時代考証無視SS「乱歩さんと正史くん」 その2 ~正史くん、金田一氏と会う(1,956文字)~
※このSS(二次創作)まがいは、ちょっぴりの事実をベースにしたフィクションであり、実在の人物とはなんら関係がありません。仮に同姓同名の方がいてもその人物の性格はまったく異なります。
※「本陣殺人事件」・「エンジェル家の殺人」のネタバレがあります。未読の方は読まないでください。
以前、横溝正史について書いた気がするなぁ・・・と思って過去記事を見て行ったら、えらく前に書いてましたYO!Σ(゚ω゚ノ)ノ
このまま放置したままだと両巨匠に申し訳ないので、1年8か月以上ぶりにその2を。両巨匠のファンのみなさんは暖かい目で見てやってください😅
太平洋戦争がはじまった後のことー。
正史くんは、乱歩さんの家を訪れます。
「乱歩さん。頼まれてたジャガイモを持ってきましたよ(⦿_⦿)⊃🔲」
「すまないねぇ、正史くん。近頃はジャガイモも、なかなか手に入らなくてね。助かるよ(´・ω・`)」
「いえいえ、僕の住んでいる吉祥寺の家からそんなに遠くないところに、農家がそれなりにあって、ジャガイモは割と入手しやすいんです (⦿_⦿)」
「そうかね。しかし、早くこの戦争が終わって欲しいものだ。でないと私は探偵小説が書けないよ。その点、正史くんは捕り物帖が書けるから羨ましいよ(´・ω・`)」
「いやー、捕り物帖もいつまで書けるかわかりませんよ。でも戦争に関係なく、乱歩さんには、探偵小説を書いてもらえなかったような気がするなぁ・・・(⦿_⦿)」
「編集者時代の恨みをまだ私に持ってるのかね?正史くん(´・ω・`)」
「あ、そうだ、乱歩さん。実は僕、この戦争が終わったら、ひとつ本格探偵小説を書いてみようと思ってるんです(⦿_⦿)」
「変なフラグ立ててない?。しかし、本格探偵小説を嫌っていた正史くんがねぇ(´・ω・`)」
「本格探偵小説って、無味乾燥で窮屈なものと思っていたんですけど、実はその中にロマンがあるって、最近わかりかけて来たんですよ(⦿_⦿)」
「それはいいけど、本格探偵小説を書くのなら、珍しい名前の人物を犯人にするクセは直したまえよ。正史くんの書く小説の犯人はだいたい珍しい名前の人物だからね(´・ω・`)」
「え、そうでしたっけ?∑(⦿_⦿ノ)ノ」
「そうだよ。気が付いてなかったのかい?(´・ω・`)」
「え~、じゃあ、あれはボツだな(⦿_⦿)」
「あれって?(´・ω・`)」
「いえね、僕の町内に、金田一という珍しい名前の人が引っ越してきたので、今度、犯人の名前に使わせてもらおうと・・・(⦿_⦿)」
「だからそのクセを直したまえと言ってるだろう(´・ω・`)」
「じゃあ、探偵役の名前にでも使います(⦿_⦿)」
「極端だね、正史くんは。しかし、金田一という姓とは、その人はアイヌ語研究で有名な金田一京助先生なのかい?(´・ω・`)」
「いえ、ちょっと違います。その金田一さんに聞いたら、金田一京助先生の弟さんだとか (⦿_⦿)」
「ほぉ、そうなのかね・・・。ああ、そうだ、ジャガイモのお礼と言ってはなんだが、わたしが最近読んだ面白い本格探偵小説を貸してあげよう(´・ω・`)⊃🔲」
「ロジャー・スカーレット作『エンジェル家の殺人』・・・?(⦿_⦿)」
「うむ、被害者しかいないはずの移動中で密室状態のエレベーターの中で刺殺事件が起きるという話なのだが、このトリックがなかなか面白かった。なにかの参考になればと思ってね。英語の原書だが、正史くんなら読めるだろ(´・ω・`)」
「はぁ・・・どうも・・・(⦿_⦿)」
その後、乱歩さんから借りた『エンジェル家の殺人』を読んだ正史くんはというとー。
「・・・この程度の探偵小説が面白いだなんて言うから、だから乱歩さんはダメなんだよなぁ。カーの『黒死荘の殺人』に遠く及ばないじゃん(⦿_⦿)」
などと、ずいぶん失礼なことを思っていたりするのでした。
やがて戦争が終わり、かねての願いどおり、正史くんは本格探偵小説『本陣殺人事件』を書き、戦後の本格探偵小説の黄金時代の幕を切って落とします。その小説で描かれた探偵役の青年の名前は金田一耕助でした。
(ちなみに金田一耕助の風貌などは、劇作家の菊田一夫氏がモデルになっているそうです)
乱歩さんは、『本陣殺人事件』を評論で、この作品のトリックは、英国作家コナン・ドイルの、ある有名作品から着想を得たのだろうと推測しています。
しかし、それを読んだ正史くんは、
「・・・あれぇ?『本陣殺人事件』のトリックは、乱歩さんから借りた『エンジェル家の殺人』のトリックに触発されて発想したのになぁ。乱歩さん、僕に、本を貸したことを忘れちゃったのかな?(⦿_⦿)」
などど思うのでした。
さんざんけなした探偵小説「エンジェル家の殺人」のトリックから発想して、代表作のひとつとなる小説のトリックを思いつく、ちゃっかりした正史くんなのでした。