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【オチなし話】雑です、大坂さん4~大坂さんとドッペルさん(5/6)~

脇道のない通り抜けに道から。あたかも姿を消したろとしか思えない、大坂さんによく似たポニーテールの少女。

曰く、ドッペルゲンガーは忽然と姿を消す。

あの女の子、大坂さんのドッペルゲンガーなんだろうか・・・。
いやいや、いくらなんでも、それはないだろう。
と思うものの、実際に僕は女の子を見失ってしまった。
忽然と姿を消したかようにしか思えない状況下で、だ。

自分のドッペルゲンガーに会ったという芥川龍之介の都市伝説を以前、聞いたことがある。

夏のある日、散歩していた龍之介は、たまたま会った知人に「おや、先生。またお会いしましたね」と言われる。

「今日、会うのは初めてでしょう」と答えると、相手は「つい先ほど、お会いして挨拶したじゃありませんか」と答えたのだった。
 
暑さのせいか、勘違いをしているのだろうと思いながらも適当に答え、知人と別れ家に帰った龍之介を見て、住み込みのお手伝いさんが、「先生、つい先ほど、お出かけから戻られたのでは?」と驚く。
 
龍之介が「先ほど戻って来たという私は、今、どこにいるのかね?」と聞くと、お手伝いさんんは「2階に上がられて、書斎に入られましたが・・・」と薄気味悪そうに答える。
 
それを聞くなり龍之介は、急いで2階へと駆け上がり、自分の書斎のドアを開け、中に入ったのだった・・・・。

果たして龍之介が自分のドッペルゲンガーと会えたのか、また、会えたとして、どのような会話を交わしたのか、誰もわからない。
そして、その日の深夜、芥川龍之介は自らの命を絶ったという。

曰く、ドッペルゲンガーと会った本人は死ぬ・・・。

もしあの女の子が、ドッペルゲンガーだとしたら。
そしてあの女の子が大坂さんと会うような事が起きたら・・・。
背筋がゾッとする。

馬鹿々々しい。芥川龍之介の話はただの都市伝説だ。そんなことが実際にあるわけがない。
僕は自分にそう言い聞かせた。

*    *    *

釈然としないまま家に帰った僕は、当然のことながら、母に、何をやってたのあんたは、と問い詰められ、お小言をたっぷり頂戴する羽目になった。

ようやく解放され、2階の部屋に戻ろうとすると、今度は自分の部屋から顔を覗かせた妹の悠梨ゆりに呼び止められる。

「どう、お兄ちゃん。ちゃんと例の女の子と会えて、お話しできた?」

「いや、それが、消えちゃってさ・・・」

「え、消えた?」

「話せば長くなるんだけど」

「仕方ないなぁ、お兄ちゃんは」
悠梨ゆりはため息をつく。
「話を聞いてあげるから、手短に説明して」と僕の部屋に入ってきた。

東京にいた頃からだが、悠梨ゆりは、中学生になってから、僕を自分の部屋に入れようとはしなくなった。
そのくせ、僕の部屋によくやってくるのは理解に苦しむのだが。

悠梨ゆりは僕のベッドの端に座ると、さぁ説明して、とばかりに腕を組む。

僕は勉強机の椅子に座ると、先ほど体験した出来事の一部始終を話す。

妹の悠梨ゆりには、助言をしてもらった手前もあり、正直に全部を話した。

「はぁ・・・。何をやってんのよ、お兄ちゃんは・・・」
大きく嘆息たんそくをつく悠梨ゆり

「お兄ちゃん、わたしは会ってちゃんと話してみたら、って言ったよね」
悠梨ゆりは僕をジト目で見て言う。
虫を見る目とは、こういう目をいうのだろうか、と思った。

「だってさ、もしあの子が大坂さんだったら気まずいだろ。一緒に学校に行ってるのにさ。っていうか悠梨ゆり、虫を見るような目で僕を見るのはやめてくれ」

「そんな目、してない。強いて言うなら、カフカの『変身』の主人公グレゴール・ザムザの、変身後の姿を見るような目というか」

「虫よりもっと酷くないか、それ」

「だってお兄ちゃん、キモイよ。気を付けないと、そのうち本物のストーカーになっちゃうんだから」

どうやら僕は、現時点で本物じゃないストーカー扱いのようだ。
でもストーカーは確定なんだな、悠梨ゆり

「おまけに見失うなんて、ストーカーとして落第だよ」

僕にストーカー検定に合格して欲しいのか、お前?いやそんな検定ないけど

「見失ったんじゃないってば。消えたんだよ。まるでドッペルゲンガーのように」

僕が抗議の声をあげると、悠梨ゆりは、否定する。

「そんなわけないよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは自分の見たいものしか目に入らなかった、自分の聞きたいことしか耳に入らなかった、それだけだよ」

「言ってる意味がわからないんだけど」

「お兄ちゃん、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』、読んでみる?」

僕の問いかけを無視して悠梨ゆりが言うので、そんな分厚い本はいいよと、僕は拒否する。

「そっか、残念。結局、お兄ちゃんの独り相撲なんだよ。まぁ、そのうち、わかるんじゃないかな。あ、もう、ストーカーみたいなことしちゃだめだよ」

そう言うて、悠梨ゆりは僕の部屋を出て行った。
うぅむ。どうやら悠梨ゆりは、僕があの女の子を、僕の不注意で見失ったと思い込んでいるようだ。
しかし、それは違う(と思うんだけど)。
本当にあの子は、一本道の通り抜けから姿を消したとしか思えない。

「自分の見たいものしか目に入ってない、聞きたいことしか耳に入ってない、って何だよ」

悠梨ゆりが言った言葉の意味を、その時の僕は全く理解できていなかったのだ。

*    *    *

翌日、金曜の朝。
学校への道を、肩を並べて歩きながら、僕は大坂さんにさりげなく聞いてみる。

「ところで、大坂さんは、休みの日は、どこかに出かけてたりしてるの?」

大坂さんは、うーんと右手の人差し指を顎に当て考えるしぐさをする。

「以前は、友達と出かけたりしてたけど、ここんところは、ずっと家にいるかな?」

「そうなんだ。じゃ、じゃあ、昨日も?」

「昨日?そうやね、一日中、家にいたよ」

そうなると、昨日、僕が見失った(というか忽然と姿を消した)女の子は、大坂さんでははないことになる。
大坂さんが僕に虚を言ってなければ、の話だが。

「でも、どうして?」

そんなことを聞くの?とばかりに、大坂さんは不思議そうな目で僕を見る。

「え、えっと、いや、その・・・明後日の日曜日もそうなのかなって・・・」

慌てて言いつくろうと、大坂さんは、意味ありげな笑みを浮かべた。

「ほほぉ、東くん。それはつまり、明日、あたしと一緒にどこかに行こうか、というお誘いなのかな?」

え?自分の言った言葉を脳内で再生してみる。
大坂さんが、思いっきり自分に都合のいい解釈をすれば、そう受け取られなくもない気がするような、しないような・・・。

しかし、僕は明後日の日曜日、今度こそ、あのポニーテールの少女の正体を突き止めないといけない。

それは、もしやあの女子は大坂さんのドッペルゲンガーなのではないかという、心の中にあるもやっとした気持ちをすっきりさせたい、という思いからだ。それ以外には何もない、断じて。

「いや、お誘いなんて、そんなことは1ミリも思ってないよ」

「・・・そんなふうに否定されたら、なんか傷つく・・・そして、むかつく」

大坂さんが、ちょっと怒ったような目で僕を見た。

「東くん。いい機会やから言っとくけど。きみはもう少し、女の子の気持ちがわかるようにならんとあかん。そういうところやで、きみは」

あれ?僕、大坂さんに説教されてる?なんで?
それから、学校に着くまで延々と大坂さんに説教された。
母と言い、妹と言い、そして大坂さんといい、僕の周りにいる女性は、なぜこうも説教好きなのだろう、とずっと僕は考え、大坂さんの言葉は何ひとつ頭に入っていなかった。

*    *    *

そして、迎えた日曜のお昼。
僕は駅前で、数日前に忽然と姿を消したポニーテールの女の子が、三度、セントバーナード犬を連れて散歩にやってくるのを、手ぐすね引いて待ちかまえていた。

さすがに今度ばかりは、公衆電話ボックスの中に隠れるということはしない。
覚悟を決めて、悠梨ゆりの言う通り、直接会って話してみることにした。
とはいえ、その女の子になんと言って話しかければいいのだろうか。

先週の日曜日に道を教えてくれたお礼を言って、それとなく、名前とどこに住んでいるかを聞く・・・いや、それ、ストーカーっぽいというかストーカーそのものだよ。
悩んでいるうちに1時間近くが過ぎた。
そして未だに僕は、ひとりで駅前に立っている。

あれ?あの女の子、今日は姿を見せないじゃないか。どうして?
もしかして、僕が待ちかまえていることに気づかれた?まさか。

そしてさらに1時間が経過。しかし、一向に女の子の姿は現れない。

これじゃ、僕が彼女に待ち合わせをすっぽかされて、それでもなお、ひたすら彼女来るのを待ち続けている可哀そうな男の子みたいじゃないか。
道行く人からそう見られているような気がして、いたたまれない気持ちになる。

さらに30分、待ち続けたが、結局、あの女の子は姿を現さなかった。
人を待つということが、こんなにも疲れるものだとは思わなかった。

「もう帰ろう・・・」
これ以上待ってもあの女の子は姿を現すような気がしない。
僕はため息をついて、とぼとぼと家路へと向かう。

家路の途中、路線バスが僕を追い越し、200メートルほど先のバス停で止まった。何人かが降りてきたが、その中に既視感のある女の子がいた。

あれ?と僕は目をこらす。
さすがにセントバーナード犬こそ連れてはいないが、ポニーテールのヘアスタイルと大坂さんによく似た顔立ち。
それは紛れもなく先日、僕が見失った女の子だ。僕は思わず立ち止まった。

あいにくと周りには僕が身を隠すようなものはなにも無いが、幸いにして、女の子は僕の方を振り向くことなく、そのまま前を歩いて行く。
もしかして、自分の家に帰るのかな?

これは好機だ。ここで会ったが百年目。いや会ってないけど。
とにかく僕は距離をとって、女の子の後をこっそりとつけた。
悠梨ゆりがこのことを知ったら、また怒るだろうなぁと思ったが、今はそんなことを言ってる場合ではない。

毎日、大坂さんと待ち合わせをし、そして、さよならをしている場所を通り過ぎて、ようやく気がつく。
あの女の子が歩いてるのは、大坂さんが帰っていく方向と同じじゃないのか?

それから歩くこと10分程度。女の子は住宅街の中に入った。
僕は、急ぎ足で慌てて追う。
また見失ったら、ここまでつけてきた意味がなくなるのだ。

背後を全く気にすることなく、女の子は、しばらく住宅街の中の道を歩き、ある家の前で歩みを止めると、門を開けた。
僕は近くにある電柱の陰に身を隠し、そっと顔を出す。
もうストーカーに間違えられても、おかしくないような気がしてきた。

女の子は門を閉め、そのまま石段の上を歩き、デニムのポケットから取り出した鍵でドアを開けて、家の中に入って行く。

ここがあの子の家のようだ。僕は、門の前まで行って表札を見た。
「大坂」と書かれている。

え?ここ、大坂さんの家?じゃ、あの子、もしかして、大坂さん?
ということは、理由はわからないけど、大坂さんは僕に嘘をついていた?
僕の頭の上に?マークが無数に浮かぶ。

その時、背後から声がした。
「あれ、東くん?」

驚いて振り向いた。ビニールの袋を持った、大坂さんが不思議そうに立っていた。

「お、大坂さん!どうしてここにいるの!」
「いや、それ、あたしのセリフなんやけど。東くんこそ、なんであたしの家の前にいるん?あたし、東くんにまだ住所は教えてなかったよね?」

「いや・・・あの・・・。ほら、僕、引っ越してきてばかりだから。少しはこのあたりの道も覚えておこうかなと思ってあちこちと歩いていたら、見覚えのある名前の表札があって・・・」

我ながらものすごく苦しい言い訳だと思ったが、大坂さんは割とすんなりと信じたようて、ああ、そうなんだと頷く。
いや最近は物騒だから、少しは疑った方がいいよ。

「そ、それより、大坂さん、今日はずっと家にいるって、この前、言わなかった?」

「近くのスーパーに買い物くらい行くよ。ほら、タイムセールでなんと卵が半額」
と、戦利品の卵が入っているであろうビニール袋を持ち上げ、主婦じみたことを言う大坂さん。

「ま、せっかく会ったんだから。お茶でも飲んでいく?あ、今、家には誰もいないから、気にしないでええよ」

いや、誰もいない家に同級生とはいえ、男の子を誘うって無防備すぎでしょう、大坂さん。

違う、そうじゃない。誰もいないじゃなくて。いるから、この家に!

大坂さんは知らないだろうけど、ついさっき、大坂さんによく似た女の子が、ナチュラルに鍵でドアを開けて家の中に入って行ったんだから!

大坂さんは門を開けて中に入ろうをする。

これじゃ、まるで芥川龍之介の都市伝説と同じじゃないか。
僕は、思わず大坂さんのビニール袋を持っていた手を掴んだ。

「え?」
驚いて大坂さんが僕の方を振り向く。

「なに、東くん?」

「だ、ダメだよ!今、家に入っちゃ。ドッペルゲンガーがいるんだから」

「なに?そのドッペルゲンガーって?昔、流行ったロボットアニメ?」

大坂さんはドッペルゲンガーという言葉の意味を知らなかったようだ。
大坂さん、それはマジンガーだよ。ガーしか、かぶってないから。

「とにかく、家に入ったらダメなんだって」

「どうして東くんに、自分の家に入るのを止められちゃうのかな?」

大坂さんの声には少し不機嫌そうな響きがあった。
ですよね、僕も自分が大坂さんだったら、そう思います。

「不快に思うのはわかるけど。僕は、大坂さんを心配して言ってるんだって」

僕の言葉に、ハッとしたように大坂さんは顔を硬くした。

「・・・手を放してよ」

大坂さんが言った。今まで聞いたことのない低い声で。
その言葉で、僕はようやく、ずっと大坂さんの手を掴んでいたことに気づく。

「あ・・・ごめん」僕はパッと手を放した。

「あたし、東くんから、心配なんかされたくない!」

怒声に近い声だった。初めて見る大坂さんの怖い顔。

「東くんだけじゃない!お父さんからも、お母さんからも、お姉ちゃんからも!あたしはもう誰からも、心配なんかされたくないんや!」

その剣幕に、それってどういう意味・・・と、口にしたい言葉を僕は言い出せなかった。

大声を出したからだろうか。大坂さんはうつむき、ハァハァと肩を上下させている。

「あ、あの・・・大坂さん・・・」

とりあえず声をかけてみたが、あとに続く言葉が出てこない。
知らなかった大坂さんの一面を見たショックと、大坂さんをここまで感情的にさせたのは、僕としか思えないのだけど、その原因がわからず、僕は途方に暮れる。

「どうしたん、白詰草よつば。大きな声出して。なんかあったん?」
家のドアが開いて姿を現したのは、先ほど、家の中に入って行ったポニーテールの女の子だ。

「あ、ドッペルゲンガー」思わず、僕は叫んだ。

「誰が、ロボットやねん!」
ポニーテールの女の子が即座に言い返す。
いえ、それはマジンガーで、ほとんどかぶってませんから。
っていうか、大坂さんのドッペルゲンガーだけあって勘違いも一緒なのね。

「誰やの、きみ?。ウチの妹になにかしたん?ウチの妹と、どんな関係やの?」
ポニーテールの女の子が僕を睨みつけた。

え、妹?それじゃ、僕がドッペルゲンガーかもって思ってたのは、大坂さんのお姉さんなの?
でも、たしか今年からOLで銀行務めをされているのでは?
目の間のポニーテールの女の子は、どうみても僕や大坂さんと同じくらいの年にしか見えない。童顔ってレベルじゃないぞ。

「かんにん・・・」
感情の高ぶりが収まったのか、大坂さんが消え入りそうな声で言った。

「つい大きな声だしてしもうた・・・。かんにん、東くん」
大坂さんは僕に頭を下げて謝る。

「い、いや、僕が、その、大坂さんがなにか気を悪くするようなことを言ったみたいだし・・・。僕のほうこそ、ごめん」
僕もとにかく頭を下げた。

大坂さんは、気持ちを落ち着かせるためか、深く息を吸った。そして言った。

萌花ほのかお姉ちゃん、こちらは近くに引っ越してきて、今、一緒に学校に通ってるクラスメイトの東くん」
と大坂さんが僕を紹介してくれる。

「東くん、あたしのひとつ上の萌花ほのかお姉ちゃん。あたしたちと通っている学校は違うけど」

え、ひとつ年上のお姉さん?それ、初耳なんですけど。

「えーと、僕、大阪さんから、銀行でOLしてるお姉さんがいるって聞いたけど・・・」

「うん。それは長女の瑞樹みずきお姉ちゃん」

「で、あたしが次女の萌花ほのかお姉ちゃん」

と横から割り込んできた萌花ほのかさんは、大坂さんの肩に手をやって、

「ちなみに、こっちが三女の白詰草よつばやね」

萌花ほのかさん、よーく知ってますから、説明はけっこうです。

「でも、僕は大坂さんにお姉さんが二人いるって聞いてなかったけど」

「あたしもお姉ちゃんがひとりしかいないって言わなかったよ・・・。長女の瑞樹みずきお姉ちゃんのことを言ってから、次女の萌花ほのかお姉ちゃんのことを言おうとしたら、東くんが、いろいろと質問してきたし・・・。だから言う機会がなくなってもうたから・・・」

・・・えーと、確かにそういえば、そうだった・・・。あれ?悪いのは僕?

「・・・んーと、きみ。どっかで見たことあると思ってるんやけど、この前、駅前で道に迷ってて、今にも泣きそうになってた、あの子?」

萌花ほのかさんが言った。

「泣きそうになんかなってません!あの時はとても丁寧に交番への道を教えてもらって、どうもありがとうございます!」

「なんで、怒りながら礼を言うんや、きみは。けったいな子やね」

なんだろう。この二人、性格が似すぎじゃないだろうか?確かに年子の姉妹だけど。

萌花ほのかさんが、不意にパンと手を打った。

「立ち話もなんやし、お茶でもせえへん?ちょうど、この近所にいい喫茶店があるねん」

萌花ほのかお姉ちゃん。そやったら、ウチでコーヒーくらい淹れるけど」と大坂さん。

「それはあかんよ、白詰草よつば。あたしは一足先に病院から帰ったけど、じきにお父さんと瑞樹みずきお姉ちゃんが帰ってくるやろ。娘ふたりしかいない家に上がって、コーヒーを飲んでる男の子を見たら、お父さんがどう反応するか考えてみ。東くんも今日を自分の命日にしたくないやろ」

どんなにバイオレンスな人なんだよ、大坂さんのお父さんは。
とはいえ、確かにもっともな提案なので、僕と大坂さんは萌花ほのかさんを先頭に、連れだって、萌花ほのかさんお薦めの喫茶店へと向かうのだった。


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