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「歴史をめぐる旅行記: 奥の枝道 其の六 京都・神社仏閣編(下) レキジョークル」感想[2337文字]
『歴史をめぐる旅行記: 奥の枝道 其の六 京都・神社仏閣編(下) レキジョークル』 が、アマゾンにて発売中です。
シリーズ 6作目は「京都・神社仏閣編(下) 」。前作からひき続き、京都の神社仏閣などにフォーカスした歴史紀行エッセイです。
尚、本書で取り上げられているのは、松尾大社、桂離宮、渡月橋、平等院鳳凰堂、梅小路公園、京都御所、賀茂御祖神社、天龍寺、斬善治・永観堂などです。
では、さっそく感想を――。
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「奥の枝道」シリーズにおける特長のひとつとして、明快なわかりやすさがあります。
それは綿密に調査したであろう史実の解説にとどまらず、著者の千世さんが自分の見解を述べる史実の解釈などを平易な表現で、分かりやすく書かれています。
歴史関連の本は難しいと思われる方も多いと思いますが、本書は決してその敷居は高くないのです。
そして歴史だけではなく、「レキジョークル」のメンバーとのやりとり、お約束のハプニングやグルメなども含めて、エンタメとしてどなたにも楽しんで読んでいただけるエッセイなのです😌。
本書には5つの紀行、■嵐山、■紅葉企画、■出町柳、■嵐山~亀岡、■琵琶湖疎水が収められています。
最初に琵琶湖疎水で書かれている以下の文章を引用させていただきます。
今回の「琵琶湖疎水をゆく」の趣旨は、景色を堪能することは二の次で、京都府民の希望の水路にまつわる歴史と労力、さらにはそれを活用して京都発展の礎となった経緯を知るために来たのです。
所用時間のほとんどがトンネル内だと言っても、そのトンネルこそが人々の血と汗と努力の賜物であったと思うべきなのです。
これは琵琶湖疎水の一部(大津から山科まで)を観光船に乗って進む中で、所要時間30分中20分がトンネルの中で3500円は・・・と思った千世さんが思考を切り替えた際に思ったことです。
タイパ・コスパは重要ですが、歴史紀行においては、それだけが決してすべてではないということを的確に言い表していると思います。
歴史紀行の奥深さを教えてくれる言葉です。
さて、嵐山では、桂離宮のついでに立ち寄った松尾大社から歴史紀行は始まります。
「松尾大社」は、文武天皇の勅命を賜わった秦氏[はたうじ]の首長、秦 忌寸都理[はたの いみきとり]が社殿を建てたのが始まりだそうです。
『奥の枝道 其の二 大阪編』で、詳細が書かれている謎多き秦氏[はたうじ]が、思いがけず?再登場です。
因縁ある?秦氏[はたうじ]は、今後のシリーズにも、登場するのではないかと思っています😆。
「松尾大社」に続いて、最初の紀行のメインとなる「桂離宮」は、『源氏物語』で主人公・光源氏の別荘として登場するそうです。
その流れであまりなじみのない公家社会の家格についてわかりやすく解説してくれます。
同時に宮内庁の効率化されていない仕組みについて、誰もが思うであろう素直な気持ち・提言がされていて、歴史紀行ばかりでない本書の特長が出ています。
紅葉のライトアップ観光がメインイベントの紅葉企画では、お昼のランチから始まり、宇治橋、そして源氏物語にまつわる話を書かれ、訪れた平等院鳳凰堂では「阿弥陀如来座像」とその作者の定朝[じょうちょう]について、自身の過去の体験も交えて、説明をしてくれます。
また梅小路公園では、京都水族館をきっかけとして、本書のテーマでもある京都らしさとはなにかと思いを馳せ、この日の紀行のメインイベント、紅葉のライトアップ「朱雀の庭」では、その幻想的光景に筆を尽くされています。(これを読んで観に行きたくなる人も、きっといることでしょう😆)
2020年8月の出町柳紀行は、感染症による外出規制を受け、例年なら活動しない夏の話となります。
感染症予防対策など、今からほんの3年半にも満たない過去のことなのに、記憶からすっぽりと消えてしまった当時の様子が垣間見えるのも、今回の紀行エッセイの特長と言えるでしょうか。
京都御所の紫宸殿から「お雛様」へ、「高御座(たかみくら)」と「御張台(みちょうだい)」から十二単へと、流れる様に話が広がって行き、次の目的地、世界遺産の「下鴨神社」(下鴨神社は通称で、正式名は賀茂御租神社[かもみおや じんじゃ])では、「上賀茂神社」(上賀茂神社は通称で、正式名は賀茂別雷神社[かもわけいかづち じんじゃ])との関係と祭神に関するエピソードは、天皇家にも深いつながりがあり、実に興味深い話でした🤔。
嵐山~亀岡紀行も、感染症による外出規制を受け、例年なら活動しない夏の話(出町柳から一週間後)となり、予期しない大アクシデントに見舞われ続ける紀行となっています。
アクシデントに見舞われるも、天龍寺を訪れ(ここでもまたアクシデントがありますが)、「がんこ寿司」のエピソードや、「麒麟が来る」大河ドラマ館では、大河ドラマ「麒麟が来る」に思いを馳せながら、大河ドラマ館の内容にダメ出しをする千世さんの筆は冴えます😆。
琵琶湖疎水紀行では、ボクは全く知らなかったのですが、明治維新後、廃れゆく京都を再生したのは、琵琶湖の水を京都にまで引くというアイデアだったことを教えてくれます。
そして最期に、古さを残しつつ新しいものを貪欲に取り入れ、バランスを保ちつつ発展を続ける京都への期待が語られて、本編は幕を下ろします。
以上、駆け足でエピソードを追っていきましたが、ここで書けなかったエピソードが多くあり、それらも含んで本書を読んでいただければと思います。
軽妙なタッチと多岐にわたる厖大な調査で得た情報をベースにしながらも、決して専門的にはならず、平易でわかりやすい説明は、本作も変わりません。
京都に対する想いのあふれる本書は、歴史紀行エッセイとして多くの方に読んで欲しい作品です😊。
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