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「本物のわさび」は食卓の脇役じゃない、主役になれる逸材だ

 突然ですが質問です。あなたは、1年間にどれくらいの量の「わさび」を消費していますか?

 こう聞かれると、チューブ入りのわさびと、それを醤油に溶かすシーンを頭に浮かべながら「チューブ1本分も消費していないかも…」と想像する人も多いのでは?

 食通で有名な作家・池波正太郎氏はこんな言葉を残している。

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お刺身を食べるときに、たいていの人はわさびを取ってお醤油で溶いちゃうだろう。あれはつまらないよ。
刺し身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね。(『江戸前 通の歳時記』)

 そう、わさびは香りと鮮度が命。

チューブ入りのわさびでは、本物のわさびが持つ、本来の魅力を味わえない。

 今夏訪れた静岡・伊豆半島で、本物のわさびと出会い、あまりの美味しさに、一食でわさび一本をたいらげてしまった。・・・年末までにわさび30本を消費する勢いで、どっぷりそのわさびの魅力にハマっている。

1.本物のわさびって?

本物のわさびは、食卓の「主役」になれる食材。

チューブ入りの素材にとどまるような、脇役ではないし、何かと混ざることで香りを失わせるような残念な存在でもない。

究極的にいうと、本物のわさびであれば、「白米+わさび」で成立する。

何年か前に、『孤独のグルメ』で至極の一杯として登場した、わさび丼。そのレシピは、シンプル・イズ・ベストの極み。

・本わさび……1本
・白米……1膳分
・かつお節……適量
・しょうゆ(またはだし醤油)……適量

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 レシピからお分かりのとおり、主役がわさび。本物のわさび。

2.本物のわさび、相方を探す

本物のわさびを、主役に持ち上げるための道具(相方)も、紹介したい。

 私が購入したのは、これ。

 その名も、「わさびおろし サメ吉」。

 新潟県燕市生まれのこの相方は、恐ろしく滑らかな食感を生み出すと同時に、わさび本来の香りの素晴らしさを引き立たせてくれる。オールステンレスでメンテが楽だし、表面にあるこの無数の小さな刃がギザギザに配列されており(鮫肌風)、淡く"クリーミーな"すりおろしわさびが誕生する。

 本物のわさびを用意する。あとは、この相方を使って、丁寧にすりおろすだけ。わさびの茎側から円を描くように優しくゆっくりすりおろしていくと、なぜかわさびが甘い。わさび特有のツンとくる香りの奥に、甘みを感じられるのだ。

 最後に炊き立ての白米(最近は土鍋ご飯にハマっている)に、かつおぶしをまぶし、おろしたてのわさびを上から添えるだけ。至福。

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3.知っておきたい、わさびの出身地

 わさびと言えば、「静岡県」。 

 わさび栽培発祥の地は、静岡県静岡市の有東木(うとうぎ)という地区(静岡市の北部で、山梨県との県境近く)。約400年前、この山間部に住む村人が渓流に自生していたわさびを採集し、湧水地で栽培したのが発祥と言われているそう。

 そして出身地・静岡県は、2019年時点でもなお、水わさび(水を利用して栽培されるわさび)の栽培面積、根茎(すりおろす部分)の生産量・出荷量いずれも日本一。まさにキングオブ山葵カントリー。

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4.最後に

 わさびと鮨が出会ったのは、19世紀。サバの押し鮨特有の生臭さを消すため、当時用いられたのが始まりという。今でこそ、わさびと鮨はセット販売のように考えられがちだが、わさびは鮨と出会うずっと前から日本固有の食材として、和食に根付いていたんだね。

 伊豆の天城で撮影した写真。左が渓流、右がわさび畑。

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 そして、夏らしく涼しげに光る特大わさび達。

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 少しでも、わさびへの見方が変わったら嬉しいな。さあ、わさびをおろしてご飯を炊こう。





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