浪人時代。
僕の好きな芸人コンビのラランドがYouTubeを公開した。
「点」という作品。
すんごく浪人を思い出してしまった。
まあそら浪人のことを描いてるからか。
ラランドのニシダの方が特に好きなんだけど、彼みたいにな文才があればなって常々思う。
この作品もその浪人経験のあるニシダが書き下ろしたもの。
浪人って本当に浪人って感じ。
波(浪)に揺られていて自分の存在は安定していない。
この一年で浪人が終わるなんて分からない。
第一志望に受かるかなんて誰も保証してくれないし。
現役のときに受かった学校すらもまた受かるかなんてわからない。
現役のときは合格発表を直接掲示板を見に行った。
受かってる自信があった訳じゃない。
五分五分だと思ってた。
受かってたらその場で喜びたかったし、落ちてたら悔しさをバネに頑張れると思ったから。
3/10、ドキドキしながら本郷三丁目で降りる。
ネットを見て来ている子も多いのか笑顔の子が多かった。
永遠とも思える時間をかけて正門をくぐった。
理科Ⅰ類の合格者掲示板の端から自分の番号を探す。
そして端から端まで見ても自分の番号がない。
あのときのバクバクの心音がすーっと収まって冷たくなっていく感覚は今でも夢に見る。
家に帰ると父親が笑顔で「よう、浪人生!」と笑いかけてくれた。
その優しさがまた痛かった。
自分で決めたこととはいえ浪人はしんどかった。
春先は高校同期がサークルやらバイトやら恋愛やらを楽しんでいる。
自分にあるのは「勉強」、だけ。
高校の延長で、大学に入るスタートラインにも立ててない。
頑張ってるのに拭えない時間を浪費してる感覚。
「勉強」しかないからこそ、テストの点数や判定のアルファベットで一喜一憂する。
それしか自分の存在意義がないから。
夏には一年で最初の東大模試がある。
浪人生はA判定を取らないとダメ。
現役の伸びが凄いから、夏でAを取って、秋でB以上で、本番で逃げ切る。
そんなプレッシャーをかけられる。
こうなると、一安堵一憂。
楽しみなんてない。
自分の勉強法が正しいのか。
3月に報われるのか。
そんな答えのない問いが頭の中でぐるぐる回る。
目の前の答えのある問いですら答えが見つからないのに。
「受験が全てじゃない。」
周りの部外者は皆そういう。
でもそれが全てなんだよ。
一年間受かるためだけに勉強をして、それが報われることが全てなんだよ。
一年間頑張ってよかったと思うには桜を咲かすしかないんだ。
僕は本当に運が良かったなと思う。
一年間頑張ってそれが報われた。
自分の努力の賜物とは今でも思えない。
周りに報われなかった人が沢山いるから。
単純な「机に向かった時間ゲーム」なら皆圧勝してる。
それでも報われない人がいる。
だから春から浪人をする子たちに向けて言いたい。
頑張るしかないんだって。
それが全てなんだって。
そうやって四六時中苦しんで、投げ出さずに向き合った人たちは皆「浪人してよかった」って言う。
合格と不合格にかかわらず。
人生長い目で見れば合格と不合格なんて些細な差だ。
周りの人間の言うように受験は全てじゃないから。
ただこれから戦いに出ようとしている浪人生には何度でも言う。
合格が全てなんだ、と。
心行くまで苦しんでほしい。必ず糧になる。