孤独な夜

そろそろ帰ろうか。

外は優しい淡いオレンジ色した電灯と石畳み。そして8月末というのに少し肌寒い。

家に帰る前にモロッコカフェでミントティー飲んで帰ろうよ。

そう言ってカフェに歩いて向かう。店の外のテーブルに座りミントティーを注文する。一つは砂糖なしで。

まだ信じられないよ。ここで友達に会えるなんて。本当に嬉しい。信じられない。ここにも友達はいるよ。でも違うんだ。疑ってるってわけじゃないけど、みんなそれぞれ必死だしね。仕方ないことだよ。

しみじみと再会の喜びを感じるミントティー。きっとわたし以上にそれを感じているムハンマド。

わたしは孤独になりたくて旅に出る。彼にとっての孤独とわたしの孤独はまったく違うもの。わたしは帰る場所がある。いつでも安全に帰ることができる。彼が家族の元に帰られる日は来るのか・・・現実的には、言いたくないけどない可能性の方が高い。

夜はいつも家でネットばっかり。YouTube見たり、Skypeで電話したり、facebookを見たり朝方まで。夜更かしをして出来るだけ長く寝ていたいんだ。起きてても辛いから。仕事も探したよ。でも難民が就職できる場所なんてないさ。体を動かそうとジムに通ってたんだ。そこで毎日のように顔合わす人たちに挨拶したってアラブ人だって無視される。何ヶ月もね。グループワークに参加したってインストラクターがみんなにハイタッチするときも僕だけ飛ばされる。それが現実、ここでの生活。そりゃあ、安全だと思うし電気だったあるし。幸せって故郷で家族がいることだって思う。いつかガザの家族とみんなでエジプトに行くこと。おばあちゃんの時代はラファゲートが開いててよくエジプトに行ったって言ってた。妹にも会いたいしお父さんは糖尿病で心配だし。ガザの記憶がどんどん遠くなって忘れていくんだ。ガザの友達の名前ももう何人も忘れてしまった。

孤独は人を熟成させる。それは普段孤独ではない人に限る。本当の孤独は人の心を蝕む。


++訪れてくれるみなさまへ+++

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