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『ホーリービジョン』

『ホーリービジョン』No.068

輝く光体が上空で揺らめいている
形を歪めながら三つに分かれ、それぞれに散っていった…

少女はいつもの様に森を散策している
ふと足元には見慣れない綺麗な黄色い花
屈んでそれを摘みっとった
その時、一羽の小鳥が舞い降りる
白い煌めきは、少女の肩に飛び移った
自然と笑みがこぼれる
花弁から吸い込まれた香りは、鼻腔を満たす
澄み渡るさえずりは、三半規管を揺らす
少女は段々と息苦しくなった
平衡感覚を失い、よろめき始める
そんな身体を支えるように、黄金色の風がふわりと受け止めた
光の粒子が合わさりながら、純真な肉体を包み込む
やがて壮大なビジョンが彼女の中に映し出されていった…

大勢の人達の勝鬨と悲鳴
乾いた口には血と土埃
腐敗と炎による悪臭が漂う
眼前に映る無数の生と死の狂乱
鋼の冷徹と灼熱がまとわりつく…

少女は幾度となく、このような感覚に襲われる
そしてふと悟った…

“あの光は神からの啓示であり、私の未来…”

百年戦争と呼ばれた、長きにわたる権力の闘争
閃光の如く現れ、無残にも散った、はかなき運命
その少女は“オルレアンの乙女”として、今も人々の心に輝き続ける…

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