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『ソルト安堵プラム』

『ソルト安堵プラム』 No.071

少年は、蹴られた空き缶を探して草むらに分け入った
あいつ、何でこんな遠くまで飛ばすんだよ…
文句を言いながら探していると、茂みの奥に廃材で建てられたような小屋が見えた
あ…!あんなところに…
それは、屋根を覆う蔦に挟まっていた
少年はため息をつき、仕方なくそれを取りに行く決心をする
手を伸ばして届く高さではなかったので、周りを見渡し、台になるモノを探した
唯一使えそうなものは、木が腐りかけの木箱
恐る恐る木箱の角に乗り、蔦を掴んで空き缶に手を伸ばす…
バキッと木が折れ、グキッと足首を捻り、ドカッと倒れ込んだ
足首の痛みから声を上げそうになったが、グッと堪える
人の気配を感じ後ろを振り向くと、髪の長い白髪の爺さんが立っていた
急いで起き上がり走って逃げようとしたが、足首に激痛が走り、うずくまる
動くな!
そう言って爺さんは少年の足を掴み、そっと足首を両手で包んだ
足首がじんわりと温かくなり、だんだんと痛みが消えていった…
不思議な気持ちのまま、戸惑いながらもお礼を言う
“いい塩梅になったな”
そう言って目じりに寄ったシワは、どんな大人よりも優しく見えた…

その日から、少年は暇を見つけては爺さんに会いに行こうと決めた
一か月後に引っ越すことになっていたが、転校先でいじめられないか心配だと相談する
少年は、身体が他の子より大きいだけで運動神経と性格は良かった
それを見抜き、爺さんは在る秘術を教えようとしていた…

次の日の夜、台風がこの町を通過し、甚大な被害をもたらした
翌朝急いで自転車に飛び乗り小屋の前に辿り着いたが、ほとんど何も残っていなかった…
込み上げる感情を必死で抑えながら辺りを見回すと、足元にインターホンが転がっている
鳴るはずのない半分壊れたそのボタンを、何故か押したくなった…
“いい塩梅じゃ…”
どこからともなく、そんな声が聞こえた気がした…

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