見出し画像

[ラジオの時代]「西の風、晴れ」(906文字)

 ヒトラーが権力を掌握する以前(ヒンデンブルク大統領から、首相に任命される前ですね)、ナチ党が宣伝メディアとして使ったのは、ほとんどが新聞だったそうです。

 ところで、新聞に関して、ヒトラーは『我が闘争』の中で、新聞を読む層を、以下のように3分類しています。

 〇『読んだものを全部信じる人』
 〇『読んだものを全く信じない人』
 〇『読んだものを批判的に吟味し、その後で判定する頭脳を持つ人』

 『読んだものを全部信じる人』とは、一般大衆から構成される最大数のグループとしています。
 『読んだものを全く信じない人』は「数が少なく、取り扱いの難しい人々」のグループとしています。
 『読んだものを批判的に吟味し、その後で判定する頭脳を持つ人』は極めて少ない数のグループとしています。

 新聞によるプロパガンダの対象となったのは、数の多い『読んだものを全部信じる人』グループでした。

 政権掌握後は、ラジオが重要視されました。

 『19世紀は新聞であったが、20世紀はラジオである』

 『思想統一に最も有力な武器はラジオそのものに他ならぬ。‥‥放送は全国民が之を聴いている。したがって、我々はラジオを通じて、農民にも労働者にもまた一般市民にも呼びかけることができる。‥‥即ち、今日の政治はラジオを必要とし、またラジオは政治を必要とするのである』

 上のふたつは、ゲッペルスの言葉です。

 現在なら、ラジオに代わるものは何になるのでしょうか🤔。

 それはさておきー。

 1941年(昭和16年)12月8日早朝
 日本放送協会の海外向け放送で、乃木希典陸軍大将の詩吟の放送後に、突如として天気予報が流れました。

 『ここで天気予報を申し上げます。
  西の風、晴れ。西の風、晴れ。
  天気予報を終わります』

 この天気予報ですが、実は在外大使館にむけられた外務省の暗号放送で、『西の風、晴れ』とは、『日米開戦す。在外公館は、すべての重要機密書類を焼却せよ』という意味なんだそうです。


■引用・参考資料

 〇「君は玉音放送を聞いたか ラジオと戦争」秋山 久:著
 〇メディアの帝国 一 ナチズムの文化政策と政治美学 田野 大輔:著
kjs_007_063.pdf

いいなと思ったら応援しよう!

はーぼ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?