酒販免許取得のリアル
今回はクラフトビール独立アカデミー第1回目ということで、酒販免許取得のリアルをテーマに書いていきます。お酒の製造、販売にはそれぞれ免許取得が必要です。また、販売手法や取り扱う品目によって、など酒販免許には様々なルールがあるので、要所を解説しながら私の体験談を記していきます。
そもそも酒類販売免許とはなんだろう
お酒を販売するためになぜ免許が必要であるか、国税庁の公式サイトより引用すると次のようになります。
酒類の製造及び販売業においては、酒税の確実な徴収と消費者への円滑な転嫁のために免許制度が採用されています。
要は税金のため、程度に覚えておけば問題ないです。販売免許に関しては年1回3月に、お酒を販売した量を品目別に税務署へ報告する義務があります。
ちなみに販売免許はざっくりと目的・手法・期間別に4種類の免許にわかれます。私の場合、①を取得してから条件緩和手続きにより②も取得しました。※今回は①と②についてのお話です
①通信販売酒類小売業免許
目的:一般消費者または飲食店向けにお酒を販売したい
手法:通販※2都道府県をまたぐ
期間:中長期
②一般酒類小売業免許申請
目的:一般消費者または飲食店向けにお酒を販売したい
手法:対面※お店が立地する1都道府県のみ
期間:中長期
③酒類卸売業免許申請
目的:酒類販売業者または酒類製造者向けにお酒を販売したい
手法:細かな分類があり、本記事では触れないため割愛
期間:中長期
④期限付酒類小売業免許
目的:臨時に販売場を設けて酒類の販売をしたい
手法:対面
期間:短期
「免許申請の手引き」は攻略本!?
※これ以降出てくる免許の話は基本的に通信販売酒類小売業免許のことです。
前述の4つの免許には「免許申請の手引」という攻略本があります。例えば通信販売酒類小売業免許申請の手引きでは、全62ページに渡り申請手続きの流れから様式例(記入例のようなもの)まであるので、手引きを忠実に読んで申請すれば間違いなく免許を取得することは可能です。
しかしながら、「手引のボリュームが多い....」、「専門用語を理解するのが難しい..」といったように、このような手続きが初めてで、とっつきにくい方もいらっしゃるのではないでしょうか。(私もそうでした)
そのため皆さんにはポイントを抑えてお伝えしていきます。初めから100点満点の申請書を用意しないといけないわけではないのでご安心ください。税務署の方に申請書を見てもらったり、相談することもできます。
酒販免許取得の大まかな流れをチェック!
免許申請から交付の基本的な流れは以下の通りです。
1.申請書を販売場所在地の税務署に提出する
2.審査
3.書面での通知
4.登録免許税の支払い
5.酒類販売開始
1.の申請書は50枚ほどになりますが、構えなくて大丈夫です。気楽にやっていきましょう。販売場所在地の税務署はこちらで確認できます。
酒販免許の要件を満たしている?
まずはご自身または会社が免許の要件を満たすか確認します。3つの要件を満たせばOKです。以下該当するでしょうか。
①酒税法 10 条1号から8号関係の要件(人的要件)
(1) 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがないこと
(2) 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年以内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
(3) 申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと
(4) 申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること
(5) 申請者が、未成年者飲酒禁止法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(未成年者に対する酒類の提供に係る部分に限る。)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
(6) 申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
②酒税法 10 条9号関係の要件(場所的要件)
正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていないこと
③酒税法 10 条 10 号関係の要件(経営基礎要件)
免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当しないこと
社会通念上、きちんとした人(①)、場所(②)、経営(③)であれば問題ないということです。申請書では誓約書や建物の配置図、事業計画などを提出し、要件を満たすかチェックされます。
また、申請書とともに酒類販売管理研修を受けることも必須です。私の場合は日本フランチャイズチェーン協会主催の研修に参加しました。
事業計画は3パターン作ろう
事業計画ってそもそも何?という方は「事業計画_書き方」みたいにググると、freeeのコラムとか出てくるので参考にしてみてください。
事業計画は酒類販売免許の申請に必要ですが、融資など資金調達でも当然ながら必要です。独立・開業されて、資金調達もお考えの方はこの際に3ヶ年程度の事業計画を立てるのをお勧めします。
私の場合も日本政策金融公庫などの創業支援融資を活用したので、まとめて3ヶ年の貸借対照表及び損益計算書を作りました。※資金調達については別途noteを書く予定です。
また、もう少し踏み込むと売上や利益など数字が絡む貸借対照表及び損益計算書は3パターン作りました(最善・中間・最悪)。ちょうどコロナということもあったので、「最善の計画で行きたいんですけど状況が悪くなる可能性もあるので、その場合は最悪のパターンまでは見えています。」のように説明していたと思います。結果的に融資は1500万円借りることができたので間違ってはいないと思います。
気軽に税務署に相談しよう
申請をしてから何度か税務署からフィードバック(修正指示)がありました。申請書類にはオンラインショップや納品書の見本が必要なのですが、これは私が最もフィードバックを受けたところです。お酒の販売において、20歳未満へのお酒販売禁止の旨をわかりやすく・明確に記載することで問題ないです。
オンラインショップや納品書の見本として参考にするといいのは、なんでも酒やカクヤスです。試しに何か購入して、トップページ、商品詳細ページ、購入情報入力ページ、購入完了メール、納品書などをキャプチャ保存すると良いです。
「免許も取得していないのにオンラインショップなんて、、お金かかるし作れない」という方は、BASE使ってください。無料です。納品書はエクセルで作れます。
※該当する税務署によってはかなり細かく突っ込まれます(特にオンラインショップ)。細かい修正はパワポなどで修正して申請書提出してください。免許交付された後にはしっかりと本番環境のページも修正しましょう。
条件緩和手続により一般酒類小売業免許をとれる
私の場合の酒販免許取得の流れを細かく説明すると、会社の本店事務所(原宿の店舗ではない)にて通信販売酒類小売業免許を取得し、条件緩和手続きにより一般酒類小売業免許を取得。その後、販売場移転の許可申請により通信販売酒類小売業免許及び一般酒類小売業免許の販売場を本店事務所から現在の原宿の店舗へと変えています。
※会社の本店事務所とは私の自宅も兼用しているマンションの一室です。普通のマンションでも免許取得は可能です。
※条件緩和手続きと販売場移転の許可申請はすでに酒販免許を取得されている方ならハードルが低いので割愛します。
通信販売酒類小売業免許申請の段階では事業計画の中に原宿でボトルショップをやる予定はなかったので、上記のような流れとなりました。
時間軸とともに改めて整理すると、
・通信販売酒類小売業免許申請:3月初旬
・通信販売酒類小売業免許通知:6月11日
・一般酒類小売業免許の条件緩和手続き:6月中旬
・店舗物件探し開始:6月末
・店舗物件契約:7月14日
・一般酒類小売業免許の条件緩和通知:7月15日
・販売場移転の許可申請:7月中旬
・販売場移転の許可通知:8月19日
・店舗営業開始:8月29日
怒涛の手続き。どこかで申請が長引いてたら店舗営業開始が遅れていましたね。今考えるとゾッとします。
通知書
免許が交付された時の通知書の見本です。黒塗りの箇所には通知書番号と販売場の位置(住所)が記載されています。悪用しないでくださいね。
通信販売酒類小売業免許
一般酒類小売業免許の条件緩和
販売場移転の許可
酒販免許取得に発生した費用と時間
発生した費用
登録免許税3万円+税務署までの交通費
※税理士さんなど免許取得を代行してくれる人を介した場合の相場は+30万円程度です。
発生した時間
・申請書類準備:1ヶ月
・通信販売酒類小売業免許申請の審査期間:3ヶ月
・一般酒類小売業免許の条件緩和手続きの審査期間:1ヶ月
・販売場移転の許可申請の審査期間:1ヶ月
※申請のタイミングで緊急事態宣言による飲食店の期限付酒類小売業免許申請が緩和され、免許申し込みが増えました。一般的には申請から交付までは2ヶ月ほどです。
最後に
最後にTipsを列挙します。知っておくと損しないです。
Tips
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の目的にお酒の販売を明記
・書類作成は時間かければそのうち慣れる
・資本金200万は用意する
・税務署の方は優しい。積極的に聞きたいことを聞く
皆さんの参考になれれば幸いです。個別で相談にも乗っています。良かったと思う方はTwitterとYouTubeやってるのでフォローしてくれると嬉しいです。あとお店の方にも来てね!
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