花形ビジネス(金融・コンサル・商社)と、雇用の大きいビジネス(自動車など)

一流大学の東大京大一橋大早慶などの学生にとっては、花形となる就職先は金融専門職(投資銀行など)、コンサル、総合商社などだ。メーカーも、ファブレスのキーエンスだ。これらの年収は軽く1000万円を超える。

しかし、多くの雇用を生み出すビジネスは花形とは違う。トヨタ自動車、三菱重工業・三菱電機や東芝などの重電(要するに巨大メーカー)、東電などのインフラ、イオン(小売)やホテル(観光)などのサービス業だ。そして、日本は中小零細企業が雇用の70パーセントほどを占めている。

例外は、IT業界かもしれない。雇用が大きい上に、年収も比較的高い。これは、付加価値の多くがエンジニアのスキルにより生み出されるため、エンジニアの年収を高める必要があるからだ。

花形ビジネスは年収は高いが、少ししか雇用を生み出さない。メーカーは、高卒・高専卒も含めて、かなり多くの雇用を生み出せる。

問題は、雇用を多く生み出せるメーカーや小売などの付加価値を、どうやってより高めることができるか、だろう。一つの選択肢は、ITによる効率性改善と、ビジネスモデルの変化だ。例えば、今まではメーカーの営業は長年の勘でやっていたのを、SFAなどでデータ化する。また、リカーリングビジネスや、より上流のファブレスやIP販売に力を入れる、などだ。だが、それをやってしまうと、今度は雇用のほうが減少する。労働生産性とは、少ない雇用で高い付加価値を生み出すことだからだ。

では、雇用を減らさずに生産性を高めることは不可能なのかといえば、そうではない。生産性には、資本生産性というものもある。少ない資本でより付加価値を生み出すことだ。しかし、この方針をとる場合は、人件費の安い場所へ移転するとか、儲からない事業には設備投資しない、となる場合もあり、結局は雇用も減少することが多い。

雇用の大きいビジネスの付加価値や生産性を高めることは、非常に難しいことがわかるだろう。

一つの選択肢は、ジョブ型雇用で、トップレベルの人材は高年収で雇うことかもしれない。トヨタ自動車などのメーカーは、トップレベルの理系研究者であっても、年収が低い場合が多い。日亜化学の中村修二氏は、ノーベル賞をとるほどの天才なのに、年収は低かったといわれている。これをやっている限り、韓国や台湾に製造業が負けるのは仕方がないかもしれない。世界中から天才を集めて、日本の製造業を復活させなくてはならない。もう、半導体の敗北を自動車などで繰り返せば、取り返しはつかない。

製造業はトップクラスの研究者の採用で研究開発のレベルが上がるが、小売や観光などのサービスは、どうにもならないかもしれない。天才がいれば付加価値が上がるようなビジネスではないからだ。もちろん、星野リゾートやAPAなど、経営者の才覚で成長したホテルはあるし、ユニクロも世界的な企業になった。だが、サービス業は、どうしても付加価値を高めづらい。一つの選択肢は、高級ホテルや、高級アパレルブランドだろう。日本には、フランスやイタリアほど、高級ブランドが無い。まあ、高級ブランドは歴史も重要なファクターなので、日本が追いつくことは難しいかもしれない。ただ、レストランは、ミシュランの星が世界一多い都市は東京であり、不可能でもないかもしれない。

東大京大一橋大、早慶上位など、日本の全人口の2パーセントくらいだろう。この程度の人間が幸せになる社会ではなく、高卒も含めた国民の大半が幸せになれる社会でないと、社会の分断は大きくなるだけだ。アメリカやフランスなどでは、かなり深刻化している。日本もそうならないとはいえないだろう。


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