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文舵練習問題1-2

たねや

 たねやのばあちゃんは怖かった。駄菓子屋のばあちゃんだが、いつも子どもたち相手に不機嫌さを隠さなかった。細い体をポリエステル製の薄手のワンピースに包み、そこから出る白く骨ばった手足は冷たい感じがした。特に腕はかたい孫の手を思わせた。白髪の髪は手入れが行き届いているとみえ、つやがあり軽くウェーブをしていた。その波の間からじろりと見る目は森に棲む狼のようだった。しかし低学年生が自由に行けるところなんて、駄菓子屋以外なかったから仕方なく子どもたちは通っていたのだ。怖さに加えてばあちゃんはせっかちだった。どれを買おうか迷っている子には「早く決めんね」と急かした。「いつかクジを当てて手に入れるぞ」と壁の一番上に貼ってあるカラフルなスーパーボールを見つめる子には「当たるわけないやん」と断言して早く諦めさせた。ほかのあたりくじも、当てられるのを執拗に嫌がったので、子どもたちは誰かがあたりくじでも引いたら、ばあちゃんはたくさんお金をとられるんじゃないかと噂した。あるとき少年のうちの一人が家に帰り、たねやのばあちゃんはお化けより恐ろしいという話をした。その子の父は懐かしいといい「前はいい人やったらしいよ」と昔聞いた噂を聞かせたそうだ。たねやは昔、種を売る店として始まった。しかし種の袋の中身が全部でたらめで、ピーマンの種を買ったつもりがキュウリができたり、トマトを買ったのにニンジンができたりしたそうだ。客は激昂して店に押し寄せ、二度と買いに来ることはなかった。種は業者からの仕入れの品だったからばあちゃんに罪はない。けれど商売はあっという間に立ち行かなくなった。それから子ども相手の駄菓子屋に鞍替えしたのだった。少年はみんなを集めて聞いた話をした。それからは、ばあちゃんに冷たくあたられても「種を騙されたのだから仕方がない」とひそひそと小声で話すのだった。


うーん、1−2のつもりです!

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