ティアハイムベルリンで働く!その5
こんにちは!愛犬・愛猫の一生を共に見つめるパートナー、トナリノの野原です。
今回はティアハイムベルリンでの譲渡や、残念ですがそこから派生しているであろう問題をピックアップします。
※2018年の時点で書いた私見です。現状は既にだいぶ変わっているかもしれません。
大まかな譲渡の流れ
まずはティアハイムベルリン(特に猫セクション)の大まかな譲渡の流れを説明します。
(※猫以外のセクション譲渡については実際に見ていないのであしからず)
まず職員が里親希望者と話をし、どのような猫を探してるかを聞きます。
仔猫や疾病持ちであれば世話の手間もかかるため里親条件が厳しくなります。
次に、住んでいる家の情報(持ち家か借家か、何㎡か、何階か等)、家族構成(ペット含む)、外出頻度、金銭状況などを確認し、その住環境に適した猫を職員が紹介するというのが見学不可エリアSchillow Hausでの基本でした。
見学可能エリアだと、来場者は自由に施設内を行き来でき、気になる猫がいればそのボックスのカード(譲渡条件等が書かれている)を見て職員に声をかけます。
ここでも同じような質問をし、その家族と猫がマッチングしそうかどうかを検討します。
合わなそうであれば、別の合いそうな猫を紹介したりもするそうです。
要は、来場者が第一印象で”欲しい”猫を決めるのではなく、職員側がその家族に”合う”猫を探すのです。
その後実際に猫と触れ合うためにボックスに入り、職員がその仔の性格を説明します。
触れ合い後トライアル希望であれば、里親希望者は別館の受付へ譲渡料の支払い等手続きに行き、戻ってきて猫を受け取ります。
もちろん持参キャリーもなく何気なくふらっと立ち寄った人間に譲渡はしません。
きちんと猫を飼うことを検討して準備ができている人にだけ譲渡します。
猫の場合は持参キャリーに入れてお渡しとなり、後日訪問もしくは電話にて状況確認、うまくいってるようであればそのまま正式譲渡という流れになります(セクション、個体によって異なる)。
実際、「HPを見てこの仔が気になる」といって電話問い合わせもしばしばありました。職員がこの里親希望者に渡して大丈夫かをしっかり吟味して、それを確認できる証拠があれば数日のうちにお渡し、というのが猫では多かったように思います。
一方、犬の場合はより多くの回数、何度も通ってもらって散歩やふれあいの時間で関係を密にしてからの譲渡という流れになるそうです。
(犬の譲渡の方が、環境慣れ、人慣れ、様々な面でより複雑で、出戻り率が猫より多いからではないかと推測します。)
肝心なのはその家族にマッチするか否か。
それが譲渡される仔の今後を左右するからです。
譲渡条件は職員さんのさじ加減?
日本で特にその傾向がありますが、ドイツでもやはり仔犬仔猫の里親希望者が多いみたいです。
Schillow Hausの入口に母猫ハウスと書かれているため、仔猫希望者がよく質問に来ていました。
仔猫の審査は当然ながら成猫よりも厳しくなります。
仔猫や仔犬は世話に特に時間がかかるし、今からいろいろ教えていかねばならないのです。
できれば一匹だけでなく、兄弟で受け入れてもらって遊び相手がいた方が良いです。
もし条件に合った家族がいても、その仔猫たちがまだ幼齢であればしばらくは母猫と一緒に過ごさせ、乳離れしてからの譲渡となります。
ちなみに、譲渡条件もある程度その職員の裁量によるなぁという印象を私は感じました。
一定のルールはありますが、その職員が「この仔には広い空間が必要」と判断すれば、ルール上の広さを満たしていたとしても断ることがあったのです。
ドイツではどの分野でもそうだと思いますが、その担当者によって求めることが違ったりします。
仔犬仔猫の話に関して一言述べるとしたら、成犬成猫の方が性格がわかりやすいし、世話に手間がかからず迎え入れるのに難易度が低いのではないでしょうか。
もちろん人間の赤ん坊ほどまでつきっきり手厚く世話せずとも育ちはするでしょうが、その動物はいつかフラストレーションが溜まって人間にとって都合の悪い”問題行動"を起こすようになりかねません(それを問題と感じているのは人間だけかもしれませんが…。問題行動という言葉の表現がどうも苦手)。
審査の厳しさが不満を生む?
少し話は逸れましたが、このようにティアハイムベルリンでは誰かれ構わず譲渡というわけではありません。
そうなると断られた里親希望者の中には不満を持つ人も出てきます。
私はドイツに住んでいた頃、ベルリン市内の別の非営利法人にて保護猫施設のボランティアもしていました。
そこには「ティアハイムでは猫を貰えなかった」と言ってやって来る人々もいました。
もちろんこの団体でも審査があり、明らかに不適合な人は里親になるのをお断りしていましたが、確かにティアハイムよりは条件が緩かったように思います。
逆にティアハイムではこの団体から貰った猫が問題行動ばかりするので手に負えず手放しに来る人もいたそうです。
いずれにせよ、ここから見えてくるのは、なぜ自分が断られたのかを理解していない人が次なる問題を生みかねないということです。
噂というのは一度発生するとものすごい速度で伝播していきますよね。
そのうえ、質(たち)の悪いことに、伝播途中で情報がすり替わってしまうことも多いです。
ティアハイムとその保護団体は、その噂によって双方が不信感を抱いているようにすら感じました。
また、ドイツで貰えないのであれば外国(ドイツ近隣の東欧国中心)から買えばいいのだと、他の入手ルートを探す人たちもいます。実際、あらゆる手で外国の業者がドイツで生体販売をしているようで大問題になっています。
そこに問題点を感じてなりません。
「自分は可哀想な動物を迎え入れようと思っているだけなのに否定された」と感じるのではなく、動物との暮らしにはある程度思い通りにはならないことが出てくるのだということを理解して頂きたいと、強く願います。
その条件を満たさないのであれば、今はただ動物と暮らすタイミングではないのです。
ティアハイムベルリンで勤務して、いかに多くの動物たちが様々な理由で飼い主に捨てられ心に深い傷を負っているのか、まざまざと体験しました。
人間はペットを捨てることを1つの過ちとしてリセットし前を向いてやっていけるかもしれませんが、動物たちは人間がいなければ生きてはいけません。
たとえたどり着いた先が動物保護施設であろうと、大好きだった人のことを諦めて次の飼い主と生きていくのに相当な時間がかかるのです。
動物を飼うことは簡単なことではありません。
「命を大切に」という言葉を多くの方々が当たり前のように使っていますが、その言葉が独り歩きしていて、人々が新の意味を理解していない印象を受けます。
どうか、動物は生き物であって感情があって意思を持つということを、より多くの方に理解してほしいです。
本日はここまでです!
次回は、
・ティアハイムベルリンを退職するまでのこと、感じたこと
を振り返っていきます。
お読み頂きありがとうございました✨
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