[ミステリ感想]『フランス革命殺人事件』(著:磯部 立彦)[1492文字]
半年ほど前に、宮園 ありあ氏のフランス革命前夜の時代を舞台にしたミステリ、『ヴェルサイユ宮の聖殺人』の感想を書かせていただきました。
その際に、『この時代を取り上げた日本ミステリーはボクの記憶にはなく』と、エラソーに書いたのですが・・・・ありましたわ!しかも、40年も前に! ∑(⊙∀⊙)。
それが、タイトルもずばりの『フランス革命殺人事件』(著:磯部 立彦)です。
作者の磯部 立彦氏のデビュー作です。
尚、現在は筆名を磯部 慧とされています。
(磯部慧氏は『磯部昌美』氏と『鈴木Pico』氏の二人の合作ペンネームです。現在、コンピュータシステムを開発する株式会社グッドフェローズの経営も共同でされているそうです)
さて、物語はルイ16世の処刑から幕を開けます。
おぉ、いかにもという書き出しにゾクソクしますね。
そうか、ルイ16世は一票差で処刑が決まったのか・・・ (⦿_⦿)。
ルイ16世の処刑の場面から始まり、王妃マリー・アントワネットとルイ15世の公妾デュ・バリ伯爵夫人の処刑までの間に、タンプル獄で起きた連続殺人事件の謎が、探偵役を務めるラウル・フェルタン子爵(架空の人物)の推理によって解き明かされる歴史ミステリです。
210ページの小説に、「王妃の首飾り」の行方や、暗躍するサド侯爵一味など、少々話を盛り込み過ぎた嫌いもあり、やや読みにくい箇所もあり、また場面描写が理解しにくい箇所もあったりします。
また、時代小説であり同時にミステリでもあるのですが、探偵が連続殺人事件の捜査にのめり込んでないため、あれ、これミステリだよね、もっと犯人捜査しないの?(⦿_⦿)とか思うこともありました。
なので、小説のラスト近くで犯人の正体が判明しても、やや唐突感がありましたが(⦿_⦿;)。
とはいえ、実に奸智にたけた冷酷な犯人のセリフは、読んでいてゾクリとくるものがありますし、なにより、優れた歴史ミステリの条件のひとつ、舞台にした時代設定だからこそ成立する事件となっており、その意味においては十分に読み応えのある作品でした。
時期的にはこの少し後、ナポレオン帝政の時期を舞台にした、ディクスン・カーの歴史ミステリの傑作「喉切り隊長」もあっと驚く真相でした。
流石にカーの名作『喉切り隊長』の衝撃のラストに比べると、ちょっと分が悪いですが、『フランス革命殺人事件』もまた、飛び切りのラストを用意してくれています。(10年後くらいを舞台にした続編が書けそうな感じですが、書かれてないですね🤔)。
この時代&ミステリ好きにはお勧めしたい歴史ミステリではありますが、どうもこの『フランス革命殺人事件』、古本として市場にあまり出回ってないようです。
アマゾンでは、現在取り扱われていませんし、日本の古本屋さんで検索しても見つかりませんでした(メンテナンス前に検索したのですが)。
図書館で取り寄せしてもらって読めたのですが、あまり流通していないことも、この作品の存在があまり取り上げられていない理由のひとつなのでしょうか🤔。東京創元社から文庫本化して欲しいところですね。