フォルクスワーゲン経営危機の真相
フォルクスワーゲンは、過去にはトヨタ自動車と自動車世界販売1位を争うほど、強力な自動車メーカーだった。しかし、フォルクスワーゲンは、ドイツ国内の工場を閉鎖するリストラ計画を発表した。労組は猛反発しており、非常に厳しい状況に立たされている。この要因を分析したい。
ディーゼル廃ガス不正
フォルクスワーゲンは、ディーゼル廃ガスのデータを改ざんする不正を行っていた。このため、ディーゼルへの不信感がヨーロッパで広がった。無理にでも、EVへシフトチェンジしなくてはならない雰囲気がヨーロッパに訪れた。また、廃ガス不正で、フォルクスワーゲンのブランドは毀損された。
電気自動車での誤算
想定ほどには電気自動車(EV)は普及しなかった。急速充電設備がないと、EVは長時間充電したり、航続距離に課題が出てしまう。ガソリンなら数分で満タンだが、EV充電は時間がかかる。また、テスラやBYDなど、新興勢力があまりにも急スピードで成長したのも誤算だった。
全方位戦略のトヨタ勝利
トヨタは、EV一点張りではなく、HV、PHEV、FCV(燃料電池車)など、全方位で戦う戦略をとった。このため、どれかが失敗しても、総崩れは防げる。一方で、廃ガス不正で経営が傾いたフォルクスワーゲンには、全方位戦略は不可能だった。長期的な計画や研究開発も、トヨタに敗北した。
フォルクスワーゲンはオワコンか?
ドイツ国内のリストラという意味は大きい。フォルクスワーゲンのお膝元であり、そこに手をつけるというのは、もはや手段を選ばないところまで追い詰められていることを意味する。しかも、ドイツ企業は中国市場に深入りしすぎた。トヨタは中国よりも北米重視だったことが幸いした。今、中国では安いEVが大量に普及している。また、不動産バブル崩壊不況もあるため、中国依存度の高い自動車メーカーほど苦戦している。フォルクスワーゲンはオワコンかもしれない。トヨタの軍門に入るか、ルノー・日産のアライアンスに入るなどの選択肢がある。ただし、日産も経営危機であり、ルノー・日産にその余裕は無さそうだ。トヨタの軍門にくだるという屈辱をなめる以外に、切れるカードは無いかもしれない。トヨタとしても、ヨーロッパに弱い唯一の課題をクリアできるため、悪い話ではなさそうだ。