【24/25シーズン】ダニ・セバージョスの現在地

控えあるいはそれ以下の存在

セバージョスについて考えると思い起こされるのは、23/24シーズンが始まる前の彼のインスタに上がっていた自主トレーニングの映像だ。マドリーの中心選手たちがオフを満喫する中、その悔しさをバネに努力する姿に心を打たれ、彼のマドリーでの成功を願わずにはいられなかった。
22/23シーズンはチームとしても、セバージョス個人としても悔しいシーズンだったろう。ラ・リーガでは2位でフィニッシュし、CLではマンチェスター・シティに準決勝で敗れてしまった。また、セバージョス自身はラ・リーガではシーズン中盤に先発として多くの試合に出場したものの、CLでは先発として出場することはほとんどなく、7試合の出場で総出場時間は79分だった。

しかし、23/24シーズンでもセバージョスの努力は報われなかったように思える。今季こそはモドリッチやクロースに取って代わる存在になるかと期待していたが、シーズン開始直前に負傷し戦線離脱。そのあとはベリンガムを中心としたチームが完成されてしまい、戦線復帰した後もスタメン争いをすることすらできなかった。完全なベンチ要員となってしまっていたのだ。
ラ・リーガでは先発5試合、総出場時間587分に留まった。また、CLではグループステージの3試合のみ出場、そのうち先発は1試合のみであり、その試合もすでにグループステージ突破を決め、消化試合となっていたウニオン・ベルリン戦だった。
このシーズンはベリンガムという怪物の加入、ヴィニシウスの圧倒的な突破力、トニ・クロースの圧巻のパフォーマンスもあり、チームとしてはラ・リーガ、CLの2冠を達成し、大きな成功を収めていたが、セバージョス個人としは重要な試合にほとんど絡めずにシーズンを終えてしまったのだ。

徐々に存在感を高めている今季

今季に入り、チームとしてマドリーが変わった点は大きく2つだと言えるだろう。
1つはエムバペの加入である。これまで絶対的な左ウィングとして君臨していたヴィニシウスの位置を最も得意とするエムバペの加入は、一見最後のピースが揃ったかのように見えたが、結果としてチームのバランスを大きく崩すことになった。
もう一つの変化はトニ・クロースの引退である。昨シーズン特に目覚ましい活躍を見せていたクロースは、マドリーの安定した前身と再現性の高いゴールへのアタック、圧倒的なネガティブトランジションを支える存在だった。しかし、彼の引退は想像以上に大きいものだった。

上記2つの変化により、マドリーは序盤戦大きく苦戦した。UEFAスーパーカップのアタランタ戦ではベリンガムとエムバペの活躍により、マドリーの新たな黄金時代を予感させたが、その後開幕したラ・リーガでは初戦マジョルカ戦を1-1のドローに持ち込まれると、その後も勝ち点を落としていった。新たにフリックが就任したバルセロナの好調とも比較され、今シーズンは完全に弱いマドリーの烙印を押されてしまっているように思えた。

しかし、アンチェロッティらスタッフの細やかな調整と序盤絶不調だったエムバペの復活により、チームは徐々にマドリーらしい強さを取り戻していった。結果的にラ・リーガ前半戦を折り返す頃には、序盤好調だったバルセロナの大失速もあり、首位で折り返すことができている。

アンチェロッティが今シーズンのチームのバランスを見つけるのに一役買ったのが、セバージョスであろう。
最終ラインからボールを受け、ボールを運びながら複数の選択肢を見せることによって相手のプレッシャーラインを徐々に押し下げ、背後へのスルーパスやライン間への縦パスでチャンスを創り出しているのだ。
ラ・リーガでは23節終了時点で10試合に先発、818分のプレータイムとなっている。また、CLでは、8試合中2試合に先発、プレータイムも217分と昨シーズンまでと比較すると順調にプレータイムを伸ばしている。
直近の試合では90%を超えるパス成功率を記録しており、今シーズンのチームにかけていた安定した前進を支えている。

絶対的な存在となれるか



昨シーズンまでと違い、多くの試合に出場しているセバージョスだが、まだチームの中で絶対的な地位を確立したとは言い難い。CLやクラシコ、マドリードダービーではチームを勝利に導くような活躍をできていないためだ。
2月12日(水)に行われるマンチェスター・シティとのCL決勝トーナメントプレーオフは、セバージョスがマドリーで絶対的な存在となるための試金石となるだろう。他の多くの試合と違い、ボールを持たれる展開が続く際には、セバージョスでの守備での貢献度が間違いなく必要になるだろうし、ボールを保持した際にはシティのプレスを回避して強力な前線の選手たちにボールを供給する重要な役割を果たしてくれるだろう。


マドリーで活躍するために努力を続け、試合に出られなくても、怪我で離脱をしてもチームのために闘ってきたセバージョスが、今季大きく飛躍することを願っている。

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