[いだてん噺]テニス大会

岡山高等女学校に入学した絹枝は、父の教えを守り勉学に勤しむ。
一番好きな科目は歴史と生物で、最も嫌いな科目は英語と数学だった。

一学期の成績について、絹枝は自著で書いている。

英語は八十点、歴史は百点、講読は九十点・・・ただ数学は何の誤りか三十点の落第点でした。

「人見絹枝―炎のスプリンター (人間の記録)」より 

二学期に入り、県のテニス大会が近づくにつれ、岡山高等女学校の校庭は軟式テニスの練習でにぎわっていった。
当時、女学生の課外活動として軟式テニスがもっとも人気があり、岡山県内では、絹枝の通う岡山高等女学校と岡山女子師範学校の2校が覇を競っていた。

昨年、決勝戦で岡山高等女学校は岡山女子師範学校に敗れており、今年はそのリベンジ戦であるため、余計に熱が入っていたのだ。

大会当日は絹枝も岡山高等女学校の応援に出かけている。
しかし、絹枝らの応援の甲斐もなく、岡山高等女学校は準決勝で敗退する。

その夜、絹枝は各校の選手の活躍を思い浮かべては、自分も早く選手になりたいと思わず口にするのだった。

翌朝、岡山高等女学校は昨日の大会の話でもちきりだった。

 母校選手を労わる人、誹(そし)る人、応援の馬鹿らしさを叫ぶ声。私は唯、黙ってこれら人たちの言葉を聞いていました。
 勝てば褒める、負ければ誹(そし)る。それはあまりに同情のない態度だ。昨日戦い終わってからの母校選手の淋しい姿を見ていた人が幾人いたろう。
 敗北に泣くあの母校選手の心中はどうであろう。岡山県立岡山高女の名の下に、全力を尽くして力戦した母校選手を、どうして誹(そし)れよう。

「人見絹枝―炎のスプリンター (人間の記録)」より 

その一方で、自分の力で岡山高等女学校を優勝させ、先輩たちの屈辱をそそぎたいという気持ちがわき上がって来るのだった。


■参考資料
●『二階堂を巣立った娘たち』 勝場勝子・村山茂代:著
●『人見絹枝―炎のスプリンター (人間の記録)』人見 絹枝:著、 織田 幹雄 ・戸田 純:編集
●『1936年ベルリン至急電』   鈴木明:著
●『オリンピック全大会』       武田薫:著
●『陸上競技百年』       織田幹雄:著

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はーぼ
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