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朝が来る

ムハンマドにとって朝は憂鬱なものだった。どんなに天気が良くても気候が最高でも朝は1日の始まりでだからと言ってすることもなく時間をただただやり過ごすだけ。できる限り寝て早く夜が来るように生活サイクルを変えている。

難民問題を考える時、衣食住や安全についてがまず頭に浮かぶだろう。もちろんその通りである。彼らは人であり人間の尊厳を持って生きていくのが当然の権利だとわたしは思う。難民として認定されても待っている現実は厳しく自分の生きる意味や存在意義が感じられなくなることも多い。仕事をすること、人から求められることは生きているという実感につながり、また無視され続けその存在をいないものとして振舞われるのは本当に人間の尊厳を傷つけられる。祖国にいると生きることも難しい彼らは新しい土地でも生きることは簡単ではない。

この日はまた別のシリア人難民の男性と会った。ムハンマドより少し年上で見た目は50歳近くに見えるが実はわたしよりも年下の30代半ば。歯科技工士をシリアでもしていたため技術職人として仕事は見つかっている。

近くで一人暮らしをしている。シリアには妻とまだ幼い子供がいるんだ。自分が難民認定されて、家族ビザの申請をしようとしたんだけど言葉の問題と書類が煩雑だったのもあって結局家族を呼び寄せることができなかった。次会えるのは4年後か5年後か。それでも会えたらラッキーだよ。どうなるかわからないからね。まだシリアにいる妻と子供が心配だし。それにここで一人は本当に寂しいよ。仕事と、仕事がない時は寝ている。とにかく早く時間が過ぎてほしいんだ。シリアに帰りたい。

きっと大丈夫だよ!なんてそんな無責任なこと言えない。何も声を掛けられなかった。


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