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【会津と漆】
会津といえば、たくさんの伝統工芸が残っていますが、その中でも漆器は特別ですよね。
漆器の産地はたくさんありますが、日本で育った漆の木から採集した漆を使う産地は、岩手県の浄法寺と、福島県の会津の2ヶ所がメイン。福井県の越前も、国産の漆を取り戻したいと、漆の木を植樹したりしていますので、未来にはもう少し増えているかもしれません。
今回は、漆に惚れ込み、漆のスペシャリストになられた貝沼航さんがご案内くださるテマヒマうつわ旅に参加し、知れば知るほど感動しっぱなしの漆器の世界を少しご案内します。
漆の樹から漆の樹液を採集するのは、とっても大変。
15年かけて育った漆の樹から取れる樹液はたった300ml(お茶碗10個分)です。貴重ですね、、、!
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漆を塗る木地(きじ)も、削っては自然乾燥するという工程をじっくり何十年もかけて繰り返します。
むしろ、削り始める前から手仕事は始まっていて、伐採したての木材は数十年保管して十分に乾燥させないと良い状態にならないため、先代から受け継いだ木材を当代が器にし、当代も次世代のために丸太を乾燥し始めるそうです。
何という年月の受け継ぎ方でしょう。
人生の長さと短さを、俯瞰して見ているようで、
一つの器に込められた手間と時間の集積に、息を飲みます。
そうして生まれた漆器は強く、とっても扱いやすく、長く使え、何より手触りと口当たりが艶っぽくなめらかで、たまりません。
手間暇がかかる分、本当に素晴らしい、一生、、、いや代々使える器なのです。
漆の樹液も、国産は品質がものすごく高い。
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津波被害のあった地域でも、漆の箪笥や机は重油を被ろうが流されようが、無事で汚れもきっちり落とせたそうです。
何度見ても感動する、木材のストック。
木材には収穫した年がかかれており、私と同い年の木材も、出番を今か今かと待っていました。
職人さんの一つ一つの手仕事も、機械より精密で驚きっぱなしです。
これはぜひ、現地で感じて欲しいので多くは書きません。
漆は英語では「japan」の異名を持つ通り、日本が誇るべき文化ですね。
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会津は冬場の雪で出歩けないこともあってか、しっかり分業されています。
一つの漆器を作るのにも、かきこさんから木地師さん、塗り師さん、蒔絵師さんと、
それぞれの道のプロの手によって完成されていきます。
蒔絵師さんとは、今回初めてお話を聞きました。
伝統工芸師の山内さんの工房に伺いました。
会津の中でも職人さん自らがマーケットを開くパイオニアとして道を切り開いて来られたこと。
漆を塗る刷毛などの道具を作る人が日本に1~2名しかおられない現状。
既に材料が無くて、作れない筆が出てきていること。
産地は、じわじわとピンチに追い込まれています。
でも、使う人が増えれば、文化や手仕事は続いていきます。
高いものには値段以上の価値がある。
使えば、わかる。
会津では給食の食器を合成樹脂から漆器に変えたところ、子どもたちが何も教えていないのに器の扱いが丁寧になったそうです。
ここにある技術も、生まれる質感も、感嘆するものばかりでした。
大切にしまわれてた先人の作品も、呼吸が止まりそうなものもたくさんありました。
いくつか私も連れて帰って、普段使いをはじめました。
毎日すべすべの器に触れて、お料理は美味しく感じ、色味も食材が美味しそうに見えるのが漆の良いところなので、みなさまもぜひ本物に触れてみてください◎
■テマヒマうつわ旅
http://tematrip.com
■沼さん監修の育てる漆器・めぐる
https://meguru-urushi.com/
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植物の力を給ぶ、得る。
私たちは、北海道から沖縄までリサーチに出掛け、根付いた薬草文化と出会い、薬草茶などの商品を提案する伝統茶{tabel}を2014年より始めました。
おいしさと慈しみ、作り手や風土の魅力をお届けします。
2018年に講座シリーズ「薬草大学NORM」を開校。同年に著書「薬草のちから(晶文社)」を発刊し、ロングセラーとなる。
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