[日々是読書]『秘仏の扉』著:永井 紗耶子[763文字]
思ったより早く図書館で借りれました。もっとも次の人の予約があるので、早く返さないといけないので、これから返しに行ってきます (⦿_⦿) 。
廃仏毀釈の嵐が吹きすさぶ明治時代。
秘仏、法隆寺夢殿の救世観音像を守らんとして固く閉ざされた扉を開いた、岡倉天心、フェノロサたちが秘仏と対面した時、心にした思いとはー。
『秘仏の扉』は、長編小説ではなく、秘仏開帳に関わった6人の男たちの、秘仏開帳前と秘仏開帳後のそれぞれの人生を描いた短編集です。
以下の様に各短編でフォーカスされる人物が異なります。
●『光の在処』 ⇒ 写真師・小川一眞
●『矜持の行方』⇒ 宮内省図書頭・九鬼隆一
●『空の祈り』 ⇒ 法隆寺住職・千早定朝
●『楽土への道』 ⇒ アーネスト・フェノロサ
●『混沌の逃避』 ⇒ 岡倉天心
●『千年を繋ぐ』 ⇒ 後の東京国立博物館初代館長・町田久成
さきにも書いたように、六人の男たちの人生がそれぞれの短編で語られますが、秘仏開帳で6人それぞれの人生が交差します (⦿_⦿) 。
各短編でそのシーンが重複しますが、フォーカスする人物が異なるので、それぞれ何を思ったのか、発した言葉の意味などがわかり、面白い書き方だなぁと思います (⦿_⦿) 。
女性問題で色々とありそうな九鬼隆一、岡倉天心などですが、決して嫌われるような描き方はされておらず、むしろ揺れ動く弱い心を持つ人間として描かれていることに好感をもちます。
秘仏を開けられる側の法隆寺住職・千早定朝にスポットが当たった『空の祈り』が唯一、法隆寺内部の者としての視点の物語で、当時のお寺の置かれていた状況が垣間見えて興味深かったです。
歴史の偉人たちとしてでなく、実に人間臭く描かれた彼らが交差する秘仏開帳、そしてその後。奥行きのある物語でした(⦿_⦿)。