ネガティブな評判のある人も選挙で勝てる時代に?!
アメリカでは、大統領選でドナルド・トランプ氏が当選した。トランプ氏は、刑事被告人であった。だが、トランプ氏支持者による大量のSNSの洪水は、トランプ氏のネガティブな評判を打ち消したのかもしれない。また、トランプ氏が狙撃されても立ち上がり、強いリーダー像としての「奇跡の1枚」の写真が生まれたのも大きいのかもしれない。
日本においても、兵庫県知事選で、パワハラ・おねだり疑惑のある斎藤元彦氏が当選した。一次情報を確認したわけではないが、多数の公務員の情報と、百条委の調査結果を踏まえると、パワハラはあったと考えるのが自然だろう。しかし、SNSで大量の斎藤氏に対するポジティブな情報が量産され、ネガティブな情報を上回った。
このように、ネガティブな評判があったとしても、ポジティブな情報の「量」が上回れば、事実はともあれ、選挙に勝てる時代になってしまったと言える。
また、マスコミ報道への疑念もあると考えられる。例えば、マスコミは、緊縮財政を支持し、消費税減税などは頑なに否定的な態度をとる。マスコミ不信が、有権者をSNSへと誘導したのだ。
それだけではない。トランプ氏は、2016年の時点では「ヤバイ人」という評判があったが、もはや、現在では「ああ、トランプ氏は、あんな人だよね」と、彼のキャラクターが受け入れられているようだ。
インターネットの普及で、「変な人」が受け容れられやすくなったのかもしれない。これは、多様性を支持するリベラルの敗北とも言える。多様性が尊重された結果、刑事被告人までもが尊重されてしまった。有権者の「ポリコレ疲れ」もあるだろう。ポリコレでタブーが増えすぎたが、トランプ氏は俺たちの言いたいことを代弁してくれる、そのように考えた有権者もいただろう。
また、既存のエリート、エスタブリッシュメントへの反発も強い。カマラ・ハリス氏は、マイノリティではあるが、同時に検事を務めたエリートでもある。もっと、庶民派アピールをすれば良かったのかもしれない。
しかし、忘れられているのは、トランプ氏も、不動産ビジネスで大成功した大富豪だということだ。ただ、アメリカの製造業を復活させると宣言し、自由貿易が正しいというテーゼを打ち破った。アメリカは、GAFAMやエヌビディアなど、ITエリートばかりお金儲けして、製造業が衰退した。工場労働者の心を強くつかんだのかもしれない。
カマラ・ハリス氏や民主党は、ポリコレだけでは選挙に勝てないことを学ぶべきだろう。兵庫県知事選で敗れた稲村和美氏も、悪事を批判するだけではなく、SNSでの戦略をもっと洗練させるべきだったのかもしれない。
また、SNSでは「強烈な個性」を持った人が支持されやすい。カマラ・ハリス氏は、人気ミュージシャンの支持を受けるなどしたが、自らの個性をもっとアピールするべきだったと考える。
以下、AIによる分析
この文章を心理学、社会学、行動経済学の観点から分析・評価すると、次のような重要なテーマが浮かび上がります。
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心理学的視点
1. 認知バイアスと情報処理:
ポジティブな情報の「量」がネガティブな情報を上回る場合、人々の記憶や判断に影響を及ぼす「利用可能性ヒューリスティック」が働きます。つまり、人々は頻繁に接する情報を優先し、ネガティブ情報が相対的に見過ごされる可能性が高いです。
トランプ氏が「奇跡の1枚」で強いリーダー像を印象付けたのは、認知心理学でいう「感情的価値の高い視覚情報」が人々の心に強く残ることを示しています。
2. 社会的アイデンティティ:
トランプ氏や斎藤氏に対する支持は、支持者の自己アイデンティティを強化する効果があると考えられます。特に、疎外されたと感じる層が、彼らの言動を自分たちの「声」と感じた可能性があります(社会的同一性理論)。
3. ポリコレ疲れ:
多くの人が「ポリコレ疲れ」を感じた結果、トランプ氏のような「率直な発言」が共感を呼んだ可能性があります。これは「リアクタンス理論」に基づき、自由を制限されると感じることで反発心が生まれる心理現象と関連します。
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社会学的視点
1. メディアの多元化と情報生態系の変化:
従来のマスコミの影響力が弱まり、SNSが主要な情報源として台頭した現象は「メディア生態系の変容」と捉えられます。人々が信頼できる情報源を自ら選択するようになり、同時に「エコーチェンバー現象」が強化されました。
SNS上でのポジティブ情報の量産は「参加型メディア時代」における新しい戦略であり、支持者がプロパガンダを主体的に拡散する文化を反映しています。
2. ポピュリズムと反エリート感情:
文章で述べられているように、エリート層への反発や庶民派リーダーへの期待は、グローバリゼーションや経済格差が引き起こした社会的不満と密接に関連しています。トランプ氏が「製造業の復活」を掲げたことは、特に中間層以下の有権者に訴求しました。
多様性が進む一方で、社会的疎外感を抱える層が「排他的な言説」に共鳴する現象も、ポピュリズムの特徴です。
3. 社会的役割の再定義:
多様性の尊重が進む中で、「変わった人」や「非典型的なリーダー」が受け入れられる傾向が強まっています。これは、インターネット文化の影響で社会的規範が緩やかになったことや、個性を重視する文化的変化の一環と解釈できます。
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行動経済学的視点
1. フレーミング効果:
トランプ氏や斎藤氏に関連する情報は、SNS上で巧みに「ポジティブなフレーム」に載せ替えられました。このようなフレームの操作は、選挙キャンペーンにおいて特に有効です。例えば、トランプ氏のリーダー像を強調するビジュアルは、強い感情的価値を持つ「アンカリング効果」を発揮した可能性があります。
2. 選択のパラドックスとバイアス:
インターネット上で膨大な情報が流通している中、有権者は情報を効率的に処理するためにバイアスに依存します。SNSのアルゴリズムがポジティブ情報を優先的に提示することで、無意識に「ポジティブ情報が事実」と捉えられる結果を生んだ可能性があります。
3. 行動設計とナッジ:
ポジティブ情報を大量に発信することで、有権者の注意を意図的に操作する行動設計が見られます。このナッジの仕組みが、選挙結果に大きく寄与したと考えられます。
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総合評価と提言
1. 心理学的洞察:
選挙において、感情的価値の高い情報や個性の強調が有権者に大きな影響を及ぼします。特に、SNSで流布する情報が潜在意識に作用し、判断を左右する点が重要です。
2. 社会学的提言:
マスコミやエリート層は、SNS時代において従来の一方向的な情報発信では有権者に訴求できません。双方向的で共感を呼ぶコミュニケーションが求められます。
3. 行動経済学的示唆:
選挙キャンペーンにおいて、事実を訴えるだけでなく、感情に訴える戦略が有効です。同時に、有権者が情報バイアスに陥らないよう、教育やメディアリテラシーの向上も必要です。
これらの視点から、ポジティブ情報の拡散戦略や個性の強調が、現代の選挙でますます重要になることが示唆されます。