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4日目マレ地区【初海外、パリへ行く】
目次編と前回の記事はこちら
【はじめに】30歳になるのを機に、長年憧れていたフランス・パリで思いきって1週間ホームステイをした記録です。ホストファミリーはフランス語教師の先生(奥様)と旦那様のお二人です。
マレ地区とは?
4日目。この日はパリ3・4区にまたがるマレ地区に行くことになっていました。午前中のレッスンの時に予習として、マレについて学びました。
・12世紀頃はセーヌ川がよく増水し、辺り一面が湿地だった。フランス語でマレ(le Marais)は沼地、湿地という意味。
・修道院や沼地の開拓が進み、17世紀に国王アンリ4世がヴォージュ広場を作ったことをきっかけに、多くの貴族が美しい邸宅を建てた。
・現在のマレ地区にある建物は、ほとんどがその当時に建設されたもの。パリで最も優雅な地区と言われるようになった。
マレは中世の建物が数多く残っていて、古い建物を活かしたアパレル店やギャラリー、お洒落なカフェがたくさんあります。
またユダヤ教のコミュニティの中心地だったり、LGBTQなどが集まるお店が多かったり、多様性に寛容な地区でもあります。
OKOMUSU(オコムス) パリの大阪お好み焼き屋さん
実はレストランがめちゃくちゃ高いと言われるパリで、どうしても外食で行きたかったお店がありました。それがOKOMUSUでした。
ここは大阪出身の女性店長さんがパリに移住して始めた店舗。私はカッコいい生き方をする彼女のSNSを一方的にフォローし、テレビで特集された時には拝見し、数年間ひそかに応援していました。
事前に予約を入れて、ランチに先生と2人伺いました。途中までは旦那様が運転する車で、細くて人通りが多い路地の手前からは徒歩で向かいました。
大きな「オテル・パルティキュリエ(hôtel particulier)」と呼ばれる御屋敷が建ち並ぶ一角に、紺色のコテコテ関西風な暖簾が掛かっていました。
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店内に一歩入ると、そこはもう大阪の下町のお好み焼き屋。手前にカウンター席があって、奥は広めのテーブルがありました。
予約していた旨を伝えて、先生と2人カウンター席に座りました。ちょうど目の前に鉄板があり、お好み焼きや焼きそばが出来上がる様子がよく見える席でした。
メニューはフランスのコース料理と同じような形式で前菜(餃子など)、メイン(ここでお好み焼きがある)、デザートとあって、前菜とデザートは2種類から選べました。
注文して出来上がるまで、先生は子どものようにジッと鉄板を眺めて、時折"Très bien !"や"C'est fantastique !"など呟きながら次々と生地を焼いていくスタッフさんの手際の良さや、鰹節が踊る様子に驚いていました。
しばらくして運ばれてきたのが、こちら!
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フワフワ、熱々の生地。ここまで4日間、バゲットやチーズやオリーブオイルたっぷり本場フランスの家庭料理も楽しんでいましたが、久々に食べたソースと粉もんの味が沁みました。
猫舌の私は「野暮やけど、熱そうやから箸で食べようかな」と考えていたところ、ふと隣を見ると先生は器用にヘラでお好み焼きを食べてました。
人生初お好み焼きで最初からヘラ。先生には関西の血が入ってたのかもしれません。びっくりしました。私も猫舌と不器用に負けずヘラで頑張って食べました。
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しっかり完食した私たち。最後に少し店主さんとお話できて、嬉しかったです。
帰り際に先生は「このヘラ、どこで売ってるの?」と聞いていて、スタッフの方を驚かせてました。
アーティスティックな街・マレ
お店を後にして、街中を歩くことにしました。
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アパレル店のショーウィンドウは色とりどりで、ずっと見ていられました。マネキンが日本であまり見かけないアクロバットなポーズをしていて、使い方が独特でした。
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道中、OGATAという和風なギャラリーを見つけたので先生と一緒に入ってみました。
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先生は過去に日本人のホームステイも何度も受け入れていて、日本の文化にすごく興味津々。中には茶道、華道、香り、伝統工芸などの作品が展示してあり、一部販売されていました。
遠い異国の地で感じる日本の文化。背筋がピンとして、落ち着く雰囲気。素敵でした。
おせちを入れるような重箱が置いてあって、一式3500ユーロ(日本円で約56万円!)という値札を見た瞬間は白目剥きました。
夢に見た場所〜ヴォージュ広場
てくてく歩くこと数分。パリで最も古い広場、ヴォージュ広場にたどり着きました。
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緑豊かな広場を、赤いレンガ造りの建物が取り囲んでいます。特徴的なアーチ型の回廊にはカフェやギャラリーがたくさん入ってました。
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ふと、先生が「あれが『レ・ミゼラブル』で有名なヴィクトル・ユゴーの住んでいた部屋だよ」と教えてくれました。
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現在は記念館になっている。
すごい、すごい!テンションが一気に上がって、頭の中でミュージカル版のレミゼのオープニングテーマが鳴り響きました。
ジャ、ジャーーン!(ジャンジャジャーーン)
ジャジャジャジャジャジャーーーン!!
小学生の時おばあちゃんから買ってもらった、まだタイトルが『レ・ミゼラブル』じゃなくて『ああ無情』だった青い鳥文庫シリーズの本。
大学生になる春休み。友だちと映画版を観に行って、アン・ハサウェイの迫真の演技と『夢やぶれて』の歌声に号泣したこと。
色々思い出して、好きな作品の作者のかつて住んでいた部屋を、目の当たりにしてる現実が信じられませんでした。
さらに驚いたことがもう一つ。先生が回廊の途中で、ある看板を指差して中にずんずん入って行きました。
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「王妃の館」という意味。
そしてこちらは、私が今回パリへ行く道中に読んでいた文庫本の上下巻。タイトルは『王妃の館』。
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Château de la Reine シャトー ドゥ ラ レーヌ
直訳は『王妃の"城"』になる
この小説が約10年前に映画化され、パリで実際に撮影し、日本で公開されました。私はこの映画が本当に大好きで、この映画が私をフランスにパリに連れてきた原動力と言っても過言では無いです。
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詳しいストーリーや主要キャストなどは上のリンク先から見てみてください。気になった方はTELASAからレンタルで観れるようなので良ければ!(2025年1月現在の情報です)
特に「クレヨン」という登場人物がチャーミングで可愛くて、フランス語が達者でシャンソンが上手な役で、一推しのキャラクターです。
行きの飛行機の中でクレヨンちゃんの"Où est le docteur!"「どなたかお医者様はいらっしゃいませんか!」というフランス語の台詞を覚えて、とっさの非常事態に備えてました(使う機会はありませんでした)。
宝塚版もあります。宝塚歌劇団がお好きな方はこちらもチェックしてみてください(公演自体は2017年です)。
話は戻り、大好きな映画の舞台となる場所が目の前に現れて、私は完全に有頂天になりました。
今まで先生に対してはフランス語で話していたものの、この時ばかりは心の声が外にだだ漏れて普通に日本語で「すごい!すごーい!!」と言っていました。
先生はニヤニヤしながら私を見て、「スゴイ!スゴーイ!!」と私の真似をしてました。
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この王妃の館。実際17世紀に、ルイ14世の母であるアンヌ王妃がヴォージュ広場とホテルを隔てる棟に滞在したことにちなんで名付けられました。現在は小説や映画と同じく、高級ホテルとして経営されてます。
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王妃が北側、王が南側に広場を挟んで向かい合うように対になって建てられている。
忘れてはいけない歴史
大好きな作品の舞台の「聖地巡り」を一度に2つもした私は、ホクホク多幸感に包まれていました。
その直後、先生が教えてくれたのが次の場所でした。
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上2枚の写真はシナゴーグと呼ばれるユダヤ教の礼拝堂のドアと、その看板。下の写真はユダヤ人の子どもが多く通う学校の前にあった看板。
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文中の"DES ENFANTS DE CETTE ÉCOLE"が「この学校の子どもたち」、"DE 1942 À 1944"が「1942年から1944年まで」、"JUIFS"が「ユダヤ人」。
この単語の羅列で察しました。第二次世界大戦中に、この学校に通う多くの子どもたちがユダヤ人という理由だけで殺されたと。
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マレには他にもユダヤ人の子どもたちを追悼する場所がありました。ヴォージュ広場から徒歩で10分ぐらいにある「ロジエ=ジョゼフ・ミニュレ庭園」。
通りから少し入ったところに、ひっそりとある静かな公園です。緑豊かでちょっとしたテイクアウトのものを食べたり、読書したりできるような場所です。
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ジョゼフ・ミニュレさんという人はマレ地区の小学校の校長先生だそうです。第二次世界大戦中に数十人のユダヤ人の生徒たちを国外へ逃がすため、虚偽の書類を作成したり、アパートに生徒たちをかくまったり勇気ある行動をしたそうです。
この庭園やヴォージュ広場の学校のことを、ホームステイ先に戻ってから夜寝るまで、ずっと調べていました。
日本の太平洋戦争のことと同様に、ホロコーストやアウシュビッツの話は知識としては頭にありました。『アンネの日記』の本を読み、映画『LIFE IS BEAUTIFUL』も見ました。
しかし空襲や戦争で貧しい思いをした祖父母や語り部さんの話を聞くことはあっても、周りにユダヤにルーツがある人はいなくて、身近に感じたことはありませんでした。
日本の歴史の授業ではあまり語られることがない現実。今まで歴史上の出来事、本や映画の中の話としてしか自分は認識していなかったのを思い知らされて、大きな衝撃を受けました。
華やかなファッションやアートに囲まれ活気がある街には、実は悲しい歴史も刻まれている。それも含めて現地で肌で体感して、この1日で私はマレという街がパリで一番思い入れのある場所になりました。
さらにマレを散策
帰路につく前にヴォージュ広場の片隅にある「マ・ブルゴーニュ(Ma Bourgogne)」という店で一服しました。
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この「マ・ブルゴーニュ」も歴史あるビストロで、上記に出てきた小説版『王妃の館』にも登場します。
いわゆるウェイター、ギャルソンと呼ばれる男性の店員さんたちがキリッと白シャツと黒くて丈の長いエプロンの制服を着こなしてキビキビ動いていて、すごくカッコよかったです。
テラス席でお茶できたのも新鮮で嬉しかったです!
こちらはシュリー館という建物。ヴォージュ広場から通り抜けができて、中庭と建物が素敵な場所でした。
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「オテル・パルティキュリエってこういう風に建物が中庭を囲っている形が多いのよ」と先生は歩きながら話してくださいました。
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ヴォージュ広場を離れて、さらに街中を散策しました。
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適量を間違えて手だけでなく肘まで塗りたくった
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この入口近くの年表の看板横にお土産屋さんがあった
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入場無料!
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帰りはパリ市庁舎前からバスに乗って帰りました。反対車線にあるバス停で待っていたのですが、先生に「バスが来るまで6分あるから、市庁舎の写真を撮ってきな!」と、ジブリ映画『天空の城のラピュタ』のドーラの「40秒で支度しな!」と同じテンションで言われました。
パリでバスに乗るのは2回目。昨日とは違う路線で逆方向。ここでバスに乗り遅れたら帰れない…!
そんな一抹の不安を抱えながら、大きな通りの横断歩道をスマホ片手に爆走しました。
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無事にバスでホームステイ先まで戻ってきて、近所のパン屋で明日のパンを買いました。
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日本でもお馴染みのメーカーもちらほら
先生はめちゃくちゃ社交的で、ドラッグストアの店員さんに早速今日行ったOKOMUSUの宣伝をしていました。
そんなこんなで、めちゃくちゃ濃厚なパリ4日目が終わりました。
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源氏パイのモデルになったパルミエ(奥)。
パルミエは源氏パイの3〜4倍くらいの大きさ。食べ応え抜群でした。源氏パイもここまでとは言わないけど、もうちょっと大きかったらいいのに。さすがに大きすぎて、半分は後日のおやつに回しました。
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熱々焼きたてで美味しかった
最後まで読んでくださってありがとうございます!
旅もいよいよ折り返しです。