「光る君へ」への長い道のり ~『第32回 「誰がために書く」振り返り』(その1)(ネタバレ)~[3131文字]
大河ドラマ「光る君へ」 第32回『誰がために書く』 の振り返り、その1です。
※以下より、第32回のストーリーを記述しています。未視聴の方は先に第32回をご視聴ください🙇。
■[第32回『誰がために書く』 振り返り]その1
寛弘二年(1005年)三月。
ナレーション:「一条天皇と亡き皇后 定子の遺児、脩子内親王の裳着が行われた。一条天皇の亡き定子への執着は強く、いまだ公卿に復帰していない伊周〔三浦翔平〕を大臣の下、大納言の上に座らせるように命じた」
座っている大納言の実資〔秋山 竜次〕と道綱〔上地雄輔〕の前に立つ伊周。
伊周「譲られよ」
道綱「えっ?ここに入るの?」
見下ろす伊周を睨み、座を譲る実資。
他の公卿らも下座にずれる。どっかり腰を下ろす伊周。
現れた道長〔柄本佑〕が脩子の傍らに座る。
「帝のお出ましでございます」
ひれ伏す一同。
ナレーション:「一条天皇は表向き、伊周の昇殿は脩子内親王の裳着に参列させるためとしたが、真の目的は道長への牽制であった」
脩子内親王のの腰ひもを結ぶ道長。
はい、ここで番組タイトルどーん (´-`) 。
為時〔岸谷五朗〕・まひろ〔吉高由里子〕の屋敷。
厨子に向い、手を合わせるまひろといと。ウグイスの鳴き声。
まひろ「暖かくなってきたわね。母上も春がお好きだった」
いと「そうでございましたね」
突然、物音がする。
きぬ「ああ、もう我慢できない!」
乙丸「俺が何をしたっていうんだよ」
きぬ「それも分っていないところが嫌なのよ。ケチ!」
乙丸「あっ。お方様‥‥」
いと「情けない顔をして、どうしたの?」
乙丸をまひろの前に引っ張るきぬ。
きぬ「この人、紅を買おうとしたら、そんな余計なものを買うなと言ったんですよ!私は京に来てから、紅もおしろいも一度も買っていないのに。だからもう私、越前に帰ります!」
まひろ「えっ‥‥。乙丸、そうなの?」
乙丸「私は‥‥こいつが美しくなって、ほかの男の目に留まるのが怖いのです。こいつは、私だけのこいつでないと嫌なのです」
きぬ「だったら、そう言えばいいじゃないか、うつけ!」
乙丸「ごめんよ」
きぬ「もう‥‥」
顔を見合わせるまひろといと。
部屋に戻るまひろにいとが話かける。
いと「お方様と亡き殿様も、よくけんかをなさいましたね。火取りの灰を投げつけたりなさって」
まひろ「そんなことあったかしら?」
いと「亡き殿様とお方様の大げんかであれに過ぎるものはございませんでした。あ‥‥せんだって左大臣様にお渡しになった物語はどうなりました」
まひろ「(文机に向って座り紙を広げて墨をする)あれからお返事はないわ。きっと帝のお気にめさなかったのでしょう」
いと「そうでございますか‥‥。よいお仕事になりそうでしたのに‥‥」
まひろ「でもあれがきっかけで、このごろ書きたいものがどんどん湧き上がってくるの」
いと「はあ‥‥」
まひろ「帝のためより何より、今は私のために書いているの」
いと「それはつまり、日々の暮らしのためにはならぬ、ということでございますね」
文机に向かったまひろ。一心に筆を走らせる。
物語を書くのに没頭しているまひろを見て、去っていくいと。文箱に溜まっていく、物語が綴らえた紙。
土御門殿ー。
ナレーション:「脩子《ながこ》内親王の裳着から数日後。道長は土御門殿で、漢詩の会を催し、伊周と隆家〔竜星 涼〕を招いた」
一同が控える中、座に就く道長。居住まいを正す伊周。
伊周「私のような者までお招きくださり、ありがたき幸せに存じます」
道長の顔色をうかがう隆家や公任〔町田啓太〕たち。
道長「楽しき時を過ごしてもらえれば、私もうれしい」
歌をしたためた紙が詠み手のものもとに集められる。
詠み手「儀同三司 藤原伊周殿。『春帰りて駐まらず 禁え難きを惜しみ‥‥』」
[枝は花を落とし、峰は視界を遮るように聳え、霞みは色を失う 春の装いはもろくも崩れて 谷は静かに 鳥のさえずりも消える 年月は移ろい わが年齢も次第に老けてゆく 残りの人生 天子の恩顧を思う気持ちばかりが募る]
廊下をゆく斉信〔金田哲〕と公任〔町田啓太〕と行成〔渡辺大知〕。
斉信「まことにけなげな振る舞いであったな、伊周殿は」
公任「いやいや、あれは心の内とは裏腹であろう」
斉信「そう思うか?」
行成「はい‥‥」
斉信「うっかり騙されるところだった」
公任「それより大したものだ、道長は」
行成「まことに‥‥」
斉信「帝が伊周殿にお心を向け始めておいでだが、私は全く焦っておりませんよ、というふう?」
公任「敵を拾い心で受け止める器の大きさだ」
内裏、清涼殿ー。一条天皇は道長を呼び、命じる。
一条天皇〔塩野瑛久〕「伊周を陣定に参らせたい。そのように皆を説き伏せよ」
道長「恐れながら、難しいと存じます。陣定は参議以上と定められておりますゆえ、誰かが見まかるか、退かねばありえませぬ」
一条天皇「そなたならば、いかようにもなろう」
道長「難しいと存じます」
一条天皇「朕の強い意向とすれば、皆も逆らえまい。されど、それでは角が立つ。異を唱える者も出よう。ゆえにそなたの裁量に委ねておる。朕のたっての願いだ。」
道長「難しきことながら、はかってみましょう」
一条天皇「よしなに頼む」
道長「お上。過日、差し上げた物語は、いかがでございましたか?」
一条天皇「ああ‥‥。忘れておった」
廊下を下がる道長。ため息をつく。
為時・まひろの屋敷ー。道長と向かい合うまひろ。
道長「帝に献上したあれは‥‥お心にかなわなかった」
まひろ「力及ばず、申し訳ございませぬ」
道長「落胆がせぬのか?」
まひろ「はい。帝にお読みいただくために書き始めたものにございますが、もはやそれはどうでもよくなりましたので、落胆はいたしませぬ。今は書きたいものを書こうと思っております。その心をかきたててくださった道長様には、深く感謝いたしております(頭を下げる)」
道長「それがお前がお前であるための道か?」
まひろ「さようでございます」
ほほ笑む道長。文机に向って、紙に物語を綴るまひろ。
まひろ「(心の声)『源氏の君は お上が 常におそばにお召しなさるので 心安く里住まいもできません。心の中では ただ藤壺のお姿を 類なきものなしと お思い申し上げ このような人こそ 妻にしたい この人に似ている人など‥‥』」
縁に座り、物語を読んでいる道長。
道長「(心の声)俺がほれた女は、こういう女だったのか‥‥」
文机に向かったまひろ。
ということで、長くなりましたので、『第32回「誰がために書く」』の振り返り』その1は、その2へ続かせていただきます(´-`)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました🙇。