着物初心者と警察
私は着物初心者である。
その初心者具合はかなりのもので、着物警察が白目剥いて髪を掻き毟って発狂するくらいの初心者である。
どのくらい初心者かと言うと、着物に単衣と袷というものが存在しているということを三か月前まで知らなかった程の初心者である。
もちろん、浴衣と夏着物の違いも知らなかった。とはいえ今も素材とかなんかこう見た感じでの違いじゃろ? という程度しかわからない。
しかし、八月だったか夏着物を着ていたらビール売りのお姉ちゃんに「浴衣良いですね」と言われたので、世の中の多くの人が着物と浴衣の違いなんてわからないものなのではないかと思う。
そして現在涼しい十月、着物は裏地のない単衣から裏地の付いた袷を着る季節となったらしい。
袷とは初心者の私からしたらまさにザ着物という着物だ。
単衣の着物は透ける事さえ気を付ければ、初心者でも浴衣のふりをして神社のお祭りにまぎれて着られるものであったが、袷の着物は違う。
それはもう紛うかたなき着物なのである。
しかも十月になるとお祭りも少なくなるので、街中で浴衣あるいは夏着物を着ている人も少なくなる。
その中で着物を着るのは初心者には勇気がいる。
例えていうのなら、ちょっとしたコスプレをしているような感じだ。
いや、着物とコスプレは全く違うのだが、普段と違う服を着ているという点で、初心者にとって着物を着る勇気は街中でコスプレをする勇気と同等かそれより少し低い程度なのである。
しかも、コスプレには警察はいないが、着物には警察がいる。
やっかいすぎる。
幸い私はまだ着物警察に会ったことはないが、そいつらは古今東西どこにでも現れ、じぶんがかんがえたさいきょうきものマナーを押し付けるのだという。
その凶悪さについてはまだ出会ったこともない人ですら他人の経験を聞いただけで、ハンケチを噛んで腹立たしさに涙してしまうくらいであるものだと聞いている。
TPOさえわきまえていれば着物だって洋服と同様好きに着て良いはずである。
取り敢えず当分は着付けの練習をして、着物をコスプレと思わなくなるまで着慣れたいものである。
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