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【歴史のすみっこ話】漢字、危機一髪4~戦前の常用漢字~[979文字]

1923年(大正12年)に、臨時国語調査会から発表された1963字種の「常用漢字表」ですが、その後、昭和の戦前の時代、さらに手が加えられます。

1931年(昭和6年)。
1963字種だった「常用漢字表」から、147字種を削り、新たに45字種が追加されました。

削られた漢字の中には、「兎」「烏」「熊」「狐」「狼」「猿」「鰹」「鼠」のような動物名、「李」「檜」「瓜」「粟」「芋」「莖」「萩」「蓮」のような植物名が含まれている。
仮名(片仮名・平仮名)で書いても「おかしくない」語は、そのようにすれば、その語に使う漢字を表から削ることができる。
「常用漢字の歴史 教育、国家、日本語」 著:今野真二 より引用

削られた漢字の例を見て、違和感を覚えられた方がいるかも知れません。

複雑すぎたりして国民の教育に支障が出るのを解消するための漢字の制限であるはずが、例としてあげられている削除された漢字は、平易であり日常生活においても使用される頻度の多い漢字に思えます。

1942年(昭和17年6月。
国語審議会
は、2528字の漢字からなる「標準漢字表」を文部大臣に答申します。
太平洋戦争が始まってから、約半年が経過していました。

「常用漢字」(1134字)・「準常用漢字」(1320字)・「特別漢字」(74字)からなる「標準漢字表」について、言語学者の阿辻哲次氏は以下のように指摘しています。

この「標準漢字表」は、社会で使用する漢字の種類(字種)を選定しただけでなく、いくつかの漢字について「簡易字体」の使用を認めた点でも、後世に大きな影響をあたるものとなった。
「戦後日本漢字史」 著:阿辻哲次より引用

簡易字体の使用を認める ── それは、78文字の漢字について、それまで略字・俗字と呼ばれていた漢字を正規の漢字として認定するとともに、64文字の漢字について正規の漢字と認定しないが一般文書での使用を認めるとするものでした。

正規の漢字と認定しないが一般文書での使用を認めるとした漢字の一例としては、以下のものがあります。(左側が正規の漢字です)。

 ー 仏
 ー 国
 ー 寿

ただし、「標準漢字表」は使用されずに、日本は終戦の日を迎えることとなるのでした。

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