
「人からどう思われるか」をなぜ気にしてしまうのか
遠い昔、自然環境や他生物による危険が、現代よりもはるかに多かった原始時代において、「群れにとって必要な存在であること」は、生死にかかわる重要な問題でした。なぜなら、群れの中で悪い噂が立ったり、「あいつは必要ない」と判断されると、食料を分けてもらえなかったり、最悪の場合群れから追い出されることに繋がるからです。一説によると、そうした時代が何万年も続いた結果、人類の脳には「集団(群れ)の中で必要とされる存在でなければならない」「他の個体より優れていると、周囲に認められなければならない」といった本能がインプットされたといいます。つまり、「他者からどう思われるのか気にしてしまう」ことは、生物としてのある種の生存本能なのです。
例えば「家族」も集団(群れ)の最小単位です。当然、幼い個体は群れを追い出されると一人では生きていけません。なので、親からどう思われるかは、幼い子供にとっては最重要問題です。だから褒められようと頑張ったり、認められようと躍起になったりするのです。さらに、友人関係、学校、会社でも、同じ本能は働きます。また、SNSの発達した現代においては、直接関わることがない不特定多数の他者に対しても、その集団(群れ/コミュニティ)から追い出されることへの恐怖を感じることもあります。
では、「生物としての本能であるならば、仕方のないことなのか? 他者からどう思われるのかを気にせずにはいられないのか?」となると、「気にしてしまうのは仕方ないとしても、気にする必要はない」とは言えるかもしれません。なぜかと言うと、群れを追い出されれば生きていけなかった原始時代と違い、現代では、一つのコミュニティが自分に合わなかったとしても、無限にある他のコミュニティから、自分に合ったコミュニティを探すことができるからです。人はつい、「自分の居場所はここしかない」と思い込みがちですが、自分が所属する集団を自分で選べる今の時代に、一つのコミュニティに固執する必要はないのです。世界中の誰とでも繋がれるようになった現在、「人からどう思われるか」を気にしすぎるよりも、本能を克服して、自分らしく居られる群れを見つけてみてはいかがでしょうか?