ドイツ経済が大ピンチの件

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の工場閉鎖計画を巡り、ドイツ最大の産業別労組のIGメタルは5日、経営側との4回目の労使交渉が予定される9日に、国内工場のほぼ全てに当たる9工場で時限ストライキを再び実施する計画を発表した。ストによって経営側に圧力をかけ、譲歩を迫る狙いとみられる。

VWはこれまで、国内で少なくとも3工場の閉鎖や数万人規模の人員削減を労組に提示。労組はボーナスの支給停止など人件費抑制の妥協案を示して撤回を迫ったが、経営側は拒否し、労使間の隔たりが目立っている。

産経新聞

フォルクスワーゲンは、EVで中国系企業との競争激化などの要因が重なり、経営危機に陥っている。ドイツ国内でも、ロシアのウクライナ侵攻後はエネルギーコストが高くなり、ドイツ国内の工場を閉鎖せざるをえないことになった。これに労組は反発しており、労使の全面対決となっている。

フォルクスワーゲンだけではない。自動車部品などのボッシュも、人員削減を計画している。

売上高で世界最大の自動車部品メーカー、ロバート・ボッシュは、ドイツを中心に全世界で5500人分の雇用を削減する計画だ。自動車業界の不況がサプライチェーンにも波及しつつある。

ドイツの金属産業労組(IGメタル)の発表文によると、ボッシュは自動運転やステアリング製品に関連するドイツの役職を減らす。同社広報は、ドイツの3800人を含め全世界で5500人分の削減を目指していると確認した。

ボッシュは発表文で、「自動車業界は大幅な過剰生産能力に苦しんでいる」と説明。実際に削減する人数は労働者代表との交渉で決定されるとし、「競争と価格圧力は激化する一方だ」と続けた。

  同社の製品は全世界で走行する合計15億台のほぼ全てに使用されている。新技術に大規模な投資を行ってきたが、新車需要の低迷で打撃を受けている。欧州の自動車生産は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前のピークである年約1600万台を回復していない。

ブルームバーグ

ドイツ経済は、輸出、特に「自動車と自動車部品」に依存する傾向がある。そのため、中国系EVとの熾烈な競争で自動車が打撃を受けると、ドイツ経済全体までもがダメージを受けることになる。ヨーロッパ最大の経済大国であり、製造業大国であるドイツの苦境は、周辺諸国にも負の影響を与える。なぜならば、EUの周辺国では、ドイツへの出稼ぎ労働者が多いからだ。特に東欧から多くの人がドイツへ働きに出ている。人員削減となれば、ドイツ国民よりも出稼ぎ労働者が切られる可能性は高い。

ドイツは、中国と並んで、グローバル経済の優等生だった。しかし、その中国が内需縮小(バブル崩壊)でEVや太陽光パネル、金属製品などあらゆるものを安値で輸出攻勢をかけることで景気回復をはかろうとするなか、同じく輸出に強いドイツは苦境にあえぐことになった。アメリカは、トランプ氏が来年にも関税を引き上げるかもしれず、そうなるとまさに泣きっ面に蜂である。

ドイツ経済は、以下に依存する形で成長してきた。
・ロシアからの天然ガス
・中国への輸出
・周辺国(特に東欧)からの安い労働力

このうち、上2つがもう駄目になりつつあるので、不況なのだ。さらには、トランプ関税を見越して、ドイツからアメリカへの資本流出まで起きている模様だ。

  ドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータによると、化学品メーカーのBASFや自動車部品のZFフリードリヒスハーフェン、家電のミーレなどの企業が国外に資源を移し、2010年以降の純資本流出額は6500億ユーロ(約107兆円)を超える。しかも、この約4割は、ショルツ首相率いる連立政権が発足した21年以降に発生した。

  米大統領選挙でトランプ前大統領が歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかる。これが資本流出を加速させる恐れもあるだろう。選択肢に乏しく次期総選挙の予定まで1年を切っていた中、経済再生を巡る論争がもとでショルツ首相はリントナー財務相を更迭。ドイツは05年以来の早期総選挙に向かう見通しとなった。

ブルームバーグ

ドイツ経済、オワコンかな。。。一応、対応策としては、以下を提案したい。

1 原子力発電所の再稼働によるエネルギーコスト低減
2 財政出動による内需拡大
3 自動車以外の新産業の創出

しかし、1については、再稼働できる原発がどれほどあるのか不明だ。原発は安全性が重要なので、すぐに稼働できるシロモノではない。2についても、長年輸出主導の経済成長をしてきたドイツは、供給能力が過剰になっている可能性が高く、財政出動をしても景気回復の効果は限定的かもしれない。3は時間のかかる政策だ。すぐに効果が出るものではない。

よって、しばらく、ドイツ経済の停滞は続きそうなのだ。イギリスとフランスも政治的には不安定であり、ヨーロッパの政治・経済は試練の時を迎えている。

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