【歴史のすみっこ話】漢字、危機一髪7~報告書文章改ざん依頼~[1515文字]
1948年(昭和23年)8月に実施された「日本人の読み書き能力調査」ではどのような問題が出されたのでしょうか。
その一端は、『戦後日本漢字史』(著:阿辻哲司)から、うかがい知ることができます。
この調査の結果、満点をとったものは全体の4.4%。
不注意による誤りを考慮して満点をとれたと思われるものを加えれば、全体の6.2%が満点をとったものと思われます。
一方、ゼロ点(白紙の者、回答がひとつも正解しなかった者)は1.7%。
「かな」は書けるが漢字は全く書くことができない者は全国民の約2.1%
と推定されました。
この結果と分析内容は報告書にまとめられ、提案者であったCIEの、世論社会調査課長ジョン・キャンベル・ペルゼルへと伝えられました。
具体的にいつと、日にちを特定できませんが、この「日本人の読み書き能力調査」の出題を担当した東京大学助手の柴田武氏は、ジョン・キャンベル・ペルゼルから呼び出しを受けます。
柴田氏は以下のように語っています。
要するに、調査の結果が良すぎたのでした。
阿辻哲司によれば、漢字の読み書きができない人の割合が全国民の2.1%という推定値は、世界中でも低い数字なのだそうです。
これでは漢字を廃止してローマ字表記を推進することはできない、そう考えたペルゼルは、報告書の文章の改ざんを、依頼したのでした。
(数値を改ざんするのではなく、分析結果の文章表現の改ざん依頼──日本人は漢字が『うんとできない』と表現するようにという──だったようです)
にわかに信じがたいことですが、当事者の柴田武氏がそのように語っています。
尚、ペルゼルから報告書の文書改ざんを依頼された柴田武氏は、ローマ字論者でもありました。
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