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石破自民党新総裁誕生~「新しい資本主義」の復活を期待

自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出されました。自民党に対する信頼度が落ちている中、国民的人気の高い石破氏が選ばれたことは順当なところなのでしょう。石破氏がこれまで、数々の閣僚や党幹事長を務めながらも、政権中枢から一定の距離をとっていたことも、刷新感を求める国民の声に応える総裁たりうるとして選出につながったのだと思います。(見出し画像は、自民党HPより引用)

石破氏が、新総裁・新総理として実現しなければならないことは、多々あります。特に安全保障に強いという印象の石破氏ですが、ここではあえて経済面についてお願いしたいと思います。

それは、「新し資本主義」の復活です。石破氏は、総裁就任後の記者会見で、「『新しい資本主義』にさらに加速度をつけていきたい」と発言していましたが、その中でも分配機能の強化、さらにその中でも金融所得課税制度の改善について期待したいと思います。

「新しい資本主義」は、岸田総理が看板政策のひとつとして掲げていたものですが、次第に内容が変質し、分配機能の強化についてトーンダウンし、中でも金融所得課税の改善については、(恐らくは経済界の圧力に負ける形で)尻すぼみになってしまいました。

累進課税に逆行する制度

この問題は日本だけではなく、多くの国が抱えている問題なのですが、株式の売却益や利子収入などの資本収益については、その人がいかに多くの収入があろうと、定率の課税がなされています。日本の場合、資本収益には約20%の定率で課税がなされます。

そのため、収入が少なく、所得税率が5%の人や、税金がかかっていない人も、わずかな預金の利子から約20%が引かれます。逆に、そもそも20%を超える所得税を納めなければならない高額所得者も、資本収益からは約20%しか引かれません。

また、ほとんどの高額所得者の収入は資本収益が大部分を占めるため、所得が大きくなればなるほど、収入に占める税負担の割合が小さくなるという現実があります。

実際、日本では、平均で見ると年収1億円の人でも所得税負担率は28%程度で、それ以上の所得の人は、(平均では)かえってこれより負担率は下がっていき、年収100億円超の超高額所得者は20%以下の負担率になっています。日本では累進課税による所得税の最高税率は45%とされていますが、実態は全く違うのです。

「正義」に反する。

時々、これを「1億円の壁」と呼んだりしますが、制度上1億円のところに壁があるわけではありません。

年収が一定以上(所得税率が20%を超える年収約700万円以上)の人については、その資本収益に対してい本来課されるべき所得税率より低い税率が課されています。収入が上がれば上がるほど、その乖離が広がり、平均で見ると1億円以上の年収の人は収入全体に対する実効税率がむしろ下がる傾向にあるということです。

資本主義は「勝ち組」と「負け組」とを分断し、格差を生み出す傾向があります。これを修正していくためには、高額所得者ほど高い税率によって税金を負担し、それを低所得者に分配するという「所得再分配」が必要になります。資本収益に対する課税の欠陥は、この資本主義修正の考え方を根こそぎひっくり返す問題です。

年収何千万とか何憶とかいう超高額所得者がウハウハしている一方で、毎日の食べ物にも困っている子供たちがいる。そんな社会が正しい社会なのでしょうか。

「いかに公正な税制を実現するかだ」

石破氏は、総裁選の論戦における段階から、「いかに公正な税制を実現するかだ」と述べ、富裕層への課税強化を主張していました。

社会的弱者を支援するためには予算が必要です。そのためには、他の財政支出を切り詰めたり、増税したりしなければなりません。年金財政もどうにかしなければなりません。法人税を増税すれば、国際的競争力が落ちてしまい、法人税が低い国に企業が出て行ってしまいます(その状況を防ぐために、法人税の最低税率を国際的に定める取組がOECDを中心に行われていますが)。

それを考えれば、この資本収益に対する課税の是正は、真っ先に進めるべきことでしょう。もしかしたら、金額的にはこれではまだまだ足りないのかもしれません。しかし、税制において、このような「不正義」がまかり通っているうちは、これ以上消費税を引き上げられることに、誰も納得がいかないのではないでしょうか?

税率を単純に上げるのではない

ひとつ、誤解すべきでないことがあります。それは、資本収益に対する税率を単純に上げればよいということではないということです。

経済同友会の新浪代表幹事は、資本収益に対する税率は「25%程度でもよい」などと発言しているようですが、そういう話ではないのです。そういう話になると、「中間層の投資活動に水を差す」「新NISAに逆行する」などという反対の声を生じ、本来議論されるべきポイントがろくに議論もされないまま、頓挫しかねません。

資本収益に対する税金は、低所得者であっても、どんな少額であっても銀行に貯金をしていれば、課税されています。したがって、資本収益に対する税率を単純に引き上げるだけでは、低所得者の負担も増やすことになります。

重要なのは、高額所得者には、資本収益についても高率で税金を負担していただくということです。つまり、資本収益についても、収益の多寡に応じて税率を変え、累進性をもたせるということです。

技術的に多大な困難が生じることは想像できます。すべての資本収益を合計しないと税率が確定しないことになるため、自動的に税金を徴収することができなくなります。もし預貯金まで対象にすると、ほぼ全国民が自分で資本収益を計算して、確定申告しなければならなくなり、現実的ではありません。

しかしながら、マイナンバー制度によって、番号ごとに資本収益を自動的に合算することは今後可能になっていくと思います。それを踏まえて税額を自動計算し、翌年の収益から差し引くことなどを検討すべきでしょう。

生活のすべてを把握されることへの抵抗感もあると思いますので、預貯金まで対象にすることは難しいかもしれません。少なくとも株取引や投資信託などの収益を合算するところから始め、次の段階として給与収入など資本収益以外の収入と合算することを目指していくべきだと思います。

財務省・国税庁は、実はマイナンバー制度でそういうことを狙っているのではないかと、私は半分期待しています。そういう制度設計の準備(のための頭の体操)も始めていると思います。

しかし、それを実現するには、強い政治的なリーダーシップが必要です。石破新総裁・新総理には、是非そのための道筋をつけていただきたいと思っています。

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