「光る君へ」への長い道のり ~『第19回 「放たれた矢」振り返り』(その3)(ネタバレ)~[2980文字]
大河ドラマ「光る君へ」 第19回『放たれた矢』 の振り返り、その3です。
※以下より、第19回のストーリーを記述しています。未視聴の方は先に第19回をご視聴ください🙇。
■[第19回『放たれた矢』 振り返り]その3
為時〔岸谷五朗〕の屋敷ー。
文机に向かう為時にいとが話かける。
いと「また申文の季節になりましたんですね」
為時「嫌味か?」
いと「とんでもないことでございます。(頭を下げる)」
為時「どうせ駄目だと思いつつ、10年も申文を書き続けたが、今年を最後にいたそうかと思う」
いと「殿様・・・」
為時「泣くことはない。あれもこれも、人の世じゃ・・・」
庭に、まひろとききょう。
ききょう「新しい右大臣様には、望みは持てぬと思っておりましたが、それが案外、頑張っておられますの。疫病に苦しむ民のために租税を免除されたりして」
まひろ「そうですか・・・」
ききょう「それと若狭に70人も宋人が来たらしいんですけれど、若狭は小国ゆえ、何かと不都合だったらしいのです。そうしましたら、右大臣様が受け入れる館がのある越前に送るよう、帝に申し上げ、そうなったのです。素早いご決断に皆、感嘆しておりました」
まひろ「宋人とはどんな人たちなのでしょう?」
ききょう「さあ?」
まひろ「宋の国では、身分が低い者も試験の出来がよければ、政に関わることができるのだそうです。わが国では考えられないことです」
ききょう「そうですわね」
まひろ「私は身分の壁を蹴ることのできる宋の国のような制度を、是非、帝と右大臣様に作っていただきとうございます」
ききょう「あ・・・まひろ様って、すごいことをお考えなのね。そんなこと、殿方に任せておけばよろしいではありませんか。私はただ、中宮様のおそばにいられれば、それで幸せですので」
まひろ「中宮様・・・。ききょう様がそれほどまでに見せられる中宮様に、私もお目にかかってみたいものです」
ききょう「中宮様の後宮においでになりたいの?」
まひろ「それはもちろん、参れるものなら参ってみたいです」
ききょう「簡単ではありませんけれど、まひろ様は、面白いことをお考えだし、もしかしたら中宮様がお喜びになるかもしれません。お話してみますわ」
まひろ「まことでございますか?是非、お願いいたします!(頭をさげる)」
秋晴れの内裏。ききょうに導かれ廊下を進む、女房装束を身にまとい正装したまひろ。
まひろ「痛っ!」
足元にいくつかの鋲。
ききょう「何か踏まれました?こうした嫌がらせは内裏では毎日のことですの。お気になさらないで。私も3日に一度くらい、なにか踏みますので、足の裏は傷だらけです。でもそんなこと、私は平気です。(声を張り上げる)中宮様が楽しそうにお笑いになるのを見ると、嫌なことはみ~んな吹き飛んでしまいますゆえ!」
部屋の影で顔を寄せ合った女房たち。
庭を眺めていた定子〔高畑充希〕が座に戻る。
御簾に手を掛ける女房たちを定子は制する。
定子「下げずともよい」
ききょうと共にひれ伏すまひろ。ききょうが促す。
まひろ「お初にお目にかかります。まひろにございます」
定子「話は聞いておる。少納言が心酔する友だそうだな」
まひろ「いえ・・・。私の方こそ、少納言様には、たくさんのことを教わっております」
ききょう「まひろ様は和歌や漢文だけでなく、政にもお考えがあるようです」
定子「ほう~・・・」
そこに一条天皇が現れる。
定子「お上!」
ひれ伏すききょうとまひろ。
定子「今日、お上がお渡りになるなんて伺っておりませんでした」
一条天皇〔塩野瑛久〕「会いたくなってしまった」
定子の手を取る一条天皇。奥へ消えてゆくふたり。
ひれ伏したまま、せわしなく瞬きをするまひろ。
ききょう「ごめんなさいね。すぐお戻りだから、少しお待ちになって」
まひろ「どちらへいらしたのですか?」
含み笑いで顔を寄せるききょう。
ききょう「お上と中宮様は、重いご使命を担っておられますので」
まひろ「はあ・・・」
深く頷くまひろ。
しばしののちー。
定子「お上。この者は少納言の友にございます」
まひろ「正六位上 前式部丞蔵人 藤原為時の娘にございます」
定子「女子ながら、政に考えがあるそうにございますよ」
一条天皇「朕の政に申したきことがあれば申してみよ」
まひろ「私ごとき、お上のお考えに対し奉り、何の申し上げることがありましょうや」
一条天皇「フフ・・・。ここは表ではない。思うたままを申してみよ」
まひろ「恐れながら、私には夢がございます」
一条天皇「夢・・・」
まひろ「宋の国には、科挙という制度があり、低い身分の者でも、その試験に受かれば、官職を得ることができ、政に加われると聞きました。全ての人が、身分の壁を越せる機会がある国は、すばらしいと存じます。わが国もそのような仕組みが整えばといつも夢見ておりました」
一条天皇「そのほうは、新楽府 を読んだのか」
まひろ「『高者 未だ必ずしも賢ならず 下者 未だ必ずしも愚ならず』」
一条天皇「身分の高い低いでは、賢者か愚者かは、はかれぬな」
まひろ「はい。下々が望みを高く持って学べば、世の中は活気づき、国もまた活気づきましょう。高貴な方々も、政をあだおろそかには、なされなくなりましょう」
小さく微笑む帝。
定子「言葉が過ぎる」
まひろ「はっ。お許しを」
一条天皇「そなたの夢、覚えておこう」
まひろ「恐れ多いことにございます」
女房「伊周様、隆家様、お目通りにございます」
座をはずし、ひれ伏すききょうとまひろ。
伊周〔三浦翔平〕「仲よくやっておられるか拝見しにまいりました。中宮様には、皇子をお産みいただかねばなりませぬゆえ」
一条天皇「その方らも参内するようになったのだな。安堵した」
伊周「ご心配をおかけしたこと、お詫び申し上げます(頭を下げる)ところで(ひれ伏すまひろを見る)、この女は見慣れぬ顔でございますな」
ききょう「私の友にございます。今、下がるところにございました」
まひろ「本日は図らずも、帝のおそばに侍することがかないまして、一代の誉れにございました」
頭を下げ、さがるまひろとききょう。
隆家〔竜星 涼〕「あのような者をお近づけにならない方がよろしゅうございます」
一条天皇「面白い女子であった」
伊周「お上。どうせお召しになるのなら、女御になれるくらいの女子になさいませ。そうでなければ、中宮様に皇子をお授けくださいませ」
一条天皇「伊周はそれしか申さぬのだな・・・。もうよい。今日は疲れた。下がれ」
伊周「は(頭をさげる)」
伏し目がちな一条天皇をそっと見る定子。
ということで、長くなりましたので、『第19回 「放たれた矢」の振り返り』その2は、その3へ続かせていただきます(´-`)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました🙇。