「学校の国際化比較研究」その2
・・・中学校夜間学級と日本語指導通級教室を参観しました。提出したレポートです。・・・
1 訪問先について
(1)A市立B中学校夜間学級
弁論大会と通常の授業をそれぞれ参観させていただいた。様々な国から来日した若者が一生懸命学習する姿や、彼らをあたたかく支援する先生方の熱心な姿は感動的であった。
生徒の国籍は年々変化があるそうで、以前は中国籍の生徒が多かったが現在はアフガニスタン出身の生徒が多いとのことだった。ただ、日本国籍の生徒が全くいないかごくわずかであることはここしばらくは変わっていないようであった。「A市立」の学校として運営するならば、教育を受ける生徒個人のためだけでなく、A市民のためにもなるよう、いっそう公益を考えて運営していくべきではないか。具体的には、不登校経験者など小中学校を形式卒業した人の受け入れに力を入れることや、昼間の中学校の生徒たちとの交流学習の場を増やすことなどが考えられる。
(2)C市日本語指導通級教室(D教室)
「日本語指導担当者連絡協議会」に参加し、プログラムの中で授業の様子の一端を見せていただいた。この通級教室では進路指導(進学指導)が重要な役割の一つになっている。授業では、日常言語の一段階上である学習言語を習得させるため一対一できめ細かい指導が行われていた。指導者には受験情報や日本語指導についての技量のみだけでなく、生徒がルーツを持つ国・社会の情勢や文化への理解も必要とされる。生徒の実態を的確に把握して指導するために、指導者の側の広く深い知識と力量が問われることがわかった。こうした優秀な教員によるきめ細かい指導を、通常学級の日本人の、たとえば学力低位や家庭的な難しさを抱える生徒も受ける機会があればよいと思った。
2 これからの学校教育のあり方について
2つの学級を訪問し、両者とも移民政策としての意味合いが大きいことがわかった。
2019年4月に改正入国管理法が施行され、日本は外国人受け入れに向けて大きく舵を切った。在留外国人は今後さらに増えることはまちがいない。親の都合で連れてこられる子どもたちの教育のありようは、言わば大人次第である。無力な子どもたちを放っておくわけにはいかない。
2019年6月に「日本語教育推進法」が可決、施行された。その第一条には「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資する」と記されている。 今後共に日本で暮らす仲間として外国籍児童生徒の教育に取り組みつつ、学校の国際化を推進していく必要がある。学校教育は国策や国際情勢と無関係ではいられないのである。
そこで、改めて「公教育」とは何かを考える。税金を使って行う教育政策は、公益のために行う必要がある。現状では、A市では一般の学校でも教員などスタッフの人員不足で手が回っていない。また、貧困など家庭の問題からしんどさを抱えている児童生徒も多い。外国人への教育政策を優先して日本人への教育政策が手薄になるのは本末転倒であると言わざるをえない。この国の社会をどんな社会にしていくのか、未来を見据えながら、日本で育つすべての子どものニーズに応えるような学校教育をめざしたい。そのためにも、「法律ができたから」「指導要領で決められているから」等、上から与えられるお達しにただ従ったり、目先の素朴な良心だけに突き動かされたりすることなく、政治や社会のあり方に広く関心を持ち、学び、考え続けていきたい。
貴重な学びの機会を与えていただき、ありがとうございました。
(以下蛇足です。)
…しかし、この国は、本当にアメリカのような「人種のるつぼ」的な国のかたちをめざすのだろうか。日本国民に本当にそこまでの覚悟があるのか、疑問です。外国人受け入れをどうするのか、この国の社会をどんな姿にするのか、国民的な議論や対策がほとんどないままに、現状先行で外国人が増えていっている感じがします。こうした大きな問題について、教員同士でも、もっと対話が必要だと思います。
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