小説:もし、おばあちゃん桜子の駄菓子屋と超有能信金マンがタッグを組んだら

桜子は、65歳を迎えたばかりだ。東京都大田区蒲田で、長年、駄菓子屋「桜駄菓子店」を営んできた。夫に先立たれた悲しみがあり、経営のやる気は落ちっぱなしだ。地元の子供たちから愛されてきた店だが、今や少子化のせいで子供たちの来店もすっかり少なくなっていた。売上高はどんどん落ちて、今では赤黒とんとんの月が多い。

「あたしも頑張ってきたけど、もう終わりかしらね・・・悲しいわ」

元来、明るい性格だった桜子だが、このように弱音をはくことも多くなった。夫に先立たれてからは、一人で酒も飲むようになり、人付き合いも悪くなった。

そんなある日、城南信用金庫の営業の野下という30代後半の男性がやってきた。

「桜子さん、元気にやってる?」

「いいえ、もう、仕事のやる気もなくて、あたし、店をたたもうかと思っているよ」

「桜子さん、私に任せてくれませんか?上司から、蒲田の街の活性化のために、零細企業の売上高アップをサポートしろって言われててさ。せっかく、桜子さん、長年お店をやってきたんだから、二人三脚でお店を立て直そうよ!僕、経営再建の企画書もつくるからさ」

「そんなこと言ったって・・・あたし、もう年だし、お客さんの子供たちも少なくなってきたし、そろそろ潮時かなと思ってるのよ」

「まあまあ、任せてよ。こんな立て直し案を考えてみたんだ」

野下は、企画書の草案を見せてくれた。そこには、Instagram映えや、Facebookを活用したマーケティング戦略、中高年が懐かしさから来店する戦略、訪日観光客の物珍しさを活かした戦略などが書いてあった。

桜子は、しばし、黙って、やっと口を開いた。

「・・・あたしには、無理だよ、野下さん。あたし、パソコンもスマホも持っていないんだよ。赤黒とんとんだから、買うお金もないわ。それに、もうこの年だから、その、SNS?とか、英語で訪日観光客を呼び寄せる?とか、あたしには無理だよ」

「桜子さん、諦めないで!実は、僕の死んだ親父が、桜子さんの店の常連だったんだよ。覚えてる?父の名前はケンジなんだけど・・・」

「あ、ああ・・・あのケンちゃん・・・ケンちゃんも亡くなったのかい・・・あたしより若いのに・・・なんてことよ・・・悲しいわ・・・」

「あ・・・ごめんね・・・桜子さん。そんなつもりじゃなかったんだけど・・・でも、僕の父も好きだったこのお店があまり経営が良くないと支店で聞いてさ、僕が立て直しを考えますって、もうアピールしてあるから。ね、何とか手を貸してくれないかい?桜子さんと二人三脚で、何とか頑張るからさ!」

「・・・そこまで言ってくれたら・・・考えるわ。でも、あたし、パソコンもスマホもできないのよ。持っていないし」

「そこは、当金庫にお任せください。破格の低利で、パソコンもスマホも、SNSマーケティングのコンサルタントもやらせていただきます。英語のレッスンも、蒲田の当金庫の取引先とマッチングさせていただきます」

「ええ・・・借金かえ・・・借金はしたくないの・・・でも、城南信用金庫さんも、ボランティアじゃないからねえ」

「任せてください。本当に、無理のないようなスケジュールにします」

「そうはいっても、あたし、もう65歳なのよ。あたしも先は長くないわ。城南信用金庫さんが、貸しっぱなしで終わりにならなきゃいいけど・・・」

「そこのリスクも織り込んでいます。ご心配ならないでください。私共は、地域の再生のために、誠心誠意、頑張ります。利益だけを考えているわけではありません」

「わかったよ、野下さん、任せます」

桜子は、城南信用金庫から、200万円の融資をしてもらった。そして、短期・中期・長期の戦略を野下と一緒に考えた。

短期戦略(今すぐ)
商品の入れ替えがなく、不人気商品もそのまま在庫されている。不人気商品は無料でプレゼントするなどして棚の場所を空けるとともに、人気商品を調査し、仕入れることで顧客に「変わったな」と思わせる。また、POPを作成するなどして、人気商品を目立たせる。昔、子供時代に常連客だった人で、連絡先を知っている人に、手紙を書く。一人一人に、心を込めた文章を書く。「あの頃のように遊びにおいで」と書く。「買ってくれ」とは書かない。

中期戦略(1年以内)
パソコンとスマホを購入し、InstagramやFacebook、YouTubeのマーケティングを勉強し、作戦を実行する。Facebookには、地域を絞った広告出稿もできるため、蒲田に絞って広告出稿する。恥ずかしさを克服して、InstagramやYouTubeに出演する。一つ一つの商品の味や、昔の子供たちとの温かいエピソードを語る。

長期戦略(3年以内)
英語とWEB制作を勉強して、外国人観光客にもアピールする。商売が繁盛すると、地域のコミュニティ新聞などからも注目され、より設備投資が可能となる。蒲田だけでなく、京急線沿線や、東急池上線沿線にもFacebookの広告出稿を行う。

「野下さん・・・あんた、ずいぶんと商売に詳しいのね」

「実は・・・親父も、小さな商店を経営していたんです。それで、僕も商売を勉強したくて、明治大学の商学部で勉強しました。中小企業診断士の資格も持っています」

「ええ、明治大学!そんないい大学出てたのかい・・・あんたみたいな賢い人にサポートしてもらえて、あたし、うれしいよ」

「ありがとうございます。とにかく、一緒に頑張りましょう!」

桜子と野下のタッグが始まった。野下はさっそく店舗の現状を詳細に調べ、改善ポイントをリストアップした。

「桜子さん、お店に清潔感がないと、なかなかお客様は来店してくれません。私も手伝うので、一緒に掃除しましょう」

「野下さん、そんなこと、頼んでもいいのかい?」

「ええ、そこまでやるのが、私のモットーなんです」

桜子と野下は、一生懸命掃除にとりかかった。雑巾できれいに棚をふいて、ホコリを落とした。何やら、桜子が若い男性と店を掃除しているのを見て、昔の客も気になって話しかけてくれた。

「おお、桜子ちゃん、お店のリニューアルかい?最近はお酒ばっかり飲んでるって聞いて、心配してたんだよ」

「ああ、俊哉くん、良かったら、久しぶりにお菓子食べていかないかい?」

「うん、久しぶりに買おうかな?この、飴と、せんべいをもらえる?」

「ありがとうね。また来てね」

「・・・早速、効果がありましたね」

「うん、うれしいよ」

さらに、不人気商品を子供たちにプレゼントするなどして、売れ筋商品の在庫を多くして、POPで目立たせるなどした。女子高生の彩夏にアルバイトで来てもらって、かわいらしいPOPを作成してもらった。

「彩夏ちゃん、ありがとうね。おばあちゃんの私には、こういうの無理だから」

「ううん、桜子さんのお店が繁盛したら、私も嬉しいよ!」

照明も取り換えて、店を明るくして、夕方ごろまで開店できるようにした。客が休みながら食べられるように、椅子を用意して休憩スペースも設けた。もちろん、消費税を間違えないように注意した(店で食べる場合は消費税は10%となる)。

こうして、短期の戦略は実行した。それだけでも、赤黒とんとんから、利益が出るようになった。昔の馴染み客に手紙を書いたおかげで、懐かしさからお菓子をたくさんの人が買いにきてくれた。

「桜子さん、久しぶり!」

「みんな、立派になったわねえ」

顧客の子供の頃の思い出話が飛び交い、桜子は懐かしい笑顔を取り戻していった。そして、店には活気が戻っていた。野下との改革前は、店は暗い雰囲気で、桜子もやる気の無さが出てしまっていて、客は入店しづらかった。今は、まったく雰囲気が変わっていた。

そして、中期の戦略実行にシフトした。野下は桜子にSNSの基礎を教え、Instagramに投稿する方法や、写真の撮り方、簡単なコメントの書き方を伝授した。カメラも、安いカメラではなく、Canonのそれなりに高いカメラを購入した。最初は、桜子はパソコンのキーボードをタッチするのも苦労していた。しかし、少しずつキーボードの配置を覚えて、文字を入力できるようになった。カメラも、撮影の仕方を、地元の写真屋に協力してもらって教わった。

「あたし、こんな高いカメラは初めてだよ・・・SNSって、炎上することもあるっていうけど、大丈夫かしら」

「桜子さん、大丈夫です。炎上は、人を怒らせたり、心を傷つけるようなことを投稿しなければめったに起こりません」

「そうかい、安心したよ」

桜子が最初に投稿したのは、駄菓子屋のカラフルなキャンディーや昔からの定番のおもちゃの写真だ。キャプションには、昔からの常連客に向けた温かいメッセージが添えられていた。

「久しぶりに駄菓子屋『桜駄菓子店』を覗いてみてはいかがですか?お店もリニューアルしたので、懐かしいお菓子とともに、皆さんの笑顔をお待ちしています」

この投稿は、地域の住民たちの心を動かし、かつての子供たちやその家族が次々と店を訪れるようになった。

しかし、野下はまだ満足していなかった。

「桜子さん、これからは外国人観光客にもアピールしましょう。蒲田は空港に近いし、観光客が増えている。特に駄菓子のような日本の伝統文化は彼らにとって新鮮です。お店の紹介を英語でも発信して、観光地としての魅力を高めましょう。」

「英語ねえ・・・あたし、できるかしら?」

「大丈夫ですよ。少しずつやっていきましょう。まずは簡単なフレーズを覚えるところから始めて、観光客とコミュニケーションできるようになれば、それだけでも十分です」

桜子は、不安はありながらも、英語の勉強を始めると決心した。蒲田にある個人の低料金の英会話スクールに通うことにした。少しずつではあるが、野下の助けも借りながら英語のフレーズを覚え、通りかかる観光客に"Hello!" "Thank you for coming!"と笑顔で声をかけるようになっていった。

"Wao, I've never seen these sweets before! Grandma, can I take a picture?"
"Yes, OK! And, please upload that picutures on SNS!"

桜子は、野下の助けなしでも、観光客と会話できるまでになっていた。

店がSNSでの話題となり、口コミで広がる中、ついに地元の新聞が桜駄菓子店を取り上げることになった。桜子と野下の努力が実を結び、店は再び活気に満ちた場所となり、次第にメディアの注目も集まっていった。観光客はもちろん、地元の人々も「懐かしい日本の風景」として、桜子の駄菓子屋を訪れるようになった。さらに、地元の小学校と協力して、子供たちが職場体験として、桜子の店で仕事を手伝うことも取り入れられた。昔からの馴染みの中高年だけでなく、子供たちの間でも大人気の店となった。

そしてついに、テレビ東京のワールドビジネスサテライト(WBS)でも取り上げられた。

「大江麻理子です。東京都大田区に来ています。今日は、英語やSNSなどリスキリングに成功して、城南信用金庫とタッグを組んで、年商1200万円の大繁盛の駄菓子屋を経営されている桜子さんに会いにいきます」

「桜子さん、リスキリングに取り組まれるのは、勇気のいることだったのではないですか?」

「はい、あたし、その時もう、65歳だったので、まさか、自分がSNSやYouTubeをできるようになるとは思っていませんでした」

「城南信用金庫の野下さんも、強力にサポートされたと伺っています」

「はい・・・あたしの息子くらいの若い人に助けてもらって・・・感謝しています。野下さんがいなければ、お店の繁盛はなかったです」

こうして、いまや、桜子は時の人となっていた。だが一方で、体力的な衰えも感じていた。桜子は、いつものように野下と話しているとき、思い切って切り出した。

「野下さん・・・あたしは、子供がいないんだけど、あなたのことは実の息子のように思っているのよ。信用金庫の仕事があると思うけど・・・もしよかったら、あたしの店を継いではくれないかい?」

「・・・桜子さん、ありがたいお話です。しかし、信用金庫を辞めるわけにはいきません。株式会社化して、私を出向という形で、役員にしていただけますか?信用金庫にも相談してみます。私が役員を務めているうちに、なんとか後継者を探してみます」

「・・・ありがとうね。ここまで頑張ったから、あたしの代で終わらせたくないのよ」

こうして、桜子は社長となり、野下は副社長としての経営体制が固まった。野下は、地元蒲田を中心に、桜子の店を買い取ってくれる人がいないか探していた。そんな時だった。大手スーパーから、メールが届いていた。

「桜子さん、メールが届いています」

「なんだろうねえ、読んでみようか」

「拝啓 桜子様 貴殿の店をさらに発展させるため、3000万円で買収したく存じます。社長には、弊社の有能な人材を送り込むことが可能です。ぜひ、前向きにご検討ください」

「・・・ちょうど、後継者を探していたけど・・・でもねえ。大手スーパーだと、うちの地元密着の良さがなくなってしまうねえ」

「・・・私もそう思います。一応は話を聞いてみますか?」

「・・・そうだねえ」

桜子と野下は、大手スーパー幹部との商談に臨んだ。

「前向きに考えていただけたようで、非常にうれしく思っています。桜子さん」

「・・・いえ、まずは話を聞こうということで。買収後、どのような店にされるおつもりですか?」

「当社は、最先端のAIを活用しております。当社のAIを使って、まさに未来の駄菓子屋として、高収益のビジネスモデルにしたいと考えております」

「・・・あたしは、SNSや英語を頑張ってきたけど、人の温かさ、これが無くなった店なんて、まっぴらごめんだよ!」

「では、5000万円ではいかがでしょうか」

「金額の問題じゃないんです。すみません、この話はなかったことに」

結局、桜子は、社長としてこの話を断ることにした。

「・・・桜子さん、良かったんですか?」

「ええ、AIに商売を任せるなんて、あたしゃ反対だよ」

結局、店を買い取ってくれる人は現れず、いったんは大田区の公務員が官民連携の一環として、店の経営に関わることになった。桜子は社長を辞任したが、相談役として店の経営にはとどまった。野下は信用金庫に戻っていた。

「野下さん・・・ありがとうね。本当に。あたしの人生の最後、ものすごく充実することができたよ。大好きな街、蒲田に、この店を残すことができて、あたしは幸せだ」

(完)

English

Sakurako has just turned 65. She has run a candy store called "Sakura Dagashiten" in Kamata, Ota Ward, Tokyo, for many years. She is saddened by the loss of her husband and has lost all motivation to run the store. The store was loved by local children, but due to the declining birthrate, the number of children visiting the store has decreased significantly. Sales have been steadily declining, and now there are many months with red and black evenly lit.

"I've been trying my best, but I wonder if it's all over now... I'm sad."

Although Sakurako was originally a cheerful person, she has often complained like this. Since her husband died, she has started drinking alone and has become less sociable.

One day, a man in his late 30s named Noshita, a salesman at Jonan Shinkin Bank, comes to her.

"Sakurako, how are you doing?"

"No, I don't have any motivation to work anymore, so I'm thinking about closing the store."

"Sakurako, can you leave it to me? My boss told me to support small businesses in increasing their sales in order to revitalize the town of Kamata. You've been running the store for so many years, Sakurako, so let's work together to turn it around! I'll even write a business restructuring plan."

"Even if you say that... I'm getting older, and there aren't many children among my customers, so I think it's about time to move on."

"Well, well, leave it to me. I've come up with this plan to turn it around."

Noshita showed me a draft of the plan. It included a strategy to make the store Instagram-worthy, a marketing strategy using Facebook, a strategy to attract middle-aged and elderly customers out of nostalgia, and a strategy to take advantage of the novelty of tourists visiting Japan.

Sakurako was silent for a while, and then finally spoke.

"...I can't do it, Noshita-san. I don't have a computer or a smartphone. I don't have money to buy them because I'm all red and black. And I'm getting old, so, you know, SNS? Attracting tourists to Japan in English? I can't do that."

"Sakurako-san, don't give up! Actually, my late father was a regular at your store. Do you remember? My father's name was Kenji..."

"Oh, yeah... That Ken-chan... Ken-chan passed away too... He was younger than me... What a shame... I'm so sad..."

"Oh... I'm sorry... Sakurako-san. I didn't mean to... But I heard from the branch that this store, which my father also liked, wasn't doing well, so I've already made it known that I'll think about turning it around. Hey, can you help me somehow? I'll do my best, together with you, Sakurako-san!"

"...If you say that much... I'll think about it. But, And I can't use a computer or a smartphone. I don't have one."

"Leave that to us. We will provide computer, smartphone, and SNS marketing consulting services at an exceptionally low interest rate. We will also match you with our bank's clients in Kamata for English lessons."

"Yes... I don't want to borrow money... But Jonan Shinkin Bank isn't a volunteer."

"Leave it to us. We'll make it a schedule that's really not too difficult."

"That being said, I'm already 65 years old. I don't have much time left. I hope Jonan Shinkin Bank doesn't just lend me money and end up..."

"We've factored in that risk. Don't worry. We'll do our best to revitalize the region. We're not just thinking about profit."

"Okay, Noshita-san, I'll leave it to you."

Sakurako received a loan of 2 million yen from Jonan Shinkin Bank. Then, she and Noshita came up with a short-term, medium-term, and long-term strategy.

Short-term strategy (immediately) There is no replacement of products, and unpopular products remain in stock. Free up shelf space by giving away unpopular products for free, and research and purchase popular products to make customers think that something has changed. Also, make popular products stand out by creating POPs, etc. Write letters to people who were regular customers when they were children and whose contact information you know. Write heartfelt messages to each person. Write, "Come visit us like you did back then." Do not write, "Please buy from us."

Medium-term strategy (within one year) Purchase a computer and smartphone, study Instagram, Facebook, and YouTube marketing, and execute a strategy. Since Facebook also allows you to place ads for specific areas, place ads in Kamata only. Overcome your shyness and appear on Instagram and YouTube. Talk about the taste of each product and warm stories with your children from long ago.

Long-term strategy (within three years) Study English and web development to appeal to foreign tourists. If business flourishes, you will attract attention from the local community newspaper and more capital investment will be possible. Facebook ads will be placed not only in Kamata, but also along the Keikyu Line and the Tokyu Ikegami Line.

"Noshita-san... you know a lot about business."

"Actually... my father also ran a small store. So I wanted to study business too, so I studied at Meiji University's School of Commerce. I'm also qualified as a small business consultant."

"Oh, Meiji University! You went to such a good university... I'm happy to have a smart person like you supporting me."

"Thank you. Anyway, let's do our best together!"

Sakurako and Noshita have begun their team. Noshita immediately conducted a detailed investigation of the store's current situation and made a list of areas for improvement.

"Sakurako, if the store isn't clean, customers won't come. I'll help you, so let's clean together."

"Noshita, is it okay to ask you to do something like that?"

"Yes, it's my motto to do that much."

Sakurako and Noshita got to work cleaning hard. They wiped the shelves clean with a rag and removed the dust. Somehow, an old customer who saw Sakurako cleaning the store with a young man became curious and started talking to her.

"Oh, Sakurako-chan, are you renovating your shop? I heard you've been drinking a lot lately, so I was worried."

"Oh, Toshiya-kun, if you don't mind, would you like to come and have some sweets for the first time in a while?"

"Yeah, I think I'll buy some for the first time in a while. Can I have this candy and some rice crackers?"

"Thanks. Come again."

"...It worked right away."

"Yeah, I'm happy."

Furthermore, they gave away unpopular items to children, increased the stock of popular items, and made them stand out with POP. They hired high school girl Ayaka to work part-time and created cute POP.

"Thanks Ayaka-chan. I'm an old lady, so I can't do these things."

"No, I'll be happy if Sakurako-san's shop prospers!"

They replaced the lighting, brightened the shop, and made it possible to open until around evening. They also prepared chairs and created a rest area so that customers could take a break while eating. Of course, she was careful not to get the consumption tax wrong (if you eat at the restaurant, the consumption tax is 10%).

Thus, the short-term strategy was implemented. With that alone, Akakuro Tonton started to make a profit. Thanks to writing letters to old regular customers, many people came to buy sweets out of nostalgia.

"It's been a while, Sakurako!"

"Everyone has grown up so well." Sakurako's nostalgic smile returned as customers reminisced about their childhood. And the store was lively again. Before the reforms with Noshita, the store had a gloomy atmosphere, and Sakurako also seemed unmotivated, so customers were reluctant to enter the store. Now, the atmosphere has completely changed.

Then, the shift was made to the implementation of the medium-term strategy. Noshita taught Sakurako the basics of social media, teaching her how to post on Instagram, how to take photos, and how to write simple comments. She also bought a fairly expensive Canon camera instead of a cheap one. At first, Sakurako had trouble even typing on a computer keyboard. However, little by little, she learned the layout of the keyboard and was able to type. She also learned how to take pictures with a camera, with the help of a local photo shop.

"This is the first time I've ever used such an expensive camera... They say that social media can sometimes cause a firestorm, but I wonder if it's okay?"

"Sakurako, it's okay. Firestorms rarely happen if you don't post anything that will upset or hurt people's feelings."

"Is that so? That's a relief."

Sakurako's first post was a photo of colorful candy and classic toys from a candy store. The caption included a warm message for the long-time regular customers.

"Why don't you take a look at the candy store 'Sakura Dagashiten' for the first time in a while? The store has been renovated, so we look forward to seeing your smiles along with some nostalgic sweets."

This post touched the hearts of the local residents, and former children and their families began to visit the store one after another.

But Noshita was not yet satisfied.

"Sakurako, let's appeal to foreign tourists from now on. Kamata is close to the airport, and the number of tourists is increasing. In particular, traditional Japanese culture such as dagashi is fresh to them. Let's introduce our shop in English and increase its appeal as a tourist destination."

"English, huh... can I do it?"

"It's okay. Let's do it little by little. Start by learning simple phrases, and if you can communicate with tourists, that will be enough."

Though Sakurako was anxious, she decided to start studying English. She decided to attend a private low-cost English conversation school in Kamata. Little by little, with Noshita's help, she learned English phrases and began to greet passing tourists with a smile, saying "Hello!" and "Thank you for coming!"

"Wao, I've never seen these sweets before! Grandma, can I take a picture?""Yes, OK! And, please upload that picutures on SNS!"

Sakurako was able to talk to tourists without Noshita's help.

As the store became a hot topic on social media and word spread, the local newspaper finally featured Sakura Dagashiten. Sakurako and Noshita's efforts paid off, and the store became a lively place again, gradually attracting media attention. Not only tourists but also locals began to visit Sakurako's candy store, seeing it as a "nostalgic Japanese scene." In addition, in cooperation with a local elementary school, children were given the opportunity to help out at Sakurako's store as part of their work experience. The store became extremely popular not only with the middle-aged and elderly people who had been familiar with it for a long time, but also with children.

And finally, it was featured on TV Tokyo's World Business Satellite (WBS).

"I'm Mariko Oe. I'm in Ota Ward, Tokyo. Today, I'm going to meet Sakurako, who has successfully reskilled herself in English and SNS, and is running a thriving candy store with an annual turnover of 12 million yen, in partnership with Jonan Shinkin Bank."

"Sakurako, wasn't it a courageous thing to take on reskilling?"

"Yes, I was already 65 years old at the time, so I never thought I'd be able to use SNS or YouTube."

"I heard that Noshita from Jonan Shinkin Bank also strongly supported you."

"Yes... I'm grateful to a young man about the same age as my son for helping me. Without Noshita, the store wouldn't have been as successful."

So now, Sakurako was the talk of the town. But at the same time, she was also feeling her physical condition weakening. While talking to Noshita as usual, Sakurako decided to ask.

"Noshita-san... I don't have any children, but I think of you as my own son. I think there is a job at the Shinkin bank... If you don't mind, would you take over my store?"

"... Sakurako-san, that's a great offer. However, I can't leave the Shinkin bank. Can you turn it into a joint-stock company and second me to an executive position? I'll talk to the Shinkin bank. I'll try to find a successor while I'm still an executive."

"... Thank you. I've worked so hard up to this point, so I don't want it to end with me."

Thus, Sakurako became president, and Noshita solidified the management structure as vice president. Noshita was looking for someone to buy Sakurako's store, mainly in his hometown of Kamata. At that time, he received an email from a major supermarket.

"Sakurako, you have received an email."

"I wonder what it is, let's read it."

"Dear Sakurako, in order to further develop your store, we would like to acquire it for 30 million yen. We can assign one of our talented employees to be the president. Please consider this favorably."

"...I was just looking for a successor...but...if we go to a major supermarket, we'll lose the good part of being close to the local community."

"...I think so too. Shall we hear what they have to say?"

"...Yeah."

Sakurako and Noshita went to negotiate with the executives of a major supermarket.

"I'm very happy that you have a positive outlook on the matter, Sakurako-san."

"... No, I wanted to hear your story first. What kind of store do you intend to run after the acquisition?"

"We use cutting-edge AI. We want to use our AI to create a highly profitable business model as a candy store of the future."

"... I've worked hard on social media and English, but I don't want to run a store without the warmth of people!"

"Then how about 50 million yen?"

"It's not about the amount. Sorry, let's forget about this."

In the end, Sakurako decided to turn down the offer as the president.

"... Are you okay with it, Sakurako-san?"

"Yes, I'm against entrusting business to AI."

In the end, no one was willing to buy the store, and a public official from Ota Ward was involved in the management of the store as part of a public-private partnership. Sakurako resigned as president, but remained in the management of the store as an advisor. Noshita had returned to the credit union.

"Noshita-san... thank you. Seriously. I was able to have a very fulfilling end to my life. I'm happy that I was able to leave this store in my beloved town of Kamata."

(end)

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