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【英文法の小径】現在完了形〈時制〉余話・その二

前回からの続きで、現在完了形[have + 過去分詞]の本質的な意味/機能とは何かという話。

現在完了形については、いわゆる4用法とは別に、次のような説明をよく目にする。

過去のことを表すだけでなく、それを現在に結びつけて表す
過去の出来事を現在との関連において述べる
過去の出来事や状態が、なんらかの点で現在とつながりを持っていることを示す

他にも「過去の事柄を何らかの意味で現在と関わりがあるものとして述べる」など。ただ、この「現在とのつながり」という概念は、いささか漠然としてはいないだろうか。その内容をもう少し明確化して、ここでは現在完了形の機能を、次のように仮定してみる。

過去に(=発話時より前に/までに)起こって完結した出来事によって、何らかの影響を受けた状態、あるいはその過去の出来事によって説明できる状態が現在(=発話時)に存在していることを表す

「現在とのつながり」をこのように言い換えた上で、完了・結果・継続・経験を表すとされる例文を改めて見てみよう。

a.  I've finished my essay at last!
b.  John has repaired the chair.
c.  I’ve had this briefcase for ages.
d.  Ann has seen the film eight times!

現在完了形が示唆する「現在とのつながり」は、実際には、前後の文脈やその場の状況によって判断するしかない。ここでは、そういった context や situation 抜きで、各例文の「現在とのつながり」の例を記す。

a.  ようやくレポートを書き終えた(から、晴れて自由の身だ)
b.  ジョンが椅子を修理してくれた(ので、座ってもだいじょうぶ)
c.  長年このカバンを使っている(ので、だいぶいたんでいる/それくらい、このカバンが気に入っている)
d.  アンはあの映画を8回も観ている(から、ストーリーとかキャストとか、たいていのことは知っている/それほど、あの映画が好きなんだ)

完了・結果・継続・経験といった区別をする前に、「現在とのつながり」を具体的に(=現実的な場面を想定して)考えてみることが、現在完了の感覚を身につける上では欠かせないのではないだろうか。


現在完了形の本質的な意味/機能に加えて忘れてはならないのは、現在完了形を使用する話し手の意識の背景にはいつも、過去から現在=発話時までの時間の広がりがあるということだろう。

過去分詞以下で表される事柄は、この時間の広がりにおいて生じたこと、現在までのどこかの時点で起こったこととして捉えられている。

そして、生じたのがいつのことにせよ、その事柄は現在までに完結していて、少なくとも話し手の発話時の意識においてはキリがついているのだ。

e.  Tom has lived here for three years.

「継続」を表すとされる現在完了形の文は、今もその状態が続いているという読みがふつうだけれど、厳密に言えば、文中に示されている一定期間によって限定された/区切られた状態自体は、話し手の意識のなかでは発話の時点で終わっている、とりあえずキリをつけられている。

「今もそうである」ということは、[have + 過去分詞]という形式そのものにとっては、あずかり知らぬこと。e. のような文が「今でもその状態が継続している」と解釈されるのは、そう考えるのが自然だからだが、あくまでも含意にすぎない。

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