイ・カー』と非大手作品でありながら観客からの評価が高かった作品が受賞するなど「変わりつつある」と思わせるものだった。
ところが、昨年は、新人俳優賞の男性俳優の3/4がジャニーズタレント、助演男優賞や話題賞にもジャニーズが食い込んでくるなど、見事なまでのジャニーズ祭り(もちろん、内容と実力が伴っていれば良いが、ここまであからさまな選考は賞の権威を下げる)。やはり結局日アカってこの程度なのか……。

今年の日アカ雑感(という名の嘆き)

そして、今年である。優秀賞リストを見た私の感想は「松竹のゴリ押しがひどい」である。
作品賞と監督賞に山田洋次が入ってくるのはもはや予想していたことだが、主演/助演 男優賞・女優賞に、これまでの賞レースで名前すら挙がってこなかった作品(「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」「シャイロックの子供たち」)に出演した俳優陣が突如名前を連ねている。この2つはいずれも松竹の作品だ。この2作品は脚本賞その他スタッフ部門にも名を連ねている。

2024年にもなって曲がりにも「アカデミー賞」を謳っている映画賞がこの体たらくでは「持ち回り」と揶揄されても致し方ないと思うが。こういうことを許すことの弊害は、本来評価されるべき非大手作品が選考から漏れてしまうことである。例えば、ここまでの賞レースでノミネート争いを繰り広げていた『正欲』が今回の日アカでは総スルーという結果になっている。ほぼ黙殺も同然だ。もちろん、「毎日映画コンクール」や「キネマ旬報ベストテン」など、日アカよりも歴史も格も上の映画賞はある。だが、「アカデミー賞」という誰でも分かるような冠で、授賞式の様子を地上波テレビで放送し、人々に深く印象付けることが出来る賞は日アカしかない。大衆への訴求力が桁違いなのだ。そこまでマニアではないライト層にとって、「毎日映画コンクール男優主演賞受賞」よりも「日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞」の方が印象に残るし、凄いと思ってしまうのだ。
だからこそ、日本アカデミー賞は大手映画会社の思惑に従うのではなく、それなりに納得のいく選考をしてほしいのだが……。

日本アカデミー賞へ今後の提言

つくづく思うのは、賞の部門数が少ない!ということである。映画に限らず、どんな作品も一人ではできない。必ず協力してくれる仲間やスタッフがいて完成する。裏方で奮闘した人々を一人でも多く称えることは悪いことではない。
例えば、脚本賞。本家アカデミー賞では「脚本賞」(オリジナル)と「脚色賞」(原作あり)の2つに分かれているし、美術にいたっても「衣装デザイン」「メイクアップ」「プロダクションデザイン」と事細かに枝分かれしている。そして、これは強く思っていることだが『ドキュメンタリー作品賞』は早急に開設すべきだと思う。ドキュメンタリー映画で面白い作品はいくつもあるし、ジャーナリズムに通じる部分もあるので、これを評価する土台が出来ると製作側にとって後に続く活力になると思う。その他、VFXなどの視覚効果賞、また本家にもまだないスタントアクションの賞部門を作るのも良いだろう。

もしくは、今後も大手映画会社のロビー活動が収まらないのであれば、いっそのこと作品賞を「大手製作・配給」「非大手製作・配給」と分けてしまえば良いのではないか。本家アカデミー賞も作品賞は10作品ノミネートされるのだし、大手映画会社へのご機嫌伺いをしながら、映画ファンの溜飲も下げることが出来てまさに一石二鳥である。本家アカデミー賞が多様性を掲げて変革しているように、今や47年の歴史を持つ日アカも、変化する時ではないだろうか。そんな淡い期待を込めながら、この文章を締めくくろうと思う。



……えっ?今年の日アカは誰が獲るって? ゴジラ-1.0 の圧勝でしょ(鼻ホジ)


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