「光る君へ」への長い道のり ~『第44回 「望月の夜」振り返り』(その2)(ネタバレ)~[3510文字]
大河ドラマ「光る君へ」 第44回『望月の夜』 の振り返り、その2です。
※以下より、第44回のストーリーを記述しています。未視聴の方は先に第44回をご視聴ください🙇。
■[第44回『望月の夜』 振り返り]その2
ナレーション:「敦明親王を東宮とすることと引き換えに三条天皇は譲位を承諾した。翌年、大極殿において、後一条天皇の即位式が執り行われた」
長和五年(1016年)ー。
ナレーション:「道長は幼い後一条天皇の摂政となって、名実ともに国家の頂点に立ち、彰子は国母となった」
土御門殿ー。縁に立ち夜空を見上げる穆子〔石野真子〕と倫子〔黒木華〕。
穆子「我が家から、帝が出るなんて」
倫子「彰子を入内させた時は、どうなることかと思いましたけど」
穆子「道長様は、大当たりだったわ。私に見る目があったからよ」
笑い合う穆子と倫子。
穆子「我が家から、帝が出るなんて‥‥」
倫子「母上。もうお休みなさいませ」
穆子「そうね」
為時〔岸谷五朗〕の屋敷ー。夕げを摂る為時、まひろ〔吉高由里子〕、賢子〔南沙良〕。為時が汁をこぼす。
賢子「あっ、おじじ様」
為時「ああ‥‥。すっかり老いぼれてしまったな。ハハハ」
賢子「しっかりしてください」
為時「ああ、いかんいかん」
こぼした汁を拭く為時。
為時「賢子も立派に育ったし、まひろも内裏で重んじられておる。いとには福丸もおる。そろそろ、わしは出家いたそうと思う。余生はちはやと惟規の菩提を弔いながら、過ごしたい」
為時を見ているまひろ。
賢子「出家したら、おじじ様は、お寺に行ってしまわれるのですか?」
為時「世を捨て切るわけにではないゆえ、寺には行かぬ」
賢子「じゃあ‥‥。何も変わらないではありませんか」
為時「賢子は、じじが遠くの寺に行ってしまった方がよいのか?」
賢子「そんなことは言っていません」
為時「賢子は、ずっとじじのそばにいてもよいが、母上のように、内裏に上がることは考えぬのか?よい女房になりそうだがのう」
そっと賢子を見るまひろ。
縁に座る為時とまひろ。
為時「わしは官人には向いておらなんだゆえ、皆には苦労のかけ通しであったな」
まひろ「そのようなことはございませぬ。越前での父上のご誠実なお仕事ぶり、感じ入りました」
為時に向き直るまひろ。
まひろ「父上。長らく、ご苦労さまでございました(頭をさげる)」
為時「うむ」
月を見る為時。強く、せつないまなざし。
内裏、清涼殿ー。御簾の奥に後一条天皇。傍らに控える道長〔柄本佑〕。
道長「(後一条天皇の耳元でささやく)この一件は、今しばらく様子を見るのがよろしいと存じます」
後一条天皇「朕は、この一件、今しばらく様子を見る」
顕光〔宮川 一朗太〕「はっ(頭を下げる)」
実資〔秋山竜次〕「租税の減免を願い出ておる国には、施設を遣わすべきと存じます」
道長「(後一条天皇の耳元でささやく)遣わさずともよい。租税は減免せよ」
後一条天皇「遣わさずともよい。租税は減免せよ」
実資「ははっ(頭を下げる)」
* * *
道長に詰め寄る顕光。
顕光「あれもこれも変えては、皆の心が、ついてゆきませぬぞ」
道長「あしき先例は、速やかに改めて当然である」
顕光「あしき先例とは、決めつけが過ぎる!」
公季「まあまあ‥‥」
道長「公季殿は、どう思われる?」
公季「私も、顕光様に同意ではありますが‥‥。道綱殿は?」
道綱〔上地雄輔〕「え?あ‥‥は‥‥」
道長「お考えは、改めて陣定で詳しくお聞かせいただく」
立ち去る道長。
公季「いつまで陣定に、お出になるおつもりなのかのう‥‥」
土御門殿ー。
向かい合う道長と公任〔町田啓太〕。
公任「陣定で、皆の意見を聞きたい。それがなければ、政はできない。道長の中では、筋が通った考え方なのだろう。だが、はたから見れば、欲張りすぎだ。内裏の平安を思うなら、左大臣をやめろ」
道長「摂政と左大臣、ふたつの権を併せ持ち、帝をお支えすることが、皆のためであると思ったが‥‥それは違うのか?」
公任「違うのだ。道長のためを思って、言うておる。考えてみてくれ」
一礼し、去っていく公任。遠くを見るように、庭に目を向ける道長。
道長「(心の声)何度も、さきの帝に譲位を促したが、今度は俺がやめろと言われる番なのか‥‥」
つぼねで文机に向ったまひろー。足音がして道長が来る。
道長「暮れの挨拶に参った。(腰を下ろす)」
廻りを見回す道長。
道長「摂政と左大臣を辞そうと思う」
まひろ「摂政におなりになって、まだ1年にもなりませんのに」
道長「摂政まで上がっても、俺がやっておっては、世の中は、何も変わらぬ」
まひろ「頼通様に、摂政を譲られるのでございますか」
道長「ああ」
まひろ「頼通様に、あなたの思いは伝わっておりますの?」
道長「俺の思い?」
まひろ「民を思いやるお心にございます」
道長「ああ‥‥どうだろう」
まひろ「たったひとつの物語さえ、書き手の思うことは、伝わりにくいのですから、しかたございませんけれど‥‥」
道長「俺の思いを伝えたところで、何の意味があろう。お前の物語も、人の一生はむなしいという物語ではなかったか?俺はそう思って読んだが」
まひろ「されど。道長様が、この物語を、私にお書かせになったことで、皇太后様は、ご自身を見つけられたのだと存じます。道長様のお気持ちが、すぐに頼通様に伝わらなくても、いずれ気づかれるやもしれませぬ。そして、次の代、その次の代と、ひとりでなせなかったことも、時を経れば、なせるやもしれません。私は、それを念じております」
道長「そうか‥‥。ならば、お前だけは、念じていてくれ」
まひろをみつめる道長。廊下にむかい、頭をさげるまひろ。
道長も目を向ける。倫子が立っている。
倫子「お二人で何を話されていますの?」
道長「政の話だ」
倫子「政の話を、藤式部には、なさるのね」
倫子の前に立つ道長。
道長「皇太后様のお考えを知っておかねば、すんなりとは政はできぬ」
倫子「そうでございますわよね。藤式部が男であれば、あなたの片腕になりましたでしょうに。残念でしたわ」
道長「そうだな」
まひろ「恐れ多いことにございます」
道長「では」
まひろ「は」
ちらりと倫子を見て、去っていく道長。
倫子「藤式部に頼みがあって来たの」
まひろ「はい」
倫子「殿のことを書いてくれないかしら」
まひろ「は?」
倫子「清少納言が『枕草子』を残したように、我が殿の華やかなご生涯を、書物にして残したいのよ。やってくれるかしら?」
とまどうまひろ。
倫子「今すぐに答えなくて、よろしくてよ。考えてみて」
まひろ「は‥‥」
一礼するまひろの瞳がせわしなく、まゆがピクリとはねる。
ということで、長くなりましたので、『第44回「望月の夜」』の振り返り』その2は、その3へ続かせていただきます(´-`)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました🙇。