あまのみちよ

思想家、作家・詩人、AIアーキテクト、プラットフォームビルダー、元料理人、同組織ジャー…

あまのみちよ

思想家、作家・詩人、AIアーキテクト、プラットフォームビルダー、元料理人、同組織ジャーナリスト、同派遣労働者、同タクシードライバー

マガジン

  • 第3、4章 日本人の生きづらさの本質

    日本人は、幼児の時から、母による子の存在の絶対的な肯定関係の中で育ちます。その関係性が日本人にとっての、「望ましさの原点」であり「居場所」です。自分であることの土台、「自分」の存立基盤が、母による絶対的な肯定と、いつも母とつながっていたいという欲求と、その充足によって得られる「居場所」という3つの要素で成り立っている時、これを「ものがたり方程式」の「母性原理」と呼びます。「母による絶対的な肯定に象徴される自己愛と居場所感覚」に染まって育つと、その感覚が失われることによって受ける心のダメージが非常に大きいものになります。「傷つく」というのはそういう感覚であって、日本人が何よりも恐れることです。この恐怖心が、「生きづらさ」の本質であって、共同体の中でその支配的価値観から「浮かないように」、常日頃から互いに「空気を読み」合う必要が生じます。

  • 第1章 どす黒い奔流

    1人を殺せば殺人になり、100人を殺せば英雄になる。裁かれる殺人がある一方で、美化される殺人がある。この事実ほど、私たちがいかに「ものがたり」の中で生きていて、「ものたり」に支配されているかを証明するものはありません。人間は「ものがたり」無しには生きていけない。だが「ものがたり」の中で生きる限り人間に自由はない。どうすれば人間は「ものがたり」を克服することができるのか。この問いの答えを見付けることが、この哲学的エッセイのテーマです。

  • 第2章 ものがたり方程式

    世間で支配的な「ものがたり」に、人々は「なりたい自分」の姿を写して、喜んだり悲しんだり、がんばったり絶望したりするんですね。そう考えると、「ものがたり」こそが、人間社会を動かしている大きなメカニズムだということが分かります。 私は、「ものがたり」という概念をこのように捉えることにして、それがある時は人間を苦しみから救い、ある時は人間を絶望に追い込むこと。「ものがたり」こそが人間の文明の本質であり、同時に人類を破壊と殺戮と破滅に導く力であることを、このエッセイで明らかにしていきたいと思います。

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ばけものがたり(はじめに/おわりに)

はじめに「ばけものがたり」というタイトルに興味をそそられてこのサイトを開いた、あるいは本を手に取った方は、まず「あまのみちよ」という名の作者のプロフィールを読もうとするでしょう。なぜならば、作者の「肩書」や「経歴」で、人はその作品の信頼性や想定される面白さ、役だち感を期待するからです。何を隠そう、この私もそうであることを白状します。 ところが、皆さんは、私の肩書があまりに抽象的で一貫していないことに戸惑ったに違いありません。どのような職業なのか、学歴はどうなのか、他の著作や

    • 第4章 日本人の生きづらさの本質(7)

      7.主観化し共観する日本語 日本人は、そもそも論理と実証を行動原理とすること、合目的型の思考が苦手なのです。そこには日本語の成り立ちが大きな影響を与えていると考えられます。 日本語は(それに韓国語もそうですが)主語が無くても、目的語が無くても成り立ちますよね。 「どこにする?」 「外、暑くない?」 「でも、がっつり行きたいな」 「冷しゃぶうどん。今日の、社食。」 「ええやん!」 「決まりね」 おそらく最初の発言者は、壁にかかった時をチラッと見て、パソコンをシ

      • 第4章 日本人の生きづらさの本質(6)

        6.ムラ的共同体 第2章ものがたり方程式では、共同体を「それを維持する意思を持った人々の集まり」と定義したのですが*、さらに細分化すると共同体は、特定の目的の実現が共同体の成立と存続の原因となっている「合目的型共同体」と、存続すること自体が共同体の目的となっている「血統型共同体」の2つに分かれます。 「合目的型共同体」の典型は、会社、政党、プロスポーツのチームなどです。いずれも誰かが発起人、設立者となって、共同体としての人格をもって事業を行い、その利益を構成員に配分し共有

        • 第1章 どす黒い奔流 (3)

          若きウクライナ兵の手紙 パパ、ママ、イリーナ。 生きてもう逢うことはないと思うので、僕が最後の日々をどのように生き、どのように死んでいったか、私の愛するあなた方に知ってもらいたくて、この手紙を書きます。 まず、あなた方に知ってもらいたいことは、僕は今、幸福を感じているということです。そして死に対する恐怖はありません。絶望や苦しみの中で死んでいくのではないということを知ってください。 昨日、生まれて初めて人を殺しました。そうです。ロシア兵です。川を挟んで200メートルく

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        ばけものがたり(はじめに/おわりに)

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        • 第3、4章 日本人の生きづらさの本質
          7本
        • 第1章 どす黒い奔流
          3本
        • 第2章 ものがたり方程式
          7本

        記事

          第1章 どす黒い奔流 (2)

          【「ものがたり」概念との出会い】 というのも、それまで私にとって「ものがたり」という概念は、どちらかというと否定的な価値だったからです。 私が最初に「ものがたり」概念を意識し用いるようになったのは、ビジネスの世界におけるマーケティングからでした。マーケティングとは、簡単にいえば、「商品やサービスを(潜在的な)顧客に購入してもらうように仕向ける、方法とその実行」ということになります。 私がマーケティングに関わった2000年代、日本は既にゼロ成長時代に入っていました。物やサ

          第1章 どす黒い奔流 (2)

          第1章 どす黒い奔流(1)

          私のここまでの人生は、どちらかというと波乱万丈だったと言えるかも知れません。 中央官僚から知事を12年務めた父を持ち、母方は祖父が東大医学部長、日赤病院長までになった医者と学者の家系でした。しかし母は「エホバの証人」の信者で、私の少年期に3度も自殺未遂を行い、寝たきりの生活を送っていました。私は国立大学を出て、「組織ジャーナリスト」の一員になりましたが、権力闘争のみに明け暮れる体制にうんざりし、某国の支局長を終えて退職しました。その後ビジネスの道に進みますが、最終的には大き

          第1章 どす黒い奔流(1)

          第4章 日本人の生きづらさの本質(5)

          5. 「外なる法」と「内なる法」 ここで改めて、「法」という概念を取り出して考えてみることは価値があります。なぜならば「法」は共同体の「ものがたり」の代表格であって、構成員個人の認識と行動に影響を与えるミクロ的機能と、共同体に正統性を与え、維持し、闘争を導くというマクロ的機能の両方を持っているからです。 法とは、まず第1にルール、規則であって、人間にある行動を禁止したり許可したり、強制したりする基準です。そしてそれは家庭、学校、会社、国家などのそれぞれの共同体ごとに独自の

          第4章 日本人の生きづらさの本質(5)

          第3章  日本人の「生きづらさ」の本質 (4)

          4.「引きこもり」の本質 「引きこもり」は、最近では日本特有の現象ではなく、世界中どこでも見られる現象になってきました。とはいえ、日本は「先進国」として、実例が多く研究も蓄積されてきています。私の主張する「ものがたり方程式」と「母性原理」を検証するための、うってつけの事例があるので、それをご紹介します。 一般社団法人ひきこもりUX会議という団体があって、その代表理事の林恭子さんは、高校2年生からおよそ13年間家にひきこもっていた、「引きこもり」の当事者です。そして自分の体

          第3章  日本人の「生きづらさ」の本質 (4)

          第3章 日本人の「生きづらさ」の本質(3)

          3.「父性原理」と「母性原理」 「母による子の存在の絶対的な肯定」の感覚、その「想い出」が、「自分」の存立の基盤であり、生きる上での安心、自信、希望となるのは、おそらく人類共通の原理だとは思います。しかし人間が最初に所属する共同体である親子関係において、子供が最初に自覚する「望ましさ」(望ましい「ものがたり」の、望ましい配役)は、母子関係に基準がある場合と、父子関係に基準がある場合の2通りがあると考えられています。 心理学者の河合隼雄は、これを「母性原理」と「父性原理」と

          第3章 日本人の「生きづらさ」の本質(3)

          第3章 日本人の「生きづらさ」の本質 (2)

          2.想い出ー日本人の「自己愛」の源(みなもと) このエッセイの読者であるみなさんの大部分は、もしかすると「もくもくTV#なんか生きづらいかも」のアンケートで、日常的に生きづらさを感じている80%のクラスターに属しているかも知れませんね。そうすると、皆さんは番組の内容を「あるある」と感じる一方で、それが極めて日本的な現象であるという感覚は、きっと持てないでしょう。 そうなんですよ。「『普通』から自分が外れているのではないかという不安」、「はずれないよう努力することへの疲労」

          第3章 日本人の「生きづらさ」の本質 (2)

          第3章  日本人の「生きづらさ」の本質 (1)

          1.生きづらさ前の章で、私たちを時に苦しめる「現実」というものは、確固不動のものとして私の外部に存在しているのではなく、私が認識し記憶する表象と出来事を、「ものがたり」という「意味」で編集したものであって、それが私の意識(自己愛)に投影されたものであるということを述べました。そして「意味」を生み出すのが「自己愛」「共同体」「ことば」というパラメータなのでした。 この章では、これらのパラメーターの実際の作用のし方を考えようと思います。「自己愛」「共同体」「ことば」が変化すると

          第3章  日本人の「生きづらさ」の本質 (1)

          第2章 ものがたり方程式(5)

          <肉体という定数>「私の身体」はひとつです。それが分裂したり、あなたの身体と置き換わったりすることはありません。だから変数には入れなかったのですが、肉体は自己愛、共同体、ことばという変数と、相互に影響を及ぼし合っています。   ここでは、肉体が3つの変数に影響をおよぼしている5つの側面を、簡単に整理しておきたいと思います。 肉体の5つの定義と言い換えてもよいです。 ① 肉体とは、「私」の入れ物であるところの、この身体である私である ここに鏡があります。高さ160センチは

          第2章 ものがたり方程式(5)

          第2章 ものがたり方程式(4)

          <ことば> 「ものがたり」方程式の3つめのパラメータは「ことば」です。 「現実」とは、共同体に関する「想い出」が、「ものがたり」というかたちに編集されたものであって、それが自己愛というスクリーンに投影されたものが、「自分」なのでした。ここで、「ものがたり」が編集されるときに用いられるのが、「ことば」です。 三井物産、出世、エリートといった「ことば」が人々の間で共有されている場所が、共同体であるわけですから、AさんBさんとは違い、門外漢である私にとって、三井物産はもちろん

          第2章 ものがたり方程式(4)

          第2章 ものがたり方程式(3)

          <自己愛> 【各パラメータの定義】 それでは各パラメータについて説明します。 <自己愛>self affection* 自己愛が何を意味するかは定義によります。私は、自己愛を<共同体において自分が「望むものがたり」の「望む配役」でありたいという願望、共同体から除名される恐怖の裏返しであるところの情動>と定義しようと思います。 「ものがたり」は、「なりたい自分、あるべき自分、またはなりたくない自分、あるべきではない自分というロールモデルを私に要求する、共同体の価値観や

          第2章 ものがたり方程式(3)

          第2章 ものがたり方程式(2)

          2.ものがたり方程式 「自分」=現実=「表象」x「出来事」x「意味」 これを、私は「ものがたり方程式」(の原型)と呼ぼうと思います(×とは、単に「相互に影響を及ぼし合う」という意味です)。 「ものがたり」*とは何であるかについては、3章以降で少しづつ解き明かしていこうと思いますが、とりあえずここでは、まえがきで述べたように、 「ものがたり」=なりたい自分、あるべき自分、(その逆のなりたくない自分、あるべきではない自分を含みます)というロールモデルを私に要求する、共同体

          第2章 ものがたり方程式(2)

          第2章 ものがたり方程式(1)

          第2章 ものがたり方程式(1) 東日本大震災のような大災害や、ウクライナ戦争のような悲劇の渦中にいる人は言うまでもなく、人生でなにがしかの挫折や、苦難や、喪失を味わった人は、「私の人生は、生きるに値するのだろうか?生きる価値があるとすれば、それはどこにあるのだろうか?」という、根源的な問いを自分に発することでしょう。そして、「ああ、これが現実ではなく、夢であればいいのに。」と嘆くことでしょう。 私自身が、そうであったから言うのです。ところが、ある時、嘆きのさなかに、ふと思

          第2章 ものがたり方程式(1)