臨床心理カウンセリングに1年間、通ってみた。傾聴される側として。
2020年2月から1年間。
私は某国立女子大の臨床心理センターにカウンセリングを受けに通った。
初めは孫のKANAのことが心配だった。
5歳で母を亡くした小さな女の子をどうケアしてやればいいのか?
子供の心理相談を扱っているところを捜して、相談に行ったのがきっかけだった。
その頃、KANAは家でも公園でも突然フリーズすることがあった。
覗き込むと目にいっぱい涙を溜めている。
母親のことを思い出しているのだ。
お人形遊びをしていても、
救急車が出てきたり、ママ役のお人形が死んだり、はたまた赤ちゃんが生まれたりというシチュエーションを繰り返した。
KANAの状態を聞いてもらうと、それは自然な反応だということだった。
心配ならお孫さんを連れて通ってもいいですよと言われた。
でもよく考えたら、
ムコの家に引き取られた今、
私が定期的にKANAを連れだすということもやりにくいなと気がついた。
あちらのお義母さんの手前もある。
これが嫁いだ娘を亡くすということの現状だった。
もう私が以前のように口出しをすることはできないのだ。
現実を噛み締めていると、先生から
大変な経験をされたのだから、あなたがしばらく通ってみたらどうですか?
と提案された。
私は民間ながら、心理カウンセラーの資格を持っている。
私がですか?と思ったのだけど、
まぁ、医者でも自分が病気になったら医者にかかるやろしと思った。
受ける側はどういう気持ちなのか?
実際にどういうやり方をするのか?
体験してみるのもいいと思った。
カウンセラーは大学院生、研修生なので、料金は50分2100円と格安だった。論文のネタになるのやなと思った。
同じ曜日の同じ時間に毎週来るように言われた。
それで心の変化をみるらしい。
本当のことをいうと、
人生経験もない「若いお姉さん」に話を聞いてもらっても何かの足しになるのかなと思った。話す相手は自分の娘より若い子だ。
私の担当はMさんという、誠実そうで、ちょっとふくよかな人だった。
優しく受け止めてくれる感じで、相性は大丈夫そうと思った。
カウンセリングでは、まず
「今日は何をお話されたいですか?」と聞かれた。
別に前もってネタを考えて行った訳ではないが、私は毎回、ほぼ50分喋りまくった。
どこかへ行ったり、何か行事のあった時はそのことを喋ったし、
何もなくても、ふとした心の動きや気づきを話した。
いつか、このことをnoteに書きたいという話もした。
傾聴というのは、中々むずかしい。
ロジャーズ博士の来談者中心療法(パーソンセンタード・アプローチ)でやったよな。
ロジャーズの3原則とは、自己一致(congruence)、共感的理解(empathic understanding)、無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)
つい、意見やアドバイスをしたくなるが、それをしてはいけない。
が、ただ頷いて聞くだけでは、本当に聴いてくれてるの?となるので、聴いてるという証拠に、ときおり来談者の発言をうまく纏めて短く返すことをやる。
Mさんはいつも、にこやかに聴いてくれた。
安全な環境で、自分の思いを遮られることなく話せるということは、気持ちが良かった。
真っ白い壁のように、私の投げた言葉を受けてくれる。
弾力のある汚れのない壁。
一生懸命、こちらに寄り添おうとしてくれているのが分かる。
若くて経験がないということは、むしろ良かった。
私だって本当は話したいことが山ほどある。
私はどうして欲しいんだろう?
「亡くなった娘が~」と私が切り出したら、「そうなんですか」と顔色を変えずに聴いてくれるのがいい。今もいるように彼女の話がしたい。ちゃんと過去形で話すから。
腫れ物に触るようにその話題を避けられるのもイヤし、かと言って、提案やジャッジもゴメンだ。
かなり勝手で高度な要求だ。
私の周りの友人や知人にそれを求めるのは酷な話である。
約1年間通った次の3月、Mさんの卒業に合わせて私もカウンセリングを卒業した。
丁度いつまで通ったらいいのかなと思ってたところだった。
正直なところ、これに救われたというような思いはない。通わなかった自分がどうなっていたか分からないので比較できないから。
もともとひどく落ち込むこともなかったし、感情の起伏もあまり起こらなかった。
ただやはり、自分の思いをどんな些細な事でも丁寧に聞いてもらえるというのは、とても気持ちが良かった。
お蔭で自分の気持ちを整理することができたし、話している途中で気づく事も沢山あった。
自ら既知の人たちとの関係を断った今、話を聴いてもらえる時間は貴重な時間だったと思う。
そして、改めて確信したことは、
私は「本当の自分の核の部分はさらけ出せない」ということ。
どんな状況や誰に対してでも「不可侵の自分のコア」があるということ。
多分、墓場まで持っていくのだろう。
Mさん、きっといいカウセラーになるやろな。就職先で上手く行くといいな。
そして、まだこの場に及んでも、人のこと考えてるお人好しの自分に呆れた。
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