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Netflixドラマ『Young Royals』感想
今回はNetflixオリジナルドラマ
『Young Royals』(2021)
監督:Rojda Sekersöz
についての熱い感想を、
テーマに分けてちょっと整理しつつ徒然なるままに書きたいと思います。
とっても良いドラマでした。シッパーとしても大興奮です!
◉あらすじ
舞台はスウェーデン。全寮制の名門校ヒーレシュカに入学することとなったヴィルヘルム第二王子 (エドヴィン・リディング) 。そこで通い学生の移民系の男の子、シーモン(オマール・ルドバリ)と出会い彼に心を奪われます。しかし、ヴィルヘルムは突然起こった事件によって次期王位継承者になるという状況に直面する。彼が下す決断とは...。
オリジナル音声・日本語字幕で鑑賞しました。
※以下、鑑賞済みを前提に書いてます。ネタバレとにかく注意です!
◆ヴィルとシーモンの(非常に萌える)関係性
【君って… きれいだな 美しい…】
これが一貫したヴィル(ヴィルヘルム王子)からシーモンへの愛・想いを表す言葉だと思う。
Ep.4で兄を亡くし、皇太子となったヴィル。
兄を失った悲しみと、シーモンともう恋愛するわけにはいかないと自身を戒め(泣)彼と会えない苦しみとで、酒と薬に溺れハイになったヴィルは、シーモンに電話をかけていた。
そんなヴィルから電話を受け、シーモンは夜のサッカー場に駆けつけます。
王子は、電話越しにかすれた声でシーモンに囁きます。
「世の中のもの全てフェイクなんだ(…)僕は君が好きだ それだけは本物だ」
なんて美しい告白の言葉。なんて美しいシーンなんでしょう。
一番上の台詞は、駆けつけたシーモンを見つめながら、感動して呟くヴィルの言葉です。
ヴィルという人は、
伝統的な王室の価値観、いずれ王になって国を背負うという責任の重圧に押し潰されそう。
身近に理解者はいない。誰とも本音で話せない。
そんな孤独な世界で、
彼がこの世に見つけたたった一つの本物。
初めて出会ったとき、シーモンはこう歌っていた。
「健全っていうものはバカらしい」
王子もこの歌を後にパーティーで口ずさみます。
また、授業でのシーモンの政治的な発言に対して王子は共感している。
シーモンの、中指立てたキーホルダー。
ちょっと反骨精神を持ってるところも含め、2人は感覚が合っている。
似た感性をお互いに見出すんですね。
ヴィルを演じる、エドヴィン君が素晴らしい俳優です。
ヴィルは王族として何不自由なく生きてきた余裕がそうさせるのか、ナチュラルに「この子、やるな…ゴクリ」て感じの言葉や行動がありキュンとします。身のこなしが上品です。
シーモンという人は、
まともな人。
ヴィルにとって感性が合う人。
心が綺麗な人。
そして、美しい人。ヴィジュアルが本当に美しい…悩ましい…!
作中で露骨に美形扱いされてるようなキャラじゃ無いんだけど、
色気がある。純潔さの中のエロスというか…。人のイケナイ部分を掻き立てちゃう感じ。例の動画の中でも美しい…。
シーモンは、クラスで階級差別されナメられる存在。着てる服もこだわりがなく普通のもの。
華やかでリッチな美男子女子がいっぱいこのドラマには登場する。なのに、
このドラマの中で一番美しいのは彼だ、と思う。何かが特別なんです。
彼は、どんなに手を汚しても、
誇り高くて高貴。
王子がもう、そんなシーモンにうっとり。夢中。
首っ丈な王子が尊い!
それを受け入れるシーモン…。
王子と常に対等でありながら、彼を包み込む存在でもある。
Ep.4の初めてのベッドシーンで、シーモンは下。
Ep.5魚の名前…の甘美なシーンでは、王子にシーモンが脱がされてる。つまり、シーモンが王子のパッションを受け入れている訳です。
好き!!(尊い)
そんなところにも2人の関係性の描写に一貫性があって嬉しく思います。。
王子は日常のシーンでも、シーモンと相対するとき常に「今すぐ君を抱きたくてキスしたくてたまらない」と全身で語ってるのが、たまらないんです。
王子のシーモンへの深い愛が感じられる。
(TikTokでのコメンタリー こちらの動画で、エドヴィン君が↑これを意識して演じていた、と話していて鳥肌たちました。)
あと、シーモンは成績優秀で頭がいいです。
(Ep.5 のテストシーンで、カンニングが横行する中、テストをすらすら解いてるシーモンの横顔を見て「さすが俺のシーモン」ってなってる(様に見える)王子のシーンにキュンとした。)
Ep.6 のシーモンとシーモンの妹・サラの晩ご飯での喧嘩のシーンが大好きなのですが、
サラがシーモンに対してこう指摘します。
「(兄貴は)すぐ人を助けようとする 最初はパパ それに私 今はヴィルをね」
(筆者「ハッ 妹に指摘されるまで気づかなかった…」)
言い返す兄に対して、
「また始まった 私を守ろうとする」
この台詞とシーンが素敵過ぎて大好きなんですが、
あ、シーモンってそういう人だったんだ、と彼女の台詞に気づかされる。
そんな彼に私も夢中(泣)
私は優しい人が愛されるシチュエーションが大好きなんです。
「キレイな心を持ってる」と、サラは兄に言います。
シーモンは真っ当な人。
この世にまともな人間って本当に少ない。
その美しさに王子は気づいているんですね。
シーモンは、王子にとってきっと"真実"なんです。
かりそめの友情や体面なんかじゃなく、王子が求めてやまないものは、真実。
その真実が、美しい肉体をもって目の前に現れたのだから。。
そんな2人の恋と、愛は、私たちの眼に美しく映ります。
Ep.6 での、あのいろいろ起こってからの、最後の、ハグ。
そして、王子の台詞…「愛してる」
ドラマを通して、描写が丁寧で、深く、リアルで、
本物の想いって感じられた。
ちなみに。
主演2人によるTikTokでのコメンタリーで、なんと監督の意向で撮影ではインプロヴィゼーション(即興演技)が多く、親密なシーンのほとんどがインプロだと語っています。驚くべき事実。
Ep.4 の「君って… きれいだな 美しい…」という台詞も、インプロなのかな?
セクシャルなシーンは、Intimacy coordinatorの方(担当された方のインタビュー動画に飛べます)がまるでダンスを指導するように振り付けを指導してくれたと語っています。おかげで、とても心地よく撮影できたそう。
◆魅力的な音楽
作中で流れる音楽がどれも良いです。
その中でもとても印象的な、Eliasの “Revolution”という曲。
歌詞がヴィルの心境やドラマのテーマと重なるので、引用してみました。
(…)lies, they will hurt you [嘘があなたを苦しめる]
: ニセモノの世界・残酷なこの世界
How beautiful it is[なんて美しいんだ]
: シーモンの存在=美しき革命の象徴
シモーンへの心を奪われた美しさへの賛美も感じられます。
Let’s start a revolution[革命を起こそう]
City’s on fire but it’s beautiful[街が燃えている。けど美しい]
: 2人の愛を抑圧するこの世の伝統や価値観を変えたいという燃える革命の精神。でもなんとなく、2人の世界でこれを彼に囁きたくなる感じ…。
作中でもたまにある、他の世界はどうでもいいから、目の前の真実さえ抱きしめられればいい。って感じの、甘美な排他性が個人的に非常に刺さります!
革命と美。
クソな世界を燃やしてしまいたい。そんなアンニュイな面もある歌詞、でも…
ヴィルはシーモンから貰った勇気を持って、これから正々堂々と世界を変えていってくれることでしょう。
今年11月公開のシーズン2が待ち遠しい☺︎
◆没入感のある映像美
土に触れる指先。肩に触れる指先。
光。接写。視線。息。肌のキメ。目眩く想い。
触覚的な要素に注目して撮られている映像が、官能的で美しいです。
人間の機微の描写が凄い。
表からみた裏、裏から見た表が描写されていきます。
表と裏に関しては、人間だけではないです。例えば、豪華な父母会が終了した後の、清掃の様子も見せます。
そういう眼差しが、偏っていなくて、柔らかく感じるのです。
◆主人公・女子たち 対 マッチョイズム
マッチョイズムが非常に上手く描かれてますね。
それの体現者、代表者がアウグスト。
男性中心主義的社会において一番地位確立しやすく、もてはやされるタイプだよね。あの立ち回り方、怖いなぁ。
そしてそれは同時に、女子から見たらクズ男あるある。
ちゃんとこのドラマにはFemale Gazeがあり、この視点で描かれていると感じます。
出た!通過儀礼、管理、支配、強がり、下ネタ、“高貴な集まり”秘密倶楽部、、など、トクシック・マスキュリニティあるある詰め合わせセット。
それと対立する価値観を持っているのが主人公であるヴィルと、シーモンと、女の子たちな訳です。
例えば、とてもさりげないシーンではあるのですが、
Ep.5 での、2人で初めてベッドを共にした後の朝。
2人で過ごしたことがバレないように部屋から出られず朝食が食べられないシーモンに、王子は自分だけ朝食にありつくのではなく、彼のためのサンドイッチをこしらえて渡します。
ささやかだけれど、これって大事ですよね。そんな場面にマッチョイズムとは対局にある性格を感じます。
女の子たちの描き方が素敵です。
稀に見る生々しさですね。それこそ、裏も描かれるというか。サラや、フェリスは特に!
シスターフッドも描かれてます。
クラスのほとんどがどうしようもないティーンギャルなんだけど、
中でも面白かったのが、フェリスの同室の女の子:マディソン。魔術や占いを嗜む女の子。
彼女は友達の手相を読んだり、さりげなくタロットしてたり、巫女風のドレス持ってたり、浄化の儀式をフェリス(と王子にまで!)に施してた。
こんな風にウィッチクラフトが描かれてることに感動しました。
今のトレンドというか、ソロ魔女が全世界的に増えてることが影響しているのかな。それを監督は意識してるのかな?
そこがおさえられてることに驚きだよ。最高〜 we are sister.
あと…シーモンの地元の友達の女の子が素晴らしいキャラクターでした。
◆王室、問いかける瞳
Ep.6 で、主人公2人のセクシャルな動画が流出してしまい、自分の動画ではないと公表することをヴィルは王室から強要される。
世間のスキャンダラスな取り上げ方に対し、王子と伝統ある皇室を守るための女王の提案。
シーモン「間違ったことはしてない」
ヴィル「間違ってない そうだよ」
2人は寄り添います。
特別でパーソナルなシーンが他人によって暴かれた、その暴力的な行為を追及すべきなのに。犯人は逃げおおせてしまう。
シーモンは…誰もヴィルが何を言うか強制できないと言うけれど、
そんなことはないんだよね。
ヴィルは、家族、特にお兄さんへの愛もあるから。王室があるから。
女王の言うことも分かりますよ。王子は若いし…。
でも、、女王のあの印象的で耳障りな電話。女王は何からヴィルヘルムを守ろうとしているのか?世間が抱えるあまりの矛盾。異性愛規範は正義ですか?手の中にある、己の真実。
何が一番大事なのか?世界に問いかけます。
主人公の立場が”王子”というところが、このドラマの怖い(凄い)ところ。
伝統から絶対に逃れられないんです。アンタッチャブルなタブーからも。
真っ正面に立ちはだかります。
本当に感動的なドラマ。
シーズン2が始まるまでに何度も観ます☺︎
(アレキサンダーがちょっと気がかり…再登場ありうる?)