「光る君へ」への長い道のり ~『第31回 「月の下で」振り返り』(その3)(ネタバレ)~[2464文字]
大河ドラマ「光る君へ」 第31回『月の下で』 の振り返り、その3です。
※以下より、第31回のストーリーを記述しています。未視聴の方は先に第31回をご視聴ください🙇。
■[第31回『月の下で』 振り返り]その3
まひろ〔吉高由里子〕の屋敷。
まひろの書いた物語を読む道長〔柄本佑〕は、ハハハと声をだして笑う。背を向け、縁に座っているまひろ。
道長「ほう‥‥。(読んだ紙をまとめる)よいではないか」
まひろ「どこがよいのでございますか?」
道長「え?ああ‥‥。飽きずに楽しく読めた」
まひろ「楽しいだけでございますよね」
道長「ん?」
まひろ「まことにこれで中宮様を、お慰めできますでしょうか」
道長「書き上がったから、俺を呼んだのではないのか?」
まひろ「そうなのでございますが、お笑いくださる道長様を拝見していて、何か違う気がいたしました」
道長「何を言っておるのか分からぬ。これで、充分面白いい。明るくてよい」
道長「中宮様もそう思いになるでしょうか‥‥」
答えに躊躇する道長。
まひろ「中宮様がお読みになるのですよね?」
道長「(顔を伏せる)うん‥‥」
まひろ「もしや、道長様、偽りを仰せでございますか?」
道長「え?」
まひろ「中宮様、と申し上げると、お目がうつろになります」
動揺する道長。
まひろ「正直なお方」
道長「お前にはかなわぬな」
まひろ「やはり‥‥」
道長「実は‥‥、これは帝に献上したいと思うておった。『枕草子』にとらわれるあまり、亡き皇后様から解き放たれぬ帝に、『枕草子』を超える書物を献上し、こちらにお目を向けていただきたかったのだ。されど、それを申せば、お前は『私を政に道具にするのか』と怒ったであろう?」
まひろ「それは‥‥怒ったやもしれませぬ」
道長「ゆえに、偽りを申したのだ。すまなかった(紙の束をまひろに返す)」
まひろ「帝がお読みになるものを、書いてみとうございます」
道長「えっ‥‥。これを、帝にお渡ししてよいのか?」
まひろ「いえ‥‥。これとは違うものを書きまする。帝のことを、お教えくださいませ。道長様が間近にご覧になった帝のお姿を、何でもよろしゅうございます。お話くださいませ。帝のお人柄、若き日のこと、女院様とのこと、皇后様とのことなど、お聴きしとうございます」
道長「ああ。話してもよいが‥‥、ああ‥‥どこから話せばよいか‥‥(腕組みをする)」
まひろ「どこからでも、よろしゅうございます。思いつくままに、帝の生身のお姿を」
道長「生身のお姿か‥‥」
まひろ「家の者たちは、私の邪魔をせぬようにと、宇治に出かけております。時はいくらでもありますゆえ」
道長「分かった」
道長は思いつくままに語り始める。
道長「帝がご誕生された時、それはそれは、美しい男子におわした‥‥」
道長「帝は亡き皇后・定子様に夢中であらせられた‥‥」
道長「入内された時、帝はまだ幼くおわしたゆえ‥‥」
道長「帝のよき遊び相手で‥‥」
道長「帝は本当に大事に‥‥」
道長「今は亡き女院様も涙を流して、喜んでおられたな」
道長「定子様をお慕いする帝のお心は、我らが思うよりも、はるかに、お強いものだった‥‥」
道長「俺も‥‥どうしたらよいか、分からなかったのだ‥‥」
まひろ「帝もまた、人でおわすということですね」
道長「ん?」
まひろ「かって、父とのことも、道長様とのことも、あれもこれも、思っていることとやっていることが相反しており、悩んでいた時、それは人だからじゃと、亡き夫に言われたことがございます。帝のご乱心も、人でおわすからでございましょう。道長様が、ご存知ないところで、帝もお苦しみだったと思います」
道長「それを表に出されないのも‥‥、人ゆえか」
まひろ「女も、人ですよのよ」
道長「フッ‥‥。そのようなことは分かっておる」
まひろ「人とは、何なのでございましょうか‥‥」
遠い目をしたまひろ。空に目を向ける道長。日は沈み、夜になる。庭に出る二人。
道長「う~ん‥‥、帝の御事を語るつもりが、我が家の恥をさらしてしまった。ハハ‥‥。我が家は、下の下だな‥‥。あきれたであろう」
まひろ「帝も道長様も、皆、お苦しいのですね」
道長「これまでの話、役に立てばよいが‥‥」
夜空の月を見るまひろ。
まひろ「きれいな月‥‥。人はなぜ、月を見上げるのでしょう」
道長「なぜであろうな‥‥」
まひろ「かぐや姫は月に帰っていきましたけど、もしかしたら、月にも人がいて、こちらを見ているのやもしれませぬ。それゆえ、こちらも見上げたくなるのやも」
道長「相変わらず、お前はおかしなことを申す」
まひろ「『おかしきことこそめでたけれ』にございます。直秀が言っておりました」
夜空を見る道長。
道長「直秀も、月におるやも知れぬな。誰かが‥‥。誰かが、今‥‥。俺が見ている月を、一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げていた。皆、そういう思いで、月を見上げているのやも知れぬな‥‥」
道長の横顔を見つめるまひろ。ふたりが見上げる、呼吸をしているかのような満月。ふたりの目が合う。
道長「もう帰らねば‥‥」
去っていく道長。お辞儀をし、見送るまひろ。
ということで、長くなりましたので、『第31回「月の下で」』の振り返り』その3は、その4へ続かせていただきます(´-`)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました🙇。