現代アートは知ることでますます楽しくなるー 出張Think School「はじめまして、現代アート」レポ(前編)
アートとまちづくりを学ぶアートスクールThink Schoolは、2018年から「さっぽろアートステージ」に「出張Think School」として参加してきました。
今回は、2018年11月に「はじめまして、現代アート」と題して美術史研究家 筧菜奈子さんを迎えた講演についてレポートします。
現代アートの入り口を筧さんの案内で
2018年11月11日、さっぽろアートステージ2018にて
Think School 卒業生有志の企画により、出張Think Schoolとして現代アートの入門講座を実施しました。
その名も「はじめまして、現代アート」。
講師は、美術史研究家の筧菜奈子さんです。
この企画は、「現代アートが気になるけれど、よくわからない」……
そんな気持ちに応えたい! 現代アートの世界に飛び込むはじめの一歩を踏み出すきっかけを作りたい! という想いから生まれました。
私たちもThink Schoolで現代アートを学び、勉強しなければ理解が難しい世界だと思ったからです。
講師の筧さんは、1986 年千葉県生まれ、2018年、京都大学人間環境学で博士号を修得された美術・美術史研究家です。2018年当時、日本学術振興会の研究員や大学講師をされていました。
筧さんが執筆された現代アート入門書「めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード」がとても面白くわかりやすかったため、講演を依頼することとなりました。
では早速、講演のダイジェストをお届けします。前編は筧さんが現代アートを学びはじめたきっかけについてです。
抽象の重要性を理解できなければアートの世界では生きていけない?!
どんなきっかけで、筧さんは現代アートを研究することになったのでしょう。
筧さんは、幼い頃から何かを作ることが、大好きだったそうです。そして、高村光太郎が制作した彫刻の美しさに惹かれて、多摩美術大学の彫刻学科に入学しました。
あるとき、大学で「抽象彫刻を作ってください」という課題が出されます。しかしそれまで、筧さんは抽象について触れたことがほとんどなかったのでした。
写実とは、物をあるがままに描写することであり、誰にでも何がモチーフかがわかるものです。対して、抽象とは物を抽象化して作られた、ひと目見ただけでは何をモチーフにしたのか判別できないアートです。そして抽象は、現代アートの一つの鍵になっていくとのこと。
日本の美大受験では、写実表現によって評価されるため、筧さんはそれまで写実的な絵しか練習していなかったそう。
筧さんは、課題のため抽象について調べているうちに、『二十世紀のアメリカで一番重要』とされる絵を目にします。それは、アメリカの抽象画家ジャクソン・ポロックの作でした。しかし、筧さんは、その重要性を全く理解することができなかったと言います。
「ポロックの抽象画を私の家族に見せると、『これはひじきの煮物?』と言われます(笑)。パッと見では当時の私にも意味がわからなかったです。
しかし、これが『二十世紀のアメリカ絵画で一番重要』とされるならば、その理由を知らなければならない。でなければ、私はこのアートの世界の価値観を理解できず、アートの世界で生きていけないだろうと感じました。」(筧さん)
そうして、現代アートを理解するために、筧さんは別の大学に入り直し、ポロックを研究することになります。なんと12年間研究を続け、『ジャクソン・ポロック研究――その作品における形象と装飾性』という博士論文を書き上げたのです。
「現代アートは、勉強をしないと、わからない世界です。感じることもできますが、知識を持つことでより楽しむことができます。」(同)
後編ではいよいよ、筧さんに現代アートの世界を案内してもらいます!
筧菜奈子さんウェブサイト
Think School 自己紹介note
https://note.com/think_henshubu/n/n1eb3d405e539
(文:企画2期 加藤慶子/写真:制作1・2期 岩﨑麗奈/編集:企画2期わたなべひろみ)
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