【三寸の舌の有らん限り】[10]-児玉源太郎03-(1210文字)
近代軍事史を専門とする長南 政義氏は、著書「児玉源太郎」において、児玉源太郎の日露戦争における作戦指導に関する分析を行っている。
①戦争目的
②進軍限界・③戦争終結
そして、児玉源太郎の戦争理解についてー。
児玉源太郎のような軍人が昭和期の陸軍上層部にいたならば、歴史はどう変わっていたのだろうかー。
明治37年2月4日の開かれた御前会議で対ロシア開戦が決定した後、2月7日頃より、児玉源太郎は参謀本部に泊まり込むことが多くなったという。 その主たる理由は、作戦計画をさらに練り込み、精度を上げることであった。
金子堅太郎が児玉源太郎を訪ねて来たのはこの時期あたりであろう。
参謀本部に行くと、部屋の中央に児玉源太郎がおり、大勢の幕僚を集めて地図を広げたり、様々な書類を開けて研究をしていたと、金子堅太郎が語っている。
「君がアメリカに行くということを聞いて大いに安心した」
と児玉源太郎は言う。
「君は僕がアメリカに行くから安心したというが、僕がアメリカに行けばこの戦は勝てるか、君に聞くことがある」
金子堅太郎の言葉を受け、児玉源太郎は幕僚に対して、皆あちらに往くようにと言って遠ざけた。
金子堅太郎あらためて児玉源太郎に尋ねた。
「君は僕がアメリカに行くから安心したと言うが、僕はいっこう安心できない。ただいま山県さんに聞けば、君がすべて陸軍のことは計画していると言われたが、いったい勝つ見込みがあるのかどうか。第一にそれを聞きたい」
(続く)
■引用・参考資料■
●「金子堅太郎: 槍を立てて登城する人物になる」 著:松村 正義
●「日露戦争と金子堅太郎 広報外交の研究」 著:松村 正義
●「日露戦争・日米外交秘録」 著:金子 堅太郎
●「日露戦争 起源と開戦 下」 著:和田 春樹
●「世界史の中の日露戦争」 著:山田 朗
●「新史料による日露戦争陸戦史 覆される通説」 著:長南 政義
●「児玉源太郎」 著:長南 政義
●「小村寿太郎とその時代」 著:岡崎 久彦
●「明石工作: 謀略の日露戦争」 著:稲葉 千晴
●「ベルツの日記」 編:トク・ベルツ