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多様性がある組織が強いのではなく、強い組織は多様性を持つ

多様性がある組織が強いのではなく、強い組織は多様性を持つ

はじめに 

 現代の企業経営において、DEI(多様性、公平性、包括性)は単なる流行語ではなく、組織の成長と革新を支える重要な手段として認識されています。しかし、「DEI枠」という採用手法は、誤解や偏見を助長し、個々の才能が正当に評価される機会を狭めるリスクもあります。ここで強調したいのは、多様性はあくまで経営のための手段であり、その活用が最終目的ではないという点です。

本稿では、DEIが本来目指す「不当に機会を奪われた人々が正当に評価される環境づくり」という理念を再確認するとともに、組織における多様性の導入がどのように経営戦略に寄与するか、また「適所適材」という視点からその真価を問い直していきます。さらに、このプロセスを後押しする社会全体の支援体制についても論じ、働き方と組織の革新、ひいては持続的成長への道筋を探っていきます。



多様性は経営の手段である

歴史的には、同質性の高いチームが短期的な意思決定や結束力に優れていたとされています。しかし、現代の激変する市場環境では、単一の視点だけでは対応しきれない複雑な課題が多く存在します。ここでの多様性は、単なる数値目標やイメージアップのための目的ではなく、経営戦略の一環として各人の才能を最大限に活かすための「手段」として捉えるべきです。


「DEI採用」というラベルが生む誤解

企業がDEI施策を進める中で、「DEI枠で採用された」という表現が使われると、当事者の実力が本来の評価基準から逸脱して見られるリスクが生じます。これは、属性に基づいた採用を目的とするのではなく、組織が必要とする役割を遂行できる才能を正当に評価し、適切なポジションに配置するためのプロセスが求められているからです。つまり、多様性は経営の手段として、適所適材の原則を徹底するための一要素であるという認識を改める必要があります。


適所に適材を配置する発想

組織において本当に必要なのは、形式的なDEI枠を設けることではなく、「この組織が今果たすべき役割は何か」を明確にし、その役割に最も適した人材を選び抜くことです。属性による単なる多様性の達成ではなく、各人が持つ固有の強みと役割が結びつくことにより、組織全体としてのパフォーマンスが向上します。この「適所適材」という理念こそが、多様性を経営の手段として有効に活用するための根幹です。


組織と個人の“意味”が重なる瞬間

採用は、企業が自社のビジョンやミッションを共に実現する仲間を求めるプロセスです。一方、働く個人は自身の能力を最大限に発揮できる環境を求めています。両者の“意味”が交差する瞬間、すなわち組織が「あなたのスキルや経験が今のチームに不可欠である」と明確に示し、個人が自らの価値を実感できるとき、組織は内外に強い一体感と革新の原動力を生み出すことができます。


多様性を礼賛する社会的バックアップ

多様性を経営の手段として効果的に活用するためには、企業内部の努力だけでなく、社会全体の支援が不可欠です。女性活躍推進、外国籍人材の受け入れ、障がい者雇用の拡充など、各種制度や政策が整備されることで、企業は多様な才能を適切に取り込む環境を整えやすくなります。社会が多様性を単なる数値目標としてではなく、経営戦略の一部として適所適材を実現するための手段として評価する視点を共有することが、組織の革新を後押しする鍵となると考えられます。


レジリエンス(精神的回復力)を高める多様性

多様性は、組織の柔軟性とレジリエンス、すなわち予測不能な事態や急激な変化に対して迅速に対応し、回復する能力を高める上でも大きな役割を果たします。同質的な組織では、同じ視点に偏ることで柔軟な対応が難しくなる一方、多様な背景や経験を持つメンバーがいる組織では、異なる視点やアイデアが交わることで革新的な解決策が導かれやすくなります。その結果、経営環境の激変にも動じない、精神的な強さを備えた組織が築かれると考えられます。


組織に根付く多様性と持続的成長

多様性は一時的なブームではなく、組織が持続的成長を遂げるための根幹です。表面的な「DEI枠」での採用アピールに留まらず、組織が果たすべき役割を的確に捉え、適材配置を戦略的に実施することで、多様性が真の意味で根付く環境が構築されます。こうした組織は、内部の力を結集し、外部の変化に柔軟に対応しながら、持続的な成長と革新を実現することができると考えられます。


まとめ:多様性を経営の手段として活かす

現代の経営環境において、多様性と適所適材は切り離せない要素です。しかし、多様性自体を最終目的とするのではなく、経営戦略の一部として捉え、組織が果たすべき役割を実現するための手段として活用することが求められます。DEI採用の誤解を払拭し、各人の才能を最適なポジションに配置することで、組織は内外の環境変化に柔軟に対応し、持続的な成長と革新を達成することが可能になります。

改めて経営の現場で、多様性を経営の有効な手段として活かすことを重視し、社員と企業の成長につなげていきましょう。DEIブームが落ちついた今こそ、みなさんの現場でこの理念を実践し、次のステップへと進む絶好の機会にしましょう。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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森 浩昭 / Hiroaki MORI
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