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THE WAY of LIFE#後編 蜃気楼珈琲 オーナー・田上 凜太朗(29)「人の意見とか、人にどう思われるかっていうよりも、自分がワクワクすることをやる。」


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留年がきっかけで出会った、人生を変えた1杯のコーヒー

大学への入学後は、授業そっちのけでアルバイト漬けの日々を過ごしていた凛太朗さん。まさかの単位が足りず大学3年時に留年してしまう。時間に余裕が生まれた凜太朗さんは、シアトルへの留学を決意。その決意が、今のキャリアである「コーヒー」との出会いになるとは誰も思わなかった。

「ホームステイ先で色々トラブルがあり、毎日ブルーでした。家に帰りたくないから、学校から近いコーヒー屋に通うようになったんです。そこで飲んだ1杯のコーヒーが、ものすごくおいしくて。今までコーヒーは甘い物しか飲めなかったけど、その1杯に出会ったおかげで、自分の知らない世界が広がっているんだなと実感しました。その広い世界を経験するためにここに来たんだなって、前向きになれましたね。そこから留学生活はめちゃめちゃ楽しかったです。」

ふと立ち寄ったコーヒー屋で飲んだ1杯が、これまで憂鬱だった出来事を一転させ、すべてをポジティブな思考に変換してくれた。そんな人生の方向性を変えてしまう出来事は、ふと訪れる。それも意図していないときに。

日々情報の雨に打たれている現代人は、あたかも主体的に行っているような行動であっても、何かしらのノイズが含まれている可能性がある。

しかし、その時の感情に従って、客観的な要素を含まない直感的な行動によって、人生が好転するモノやコトに出会うのではないかと思う。

おいしいから、社会課題の解決へ。ネパールでのソーシャルビジネス経験

1杯のコーヒーとの出会いから充実した留学生活を経て帰国した凜太朗さんは、真面目な大学生に戻る。多くの授業を受けるなかで、またまた人生が変わる出来事を経験することになる。

「ある授業でペアを組んだ4年生の人がめちゃくちゃ面白い人で。仲良くなって話を聞いてみたら1年間学校を休学して、NPO法人のプログラムでラオスでヨーグルトを売っていたらしく、衝撃を受けましたね。もともと中学校がキリスト教の学校で、色んな慈善活動をしていたからソーシャルな課題解決には興味があったんです。そこからそのNPOを紹介してもらい、ネパールの新規事業創出プログラムに参加しました。」

そのプログラムでビジネスついて徹底的に叩き込まれ、実際に現地で事業の立ち上げにも携わる。そこで、社会課題とビジネスを両立させる難しさを身をもって経験。その後、留学先で人生を変えた「コーヒー」への見方も変わってきたという。

「コーヒーってすごいソーシャルビジネスとして成り立っているなと感じました。1杯500円でコーヒーが売れるってことは、それだけコーヒー屋さんが儲かる。コーヒー豆を対等な対価で生産者から購入できれば、生産者の儲けに繋がり、品質が良いものを作れる。そして品質が良いから消費者が買ってくれるっていう流れがスペシャリティコーヒー(※1)の業界ではできている。ソーシャルビジネスがちゃんとシステム化されているのってすごいなって、これまでのコーヒーに対する見方がガラッと変わりました。」

※1:一般社団法人 日本スペシャリティコーヒー協会の定義では、下記のように述べられている。
「具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。」

https://scaj.org/about/specialty-coffee


たかがコーヒー、されどコーヒー。

1杯のコーヒーでも見方を変えれば、さまざまな気づきを得られる。今まさに多くの人が飲んでいるコーヒーも、どんな生産者がどのような想いを込めてつくったのか、その背景を知るだけで世界を旅した気分になり、現実的に起きている社会課題に目を向けるきっかけにもなる。

コーヒーに限らず物事を多面的に見れば、解釈が変わり選択肢が増え、それが学びになり人生が豊かになるのかもしれない。

自ら「レール」を作るという選択。数多の経験を経て、今思うこととは

コーヒーにどっぷり浸かってしまった凜太朗さんは、大手企業の内定を蹴り本格的にコーヒーの世界に入る。まさに、世間で良しとされてきたレールから外れた瞬間でもあり、これから自分でレールを作るのだと、覚悟を決めた出来事でもある。

ブルーボトルコーヒーのバリスタとして働くなか、2018年11月にケータリングやポップアップの出店をメインとする「Barista Base」を立ち上げる。

シェアカフェとして構想していたこのブランドの立ち上げには、凜太朗さんのひとつの軸である「食」に対する熱い想いがこもっている。

「これは飲食業界全体で言えるんですが、ブラックなイメージを変えたいなっていうのが想いとしてあって。食ってすごいクリエイティブだし、誰にでもできる仕事ではないから、みんなが憧れるような業界にしたいんです。そこで、まずは自分がpopup事業としてコーヒー屋をだして色々経験しないとだめだなって、Barista Baseを立ち上げました。」

立ち上げ後、いろんな場所でコーヒーを淹れ、たくさんの失敗を経験し、シェアカフェの必要性が確信へと変わっていった。

熱い志を持った、駆け出しの人達を支える場が必要だと。

そう思っていた矢先に、知り合いからの紹介で大井町の町おこし事業の一環としてコーヒーフェスティバルの企画・運営を任されることになる。2019年に駆け出しの出店者を集めた「大井町コーヒーフェスティバル」を開催し成功をおさめた。

しかし、コロナウイルスの流行により、出店予定だったイベントが全部中止。コーヒーを届けたい人に届けられない現状を受けて、ある決意をする。

「コロナウイルスが流行って、ポップアップが全部中止になってしまいました。店舗は構えないと思ってたけど、イベントが全部中止になっちゃうと、僕ら活動できないんですよね。僕らだけでなくお客さん自身も、こういうときだからこそおいしいコーヒーが必要なんじゃないかなって。店舗がないがゆえに届けられないっていう壁にぶち当たりました。そこからお店ってあっても良いのかなって思うようになりましたね。」

そこから物件を探し、京王井の頭線 富士見ヶ丘駅から徒歩2分の場所に「蜃気楼珈琲」をオープン。店舗を構えていない、駆け出しの「インディーズ」達がビジネスを勉強できる場として注目を集めている。勿論、日替わりで店主が変わるシェアリングコーヒーショップとしても人気である。

そんな、自ら作ったレールを歩む凜太朗さんに、今後の目標を聞いてみた。

「食を通じて世界中の人を幸せにするサービスを作る。何で世界中なのとか、そもそも幸せにするって何なのとかって、絶賛模索中ではありますが。登る山が決まっているので、なにをやってもそこにたどり着くようにはなっていると思っていて。その都度その都度、自分のタイミングで良いなって思ったことを判断基準にしています。今だと、今日明日食べれるものがない人とか、そういう人を幸せにするサービスにすごい興味はあります。これだけ科学技術が発達していても貧困の差はなくならない。食べることができなくて困っている人を、普通に食べれるように、平等にしたい。どういう風にできるかは、人生かけて見つけたいと思ってます。

番外編!Q&Aコーナー

Q.一歩踏み出すときに不安はありますか?

A.一生不安です。でもリスクをちゃんと計算して、ヘッジするようにしてます。リスクが0に限りなく近づいたなっていうところまで徹底的に調べたり、人に話聞いたりしてます。あと努力。自信をつけるっていうか、知識や技術で武装する。最後は、直感だと思います。

Q.自分らしく生きるために、日々意識していることはありますか?

A.自分が面白いと思う事を、自分の直感を大事にしています。人の意見とか、人にどう思われるかっていうよりも、自分がワクワクすることをやるとか、ワクワクする方を選ぶとか、たくさん考えた上での直感を意識しています。


Q.一歩踏み出したいけど、出来ない人に一言

A.まず、一歩前に踏み出したいって思っているだけで素晴らしいことだと思います。あとはほんとにやるだけ。1人では絶対無理だけど、やってみたら誰か助けてくれるし、とりあえず一歩踏み出して、リスクを最小限に抑えて、ちっちゃく失敗を重ねていく。簡単に挑戦しろよとは言えないけれど、色んなリスクを計算したうえで、やりたいって思いが消えないのであれば、ちっちゃくやってみることをおすすめします。今は簡単につながれるし、クラウドファンディングだってある。リスクヘッジする方法もたくさんある。それらを考えたうえで、結局はやったもん勝ちだと思います。


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▼バリスタ兼焙煎士 田上 凜太朗さん▼

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