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Wanna overtake 'em or catch up with 'em?

ちょっと思ったことですが,英語に限らず予備校だとか試験対策とかの指導者は「ライバルを追い越す」とかいうことを云ったりしがちだけど,それは,いま自分のいる場所/コミュニティーがいやで抜け出したい人にはそういうことばは刺さるかもしれないけど,それよりいまいる場所/コミュニティーにいつまでもいたいと思っている人には,「乗り遅れることはない」というメッセージを発した方が刺さるのでは.とくにいまの若い人はなんだか,そんな感じのような気がします.

どっちかというとこの本も本来は,出し抜くんじゃなくて,スタートが遅れても基礎からやれば追いつける,という層にアピールしています.超難関を除けば大学入試の英作文はこのぐらいで大丈夫.細かい語法の使い分けを書いている本があるけど,基本的なセンテンスの語順と際頻出の動詞の語法ぐらいで,あとはごく普通の展開パターンとかジャンル別の構成(これをテキストタイプとかよぶ.英語だとtext typesだけど)にそってごくごく素朴な英語を書く練習さえすればいいのに.だって,この本の最後の方にいちおう専修大の問題を載せたけど,横浜国立大学も問題のレヴェルからすれば同じぐらいなんだし(こっちを載せればよかったのか…).で,これができると,つまずいていた長い英語を読むというのも少しずつわかってくるから難しめの英語も読めるようになってきて,結局はすべてが正しい方向に向くんだけどな.

たぶん,いつものことながら,この本もアピールするべき層とアピールの仕方を間違っているのかもしれないな,とちょっと感じました.まあ,といっても,著者は大したことはできないんだけど.実際,入試の英作文でも資格試験のライティングでも,英語に自信がない,苦手な人ほど,他のことはいいから,この本をやってみてほしいと思います.また,この本が他とつくりが違っているところがひっかかっている人は,お金があればよく売れているフツーとされている英作文/ライティングの本とこの本を2冊とも買ってみてください.この本が信用できないならそっちの本を中心にやってもいいから.たぶん,挫折したら,そこが『ゼロから覚醒 はじめよう英作文』の出番だから.簡単なこともそうでもないことも類書にないことを書いているから.別に本なんて全部読まなくたっていいし,よほどの人格者を除いては,指導者とかインフルエンサーが語学書を紹介しているのだって,ペラペラと気になったところを中心に確認しているのが普通なんだから,学習者もそういう使い方をしたってかまいません.どこが大事かを探すのにざーっと目を走らせるのが速読で,気になったところをじっくり読むのが精読なわけですから.もちろん,そういう作業の中でどういう分野でも1冊じっくりと繰り返し何度も読みたくなるような本に出会えれば幸せだろうな,とは思いますが.

そういえば,ぼくもそういう意味で,『ゼロから覚醒』シリーズの最新刊としてでた漢文の本をペラペラと見たけど,著者の人がそうそう頑張ったのか,編集の人が優秀なのかは知らないけれども,ぜんぜん違った科目なのに,レイアウトとかは違うけれども,なんとなく本の作り方とかはシリーズの統一感がとれているなあ,と感心しました.というか,『ゼロから覚醒 はじめよう英作文』を書いたぼくが統一感を乱してなければいいけど.でも,冗談抜きで『ゼロから覚醒 はじめよう英作文』はごくごくフツーに基礎をまとめたらこうなるはず(イギリス系の出版社のCEFR A1ぐらいの層に向けたライティングの本はだいたいこんな感じでしょ?)なのにだれも書かなかった本だと思うんで.刊行されてから1年をとうに過ぎているので,いくら「知る人ぞ知る名著」扱いでもそろそろ増刷がかかって欲しい(たぶん,このままでは『はじめよう漢文』に追い抜かれます)ので,興味があって迷っている人は買ってみてください.

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